03年4月7日 イラク復興の説明の仕方
イラク戦争も終わりに近付き、いよいよ復興ハゲタカどもが舞いはじめた。
アメリカは「血を流したものだけが復興に参加できる」と言ってひとりじめを狙い、それに対して戦争賛成派の日本も反対派だった独仏もいまや連係して「そうはさせじ」と群がってきている。イラクには油田があるから、貸した金は必ず返ってくる。いずれも不況にあえぐ先進諸国にとってこんなおいしいチャンスはそうそうころがってはいない。
私はもちろん、こんな「復興支援」には反対だし、世界の市民が何のおもわくもなく、イラクの人々が自立して暮らせるようになるための真の支援を行うべきだと思っている。
しかし、日本では、「アメリカが勝手に戦争を始めたのだから、日本が復興にカネを出す必要などない。不況で余裕がないところにそんなカネを出したら一層不況がひどくなってしまう。」という声がよく聞かれる。「アメリカを支持しても、復興にカネを出させられるだけで、結局日本はアメリカにいいように食い物にされるだけなのだ」といった自嘲的な政府批判がなされたりもする。
こういう議論を聞くとどう説明したらいいのかとまどってしまう。
そうだよ私も政府の復興支援に反対だと言って同調してしまっていいのか。ここには全く勝手な自国エゴと同時に、経済原理への誤解がある。
相手の自国エゴの前提を認めるならば、この経済原理への誤解を解いてやらなければならない。
「国益」とかいうものが大事ならば、アメリカに復興をひとりじめさせるわけにはいかない。日本がカネを出さないならばそうなるだけだ。
復興のために「円」を出したならば、それはいずれ日本からモノを買うために使われるので日本企業がもうかる。イラク側の借款で貸し付けるならば日本の財政赤字も膨らまない。他国の財政負担でケインズ政策がとれるのだ。
さらに究極の手としては、イラク新政府が(どうせ中央銀行の独立などないのだろうから)通貨を増発して、それを日本銀行が買い入れる形で円を大量に発行して復興資金にすれば、誰のふところも痛まずに、日本は復興需要でわきかえり、おまけに中東に円経済圏の足掛かりが作られることになる。
ゲーテの『ファウスト』で、不況で国庫が空になった国が、悪魔メフィストフェレスの示唆に従い、地下の未確認・未発掘の金銀財宝を担保に大量の紙幣を発行し、その結果国中が好況にわきかえることになる話が出ているが、まさにそれと同じことができるわけだ。しかもファウストの王国と異なり、イラクの地下の担保はもっとその存在が確かなものだ。
ところが「国益」「国益」と日頃言っているナショナリストほど、「復興にカネを出すな」と言うのだ。オレが右派なら怒り狂っているぞ。
しかし自分の本来の立場としては、こんな他人の不幸で大もうけをたくらむことを説得するわけにもいかない。結局「そうですねぇ」などと言ってお茶をにごすしかないのだが、本当にこれでいいのか!
よくないだろう!
以前、偏狭な民族主義的反米感情からくるイラク反戦論に、左翼がそのまま無批判にのっかっていいのかということを書いたが、これと同じである。低劣な民族主義感情論と結論が同じだからといって安易に同調するのは考えものなのだ。
とはいってもねぇ。やっぱりどう応答すべきかなやみますね。