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 04年11月22日 少年犯罪増加のウソと本当にキレる世代


 昨日、日本科学者会議福岡主催の「憲法問題学習会」があった。福岡市にある久留米大学のサテライト教室を貸してくれということなので、普段は暇もないのでわざわざ福岡市まででかけたりはしないのだが、会場開け閉めのために参加した。

 はかた共同法律事務所の村井正昭弁護士の「いまなぜ憲法改正か」という講演だったが、その中で出てきた話がたまたま前夜読んでいた本で読んだことと同じだったので、おもしろかった。
 そのたまたま読んでいた本は、パオロ・マッツァリーノ(本名なのか?)著『反社会学講座』(イースト・プレス)(amazon bk1 Yahoo!)。この本は全部おもしろいのだが、最初の「キレやすいのは誰だ」という章で、近年少年の凶悪犯罪が増加しているというのはウソだということを言っている。
 同じ内容のことは、東大全学職員連絡会議のサイトにある広田照幸さんの文章「メディアと「青少年凶悪化」幻想」でも書いてあるので読んでほしい。

 『反社会学講座』で、明々白々なグラフで示されているのは、戦後少年凶悪犯罪のピークは「昭和35年」ということなのである。そして、それ以降、劇的な減少傾向が続いている。さらに、13歳以下の低年齢者による殺人事件も低下しているとして、次のデータをあげている。

13歳以下の少年による殺人
 1950年代 48
 1960年代 53
 1970年代 24
 1980年代 17
 1990年代 10
これもピークは「昭和35年」だということだ。著者マッツァリーノ氏は昭和35年の『犯罪白書』の次の文章を引用している。

昭和35年の『犯罪白書』の指摘する当時の少年犯罪の特徴

  1. 即行的:欲求を満足するために、熟慮せず、ただちに無計画に行動に移す。少年の精神の未熟さが原因だ。
  2. 享楽的:かつては経済的な困窮や生活苦からの犯罪が多かったが、昭和30年代以降は享楽追求の面が強い。
  3. 集団性:犯罪から生ずる罪責感を仲間意識で薄める。
  4. 攻撃的:大人や権威に対して強い反抗心をもつ。
  5. 過剰性:金をとるだけで十分なのに、人や動物まで殺す。
著者はさらに、子供の数が減ったから犯罪件数が減ったのではという反論を想定して、そうではないことを示している。かえって、昭和35年の方が平成2年よりも百万人ほど少年人口は少なかったのである。

 この本のデータでは、少年の凶悪犯罪の中でも「強盗」が近年若干増えているのだが、昨日の学習会の話では、これも統計上のマジックらしい。以前の分類によれば、数人がかりで「オヤジ狩り」してカツアゲする行為は「脅迫」に、ひったくりは「窃盗」に分類されていたらしいのだが、近年いずれも「強盗」に分類されることになった。そのためだと言う。

 さて、戦後史上に輝く圧倒的な少年犯罪世代にはどんな人がいるだろうか。60年安保世代と団塊の世代の狭間の世代である。
 昭和35年現在の年齢を調べてみると、

敬愛する永遠のボスD教授 16歳
連合赤軍の永田洋子 17歳
小泉純一郎 18歳・・・
 
 

 

 

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