02年9月7日 なぜ青色が見えるのか
三原色の錐体:
波長640ナノメートルから430ナノメートルまでの電磁波は、我々ヒトが光として見ることができ、可視光線と呼ばれる。可視光線のあらゆる色は、赤■、緑■、青紫■(正確には「青みのすみれ」)の三原色の混合で表すことができる。例えば我々ヒトは波長575ナノメートルの光を黄色■と知覚するが、波長640〜780ナノメートルの赤色光と波長498〜530ナノメートルの緑色光との混合波もまた全く同じ黄色と知覚され、両者を区別することができない。
これは、ヒトの目の網膜にある光の受容体「錐体」が、低周波光(赤)、中周波光(緑)、高周波光(青紫)のそれぞれで最も良く感応する三種類があるからである。波長575ナノメートルの光の場合は、赤錐体と緑錐体の二者が感応するので、赤色光と緑色光を同時に見たときと同じ知覚を受けるのである。
三錐体の感じる波長は非対称:
しかし、この三錐体は、その感応する周波数が対称に分布しているわけではない。
実は、赤錐体が最もよく感応する周波数は黄色の周波数付近なのである。最も低い周波数のあたりの可視光線では緑錐体が感応しないために赤く見えるのだが、それを感知している赤錐体も本当は比較的弱い感応しかしていないのである。
そして緑錐体の感応のピークも決して可視光線の周波数の真ん中ではなく、低い方にずれている。すなわち、赤錐体の感応する周波数帯と緑錐体の感応する周波数帯は接近しているのである。
それに対して青紫を感じる錐体は、孤立して高周波で感応する。しかもその感応の度合は、同じ強度の光に対して、赤錐体や緑錐体と比べて弱いピークしか持たない。
なぜ黄色は明るいか:
この事実を知って私は長年の疑問が解けた。
よく「黄色い声」などと言い、黄色には明るく刺激が強いイメージがある。しかし、波長575ナノメートルの光に特別強いエネルギーがあるわけでも何でもない。客観的には他の波長の光と何ら変わることがない。
波長575ナノメートルの光は赤錐体と緑錐体の両方を共にピーク付近の感応で感応させるから明るく見えるのである。それに対して、高周波部分の可視光線は、青紫錐体ばかりが感応して、しかもそれはピークでも比較的弱いので、青系統の単色は暗く見えるのである。
さらに、赤錐体の感応する周波数帯と緑錐体の感応する周波数帯が接近し、青紫錐体のそれが離れているからこそ、緑より低周波の光は波長の違いが細かく識別できるのに、緑より高周波の光は同種類のものに見えてしまう。
すなわち、可視光線の低周波の端から真ん中の波長までを均等に五点とると、赤、橙、黄、黄緑、緑とそれぞれ全く違った色に見える。
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ところが、可視光線の波長の真ん中から高周波の端までをやはり均等に五点とると、
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となるが、あまり差が感じられず、それぞれ正確な名前すら思い浮かばない。
そもそも赤色光と緑色光の混合が黄色になるなんて知らなければ想像もできない。全然別の色に感じる。それに対して緑色光と青紫光の混合のシアン■は、教えられなくてもいかにもそうだろうと想像がつく。
なぜ青紫を感じる錐体があるのか:
さてここまでは私が知識として知ったことである。
ここからが私の仮説である。
色の感じ方は動物の種類によって違う。犬や猫は色を感じないらしいし、チョウは紫外線を見ることができ、ニワトリには四種類の錐体があるらしい。しかし霊長類はみな、ヒトと同じように感じるそうである。
さてでは、我々ヒトなどの霊長類はどうして上記のような感じ方をするのだろうか。青紫錐体の感じ方はいかにも何だか付け足しのような副次的な感じがする。
森の中で暮らしていた我々の祖先にとって、空を見ることはあまりないはずである。我々の祖先は青色を感じる必要はなかったのではないか。すなわち、青紫錐体は高周波の光を単独で感じ取るためにあったものではないのではないか。
それは紫を感じるためにあったのではないか。もっぱら赤色波と混合して発せられている高周波光を感じるのが目的で、だからこそ単独で強い感応をする必要はなかったのではないか。
もう言わんとすることはおわかりだろう。森の我らが祖先にとって重要なのは、果実のうれ具合だったのである。それゆえ赤から緑までの波長を細かく識別する必要があったのだろう。
純粋な赤色光から純粋な青紫光まで、間に両者の三段階の混合波を作ると、
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となる。見てわかる通り、混合波はある種の果実がうれた色である。
なぜ青くうれる果実がないのか:
ところでここまで推論を進めると、今度はなぜ果実はみなそろって緑から波長が長くなる方に向けてうれていくのかが疑問になる。だんだん青くなる果実もあっていいではないか。なぜないのか。(ブルーベリーは正確には紫だな)
それはやはり、動物に食べてもらって種子を運んでもらうために、遠くからでも目立つようにしてあるのだろう。波長が長い波の方が遠くまで届くからである。