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 03年2月23日 事業組合議会のアイデア



 
※ このエッセーを書いた時点では、私は、地方自治体の広域連合で公選議会をおくことができるということを知らなかった(まだ実例は聞かないが)。地方自治法の関連条項をざっと読んだところでは、広域連合の議会の選挙の仕方については、特段の規定はないようである。参加自治体の首長からの選挙で選ばれる「広域連合の長」は象徴的なものとし、広域連合議会で実質的な執行部を選ぶようにすれば、以下で書いたアイデアは広域連合に関したものとしては完全に合法的なものとなる。(2003年11月17日)


 市町村合併そのものは、もともとあまり賛成ではない。
 小さな町村の一クラス20人とかいう規模の学校は、教育効果からいうととても好ましいではないか。しかし合併となればまっ先に統廃合の対象である。
 このような身近な医療、教育、福祉、文化施設が統廃合されて、市民生活が不便になるならば、合併にはとても賛成できない。

 しかし現実に、介護保険はじめ一自治体では実施不可能な事業があり、今でも市町村が事業組合を作って実施しているのは事実である。このような事業が市民生活を大きく覆うようになってくると、市議会や市長といった選挙によって民意を代表する機関が現実にコントロール可能な領域が少なくなっていき、選挙の洗礼を受けない事業組合職員の現実の権限が個別市議会・市長のそれを上回っていくようになるだろう。
 だとすると合併によって、民意を代表した市長・市議会が、専一的にこのような事業をコントロールできるようになることは、民主主義の原則にてらして望ましいことであると言える。

 だが、地域社会の現実の統合、分立の実態を無視して、一律に同じ仕組みの自治体に合併しなければこの問題は解決しないのだろうか。
 国からおカネをいただくためという思惑をとりあえずおいておけば、今述べた問題に対処するためには、次のような方法もある。昨年11月24日のエッセーの応用である。
 

  1. 事業組合の事実上の最高機関として、事業組合議会をおく。(法律で設置可能なようにできれば望ましいが、そうでなければ形式的に諮問機関として運用上最高機関として扱えばよい)
  2. 事業組合議会の議員は統一地方選挙後に公選される。対象市町村全域を一区とする比例代表制選挙とし、対象市町村すべての市町村議会議員をそろえることができたリストの間から選択する。したがって議員は各市町村議員としての公務の一環として活動し、特に事業組合議会議員としての歳費は支払われない。
  3. 事業組合議会が事業組合の執行部を事実上選出する。
  4. 各会派の意思決定は、リスト所属の市町村議会議員の総会による。会派が分裂し、対象市町村すべての議員をリストにそろえることができなくなった会派は、事業組合議会の議席配分を失う。
 こうすれば、各市町村間の利害調整は各会派の内部で行われ、各会派間の競争は事業そのものの方針をめぐって行われるようになる。各市町村のアイデンティティーや自立性を保ったまま、個別地域利害のために事業運営が停滞することが防がれる。
 
 

 

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