松尾匡のページ

 02年12月21日 創作能のアイデア



 

 一種の「劇中劇」のような設定。
 最初に「大御所様」徳川家康とその英国人顧問三浦按針との狂言から始まる。豊臣恩顧の能楽師達が西洋の歴史を題材にして能を作ると言うので、按針がローマの歴史を教えた。その能が出来たので、これから披露される、ということが二人の会話によって明らかにされる。
 その後、二人が舞台端で観覧する中で能が始まる。
 時代はローマ帝国。ワキはインドの僧。諸国巡礼のうちにエジプトを訪れ、ナイル河畔でシテの水汲み女に出会う。
 女はその地のゆかりのクレオパトラ女王の話を始める。ローマ共和国末期「内乱の一世紀」を収拾するシーザーの奪権と進撃。高潔の部下ブルータスらによるシーザーの暗殺。人たらしアントニーが弔い合戦でブルータスを滅ぼす。アントニーとオクタビアヌスが並び立ち、アントニーは「ナイルの君」ことエジプト女王クレオパトラと結婚する。アントニー・クレオパトラは次第にオクタビアヌスに圧迫されていき、そしてついに、オクタビアヌスとアントニー・クレオパトラとの間の天下分けめのアクチウムの海戦。アントニー・クレオパトラは滅ぼされ、オクタビアヌスは初代ローマ皇帝になる…。こうした話の後、最後に女は「ナイルの君は我なり」と言って消える。
 後半はその夜。昼間水汲み女に化けていたクレオパトラの亡霊が現れ、恨み節を言いながら舞いを舞う。最後にとってつけたように、初代ローマ皇帝をたたえ、ローマ帝国悠久の繁栄をことほぎ、去っていく。
 この能が進行するにつれて按針は次第にそわそわしだし、ついに立ち上がろうとするがその度に家康に無言で制止される。地謡、囃子が退去するまで按針は制止され続ける。舞台に二人だけになって、按針は家康の前にひれ伏し、釈明を始めようとするが、家康はすばらしい能だったとほめ、能楽師達にほうびをたくさんやるように命じる。
 そして、立ち上がりざまに台本を焼き捨てて再演を禁止することを告げると、おそれいる按針を置いて、今宵はほんとうにいいものを見て満足だと言いつつ退去する。
 
 
 
 


 

 

「最近感じること」目次へ

ホームページへもどる