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 02年10月8日 寄付投票制度のアイデア


 これも、拙著『はるかさんとラピート君の入門今どきの経済』第3章(p.51)ですでに提案したアイデアです。

 福祉、環境保全、まちづくり、文化振興、国際協力など、従来行政が直接やっていたようなことも、現在、NPO(非営利組織)や協同組合などで市民が自主的に事業として取り組むようになっている。このような形態の方が、人々のニーズにあったものが選ばれるようになるので、行政が直接取り組むよりもずっと望ましい。とはいえ、これらの事業はお金のない弱者や、お金がとれない不特定多数の公衆が受益者となるものが多く、外部からの資金援助なしにやっていくことは難しい場合が多い。かといって、安易に公的補助金制度を作ると、人々のニーズを無視して補助金にぶらさがったり、補助金目当ての悪徳業者がはびこったりする。それを防ごうとすると、結局、補助金を出す出さないを、官僚や政治家が裁量で判断することになり、腐敗の温床となってしまう。

 そこで、政治家や官僚にその判断を任せるのではなく、お金を払う者が直接判断するようにすればよい。最も単純には、公的活動をする事業体に寄付をしたら、その分は税金から控除されるようにするのである。しかしこの場合、企業が税金逃れのために形だけのNPOをでっちあげて、社員にもそこに寄付するよう強制するようになるおそれがある。

 それゆえ、次のような制度はどうか。

  1. 自主的な公的活動をする事業体に対して、補助を行う基金を自由に設立する。それぞれが「老人福祉を中心に補助する」とか「環境保全を中心に補助する」とか「零細企業を中心に補助する」とか「建設事業を中心に補助する」とかの特徴を自由に持ち、補助の実態や事業の監査結果を公開する。基金運営の会計も公開する。
  2. こうした基金に対して、納税者が定期的に秘密投票を行う。票は、政府・自治体から買い、買った金額は税金から控除される
  3. 票の価格は、1票目より2票目が高く、2票目より3票目が高くと、1票追加して買うごとに高くなっていく。(高額納税者の意志が過剰に反映されないための工夫)
  4. 票の販売金額の総計を、得票に比例して各基金に配分する。(なお納税してない人も身銭を切って投票できる。)


 官僚は市民の選択を受けることはないし、政治家も、一旦当選する得票に達すれば、それ以上の得票の多少に意味はない。それゆえ人々の意識の変動に対して敏感ではない。それに対して、上記制度のもとでの各基金にとっては、票の連続的な変動が収入の連続的な変動に直結するので、ちょうど企業が売上を気にするのと同様に、常に公衆の目を気にせざるを得なくなる。それは基金職員のスキャンダルへの強い抑止力になるだろう。また、政治家に予算の配分を任せる限り、有権者は一票入れた政治家にその判断を白紙委任するほかないが、上記制度のもとでは、自分の望む各種公益事業への資金の配分を投票で直接表明することができ、それを全体で反映するような配分が自動的に実現することになる。なによりも、各基金が事業内容を宣伝したり、相互批判したりすることで、公衆は日頃から自分の払うお金の使い道や現実の公的活動の意義について具体的に意識するようになるだろう。
 
 


 

 

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