松尾匡のページ

 03年5月15日 革新共同名簿はどう?


候補が多様なほど有利な非拘束名簿式
 参議院で現在とられている非拘束名簿式比例代表制では、名簿搭載個人候補の得票の総計が、その政党の得票に加えられる。ということは、支持層の重なる個人候補をそろえると無駄が多くなるということである。全然支持層の重ならない個人候補を名簿にそれえれば、党はそれだけ広い人々から票を集めることができてトクになる。
 これはすなわち政党間の共同名簿の結成が有利になるということである。極端な話、共産党と自由党が共同名簿をたてれば両党にとって有利である。両党は各々、旧参議院全国区同様に、自党の個人候補を地区割りして各候補に投票するよう運動すればよい。その際には、両党互いにバリ雑言浴びせて批判しあってもいいのである。名簿全体の得票には全然響かない。
 もちろん現実にはこんな野合を組むこと自体が有権者の批判にさらされるだろうから、さすがに共産党と自由党という組み合わせはありえない。しかし、比較的近い立場で、しかしそれなりに異質な諸傾向を持つ勢力ならば、この制度の利点を利用できるだろう。

政治的代弁者なき革新無党派層
 現在、各種協同組合やNPO、NGOなどを通じて、福祉や環境、まちづくりなどの事業を担い、日常生活レベルで現実に社会を変えていっている広範な人々が存在している。しかしこれらの事業を発展させていくにあたっては、現実の保守政治の壁がいたるところで立ちはだかる。これらの層の人々は苦闘のすえ、様々なレベルで政治にかかわりだしているのだが、上位レベルになればなるほど、旧来の「国家対資本」の保革図式が、無定見の日和見主義者ばかり増やしてしぶとく残り、適切な代弁者を見い出すことができないでいる。
 しかし、市町村レベルでは、事態は少しずつであるが明らかに動き始めている。各地で、実際に市民事業を担ってきた無党派の活動家が、市町村議会に進出するようになっている。
 問題はこうした動きをどう国政レベルにまでつなげていくかである。そのようにして各地に存在するローカルな市民政治勢力や沖縄社会大衆党、百余の地方議員を出した新社会党、62名の地方議員を出した中村敦夫さんたちの「緑の会議」、川田悦子さんたちのグループ等々の広範な諸勢力を、国政選挙に向けて糾合すべきではないか。

人民戦線以来の苦い経験
 しかし、このようなことは戦前の人民戦線以来何度も試みられてきたけれども、いつも苦い失敗に終わった経験をしてきた。諸勢力の間で必ず陰に陽に主導権争いが起こり、結局組織を裏で牛耳るノウハウに優れたスターリニストや元スターリニストが勝利して、一党一派の利益のために共闘組織が利用されるという結末になってきた。全体のためを考えておとなしくする党派が割を食い、党派エゴをむき出しにするところばかりがゴネ得を得る。その後で異論が出ても全体の団結を名目に封じ込められる。
 選挙が個人候補制や拘束名簿式の場合には、候補者調整や順位調整が必要になる。そうするとただちに、民意を直接に反映しない政治交渉が重要になり、今述べたような弊害が吹き出してくるだろう。
 それが予想される以上、相互の疑心暗鬼によって共同名簿構想は破たんする。特に市民運動家などは縛られるのをいやがる人が多いからなおさらである。

非拘束名簿式で共同名簿を
 しかし、幸いにも日本の参議院は非拘束名簿式の比例代表制をとっている。
 先に述べた理由により、この制度のもとでは、複数のグループが共同名簿を結成しても、各候補はグループ内で地区割りして、公然と自分のグループ名を名乗って、相互に他グループを批判できる。相互批判の結果は、互いに異質な票を掘り起こすことにより、かえって共同名簿全体の得票を増やすことになる。そして、当選者の勢力分布は、民意を公正に代表したものになる。特定党派が民意を離れた政治力により過剰な勢力分布を得るおそれはない。
 よってこの場合、疑心暗鬼になる必要はない。革新市民派諸勢力は共同名簿を結成して参議院選挙を闘うべきである。

衆議院でも重複立候補で同順位にすればいい
 実は同じことは衆議院選挙でもできる。
 共同名簿の搭載者全員が小選挙区にも重複立候補することにして、比例区名簿ではみな順位を同じにすればよい。小選挙区への割り振りでは政治的調整が必要になってしまうが、比例区の当選者は惜敗率により民意を代表して決まる。よって、やはり各自自分のグループ名を公然と名乗って選挙運動できる。
 有権者は自分の小選挙区の共同名簿候補の所属グループが気に入らなければ、小選挙区では別候補に入れて、比例区だけ共同名簿に入れればいいわけだ。あらかじめそういう選択もアリだということを、有権者に宣伝しておくのである。
 そのうえ、どうしても調整がつかなければ、一つの小選挙区に二人以上の共同名簿候補が立候補することになってもいいだろう。その選挙区の個人候補同士では足を引っ張りあう結果になるかもしれないが、比例区での共同名簿全体の得票には直接悪影響をおよぼすことはない。

 日本の選挙制度をうまく利用すれば、これだけ拘束力の弱い選挙互助組織を作ることができる。是非やるべし!

 


 

 
「最近感じること」目次へ

ホームページへもどる