02年11月24日 市議会制度案
市議会の現状は中途半端:
日本の市議会の現状に対する不満は多くの人が抱いているだろう。「それが幅広い民意を代表するために機能しているか」と問えば、「一部の利権代表にすぎない有力者達の、民意を離れた寡頭合議体にすぎない」とする答が一般的だろう。では逆に、「それが俗意に流されない専門家的政策決定能力を持っているか」と問えば、「不勉強で無教養な政策素人集団にすぎない」とする答が一般的だろう。
つまりはどっちつかずなわけだ。素人一般市民感覚からも遊離し、かといって専門理論からも遊離している。
とは言え、現実のまじめな市議会議員が、毎日足を棒にして身近な人々の日常のニーズを汲み上げて、それで票をもらっていることは悪いことでは決してない。そういう仕事も社会になくてはならない。
それでは何かいい方法はあるだろうか。地方自治法を変えていいならば、こんなアイデアが考え付く。
首長公選制はやめる:
まず前提としなければならないのは、現状の市長公選制はやめるべきだということだ。
これは、「首相公選制反対論と代替案」で書いた通りである。行政リーダーを公選すると必ず議員は狭い利益誘導で選ばれるようになる。これは絶対の法則である。
行政リーダーを選ぶ一票が他にあるならば、政策の選択はそちらで行い、議会を選ぶ票は身近で世話をやいてくれる人に入れる。議院の構成を選ぶ一票が執行部の選択に直結し、それしか執行部を選ぶ回路がないならば、その一票は政策の選択のつもりで行使される傾向が強まる。
したがって、市議会が利益誘導議員ばかりになるのを防ぐには、まずもって、市長公選はやめて議院執行部制にしなければならない。すなわち、市議会が通常議決によって市の執行部を選出し、不信任する方式にする。
二段階選挙方式:
そうした上で、「多民族国家用選挙方法案」で示したアイデアを修正して応用できる。
【常任議員の選挙】事実上の執行部公選:
議員は常任議員と非常任議員からなる。
常任議員の選挙は現状通り、4年に1回、大選挙区単記投票制によって行う。
常任議員の定数は市議会総定数の3分の1とする。【市議会の総選挙】
常任議員選挙の後、または、市議会が解散された場合、市議会の総選挙が行われる。
総選挙は常任議員が作成する政党名簿に対して投票する比例代表選挙とする。
政党名簿は、所属常任議員を上位とし、残りを「一般市民リスト」と「専門家リスト」に分け、それぞれ十分人数の多い非常任議員候補者名を挙げる。【市議会の構成】
総選挙での得票に比例して、各政党に議席が配分される。
各会期ごとに、審議議件に応じて、各政党の常任議員が、自分達の「一般市民リスト」と「専門家リスト」の中から非常任議員を委嘱する。
常任議員数よりも配分議席数が少ない政党においては、会期ごとに常任議員中より議員を互選する。【政党の分裂】
政党が任期中に分裂した場合は、所属常任議員の数に比例して配分議席数を案分する。非常任議員候補の所属は本人の意思による。【市議会の解散】
市議会は市執行部の決定により、または、軽い条件のリコール投票により、解散する。
こうすると、市議会は、全体構成としては、直接に民意の政策指向を反映したものになり、利権と結んだ有力者政治で歪むことはなくなる。しかし議員が身近な人々の世話を焼くこと自体は否定されるわけではなく、常任議員への選出として評価される。
合併への対応:
なお、最近流行りの市町村合併の際、歴史的文化的条件をひきずって完全な統合は現実的に難しい場合がある。合併自体の是非はおいておいて、以上の方式をとるならば、「多民族国家用選挙方法案」で提案したアイデアがそのまま使え、このような場合にも旧市町村のアイデンティティーを守りながら統一的政治を実現することができる。
すなわち、