松尾匡のページ11年7月12日 性感染症医の前で講演したりした激動のひと月余
暑い日が続きますが、みなさんお元気ですか。
ボクは冷房が弱いせいですぐ体調を壊します。ウチのわがまま息子など、何遍言っても冷房効かせたまま寝ているもので、こないだ日曜日の明ける前なんか、隣室で寝ているこっちまで冷えてしまい、その後一日中頭が割れるように痛かった!
そんなわけで、昔から夏になると研究室はなるべくエアコンは入れずに、窓とドアを開けっ放して過ごすことが多いのですけど、最近はそんなことをしていると、「節電ファシズム」に加担しているみたいで実に気持ち悪いです。べ、別にあんたに言われたからやってるんじゃないからね。誤解しないでよね。
さっきも教授会が寒くて最後はやっぱり頭痛くなって震えていました。今夕食に行った学食も寒くて仕方ないから、熱々のラーメンをすすってしのぎました。全くなんとかして欲しい。
主義主張じゃなくて、あくまでこっちのエゴですから。深刻なエゴのことを「人権」って言うんですから。みんな俺のエゴをきけえ〜!
ところで、こないだカミさんが急に「ネコを飼いたい」って言い出しまして...。
この忙しいのに、どうせボクが面倒みることになるんだろうと思ってぐずってたんですけど、ちゃんと自分が面倒見るからって。絶対かわいいからって言うんだけど、かわいいから捨て置けなくなってなおさら困るじゃん。
しかし、思いついたら聞かないのはいつものことなので、こないだ週末ボクがいない間に買ってきてて、授業終わって夜中帰宅したら子猫がいました。
まあ、かわいいには違いないからいいんだけどね。でも結局、ネコトイレの臭いにどれだけ耐性があるかとかの違いがあるもんで、ボクが自宅にいる間はやっぱりボクが汚物の処理やってるし、めったに使わなかった掃除機も毎日のようにかけてます。ま、最初から見えてた運命ですけど。
こいつがまた、仕事してたらキーボードの上に乗ってくる。計算している紙の上に乗ってくる!
それだけならいいんですけどね、本人はじゃれているつもりなんだろうけど、手にも足にもしょっちゅう噛み付いてくるし、ひっかいたりもしてきます。これが結構痛い。オスに痛いことされても不快なだけ(?)なので、首根っこ捕まえて頭ペシペシして大声で怒るんですけど、一向に学習してくれません。
本当はそんなことに時間をとられている余裕などない日々なんですけど。
このエッセーも、5月27日で更新が止まってますでしょ。手帳見返したらその後怒濤の日々ですよ。5月28日に選対解散会議で選挙総括承認してもらって市議会議員選挙の仕事はひと区切りつけたと思ったら、6月に入ってから毎週のように週末がつぶれています。11日に脱原発デモに行った土日だけですね、九州にいたのは。
4日土曜日は滋賀青年会議所のセミナーで「商人道」がらみのシンポのパネリスト。18日土曜日は火曜日の不足分の授業日だとかで授業させられて、その足で上京して、19日は経済理論学会の編集委員会。これも三つほど論文読んで報告書用意しなければならなかったの。翌週の25日土曜日はまた補講で授業して、今度はその足で名古屋に行って、翌日は応用経済学会に出席。
それで、翌週の土曜日7月2日は、今度は大阪で性感染症のお医者さんの研究会で講演だ。
これは、拙著『不況は人災です!』で、女性の失業率と性器クラミジアの報告数が相関しているらしい(食うに困ったらセックスワーカーになる人が増えるからだろう)というグラフを出したら、その一枚のグラフに専門のお医者さんが目を留めて下さって、是非講演してくれということになったものです。でもあれはウェブからとれるデータだけ使ってたもので、データ数が少なくて、統計分析に耐えるものではありません。
だから、もっとデータそろえてちゃんと統計分析しなければならないのですけど、これが載っている『感染症サーベイランス事業年報』ってのが、なかなかないんですよ。
実は、6月はそうでなくても、頼まれ仕事の締め切りが重なって。
某雑誌から頼まれた投稿論文のレフェリーが6月下旬締め切り。基礎経済科学研究所の雑誌から頼まれた大西広さんたちの本の書評原稿の締め切りが6月末。でも途中、経済理論学会の雑誌の編集委員の仕事で論文三本分報告まとめなければならなかったから、しばらく着手できず、19日の委員会後、直ちにレフェリー仕事にとりかかって、なんとか6月終わりには審査報告書を送ったのですが…。そのあとで書評原稿執筆と並行して講演準備始めたら、資料を探しまわる余裕が全然ない!
6月24日の金曜日こそが、久留米大学医学部図書館に資料を探しにいくラストチャンス。子供が午前中で高校が終わるので、帰ってきてからネコの相手をさせて、自転車で出かければいいと思っていました。実は子供の自転車はパンクしたとかで、しばらく修理もしないままボクの自転車を通学に使っていたんです。
それが、午後になっても一向に帰ってこない。どっかに寄り道していた上、途中ボクの自転車までパンクさせて、どこかのコンビニに留めてバスで帰ってきたらしい。
もうその時点で夕方だし、バスで行くのも時間がかかりそうなので、断念しちゃいました。
それで、翌日土曜日、立命館に授業にでかける前に、カミさんに車で送ってもらって(ボクは免許持ってない)、久留米大学医学部図書館に寄ったのですが、どれだけ探しても目当ての資料がありません。職員の人(土曜日用のパート)も探してくれたのですが、結局見つかりませんでした。
そんなことしてたもので、立命館の授業に間に合うかどうかギリギリ。久留米駅についたらちょうど快速が出たところという間の悪さで、時刻表で調べたら、次の快速が博多駅に着くのが九州新幹線が着くのの1分後。そこから4分後だったかに山陽新幹線が出るというタイミングでした。当然快速に乗ったはいいのですけど、博多駅着く直前にいつもの通り携帯予約(割引が効く)で新幹線予約しようとしたら、時間が足らなすぎて受け付けてくれないの!
仕方ないから、割引なくても窓口で買うしかないか…。ところがそこには先客が。しかも南福岡駅に一駅いくだけのどう考えても急ぎでない人。発車時刻は容赦なく迫り、結局断念しました。最初から九州新幹線に乗っていたら、わざわざここで切符買うこともなく余裕で乗れたのですけど。
それでティーチングアシスタントしてもらっている大学院生の熊澤君に電話して、ちょっと遅れるからと言って、配布資料印刷を指示して到着するまでに学生のみなさんには目を通してもらっておくことにしました。
このとき、関西では事故だったかで、在来線のダイヤはめちゃくちゃになっていて、おかげで京都駅に着いたとたん待たずに乗換できたと思いきや、到着駅の南草津駅直前になって、先行列車が発車してないとかでいきなり動かなくなって、最後の最後までやきもきさせてくれました。まあ、さほどの遅刻にはならず、予定通りの講義ができましたけど。
で、そのあと名古屋で学会でしょ。月曜から授業で、立命館にいる水曜までは授業と会議でびっちり。どうやら京都府立医科大学の図書館にあるらしいというところまでわかったのですが、部外者が使うときは図書館の紹介状がいるらしく、ともかく一回月曜以降立命館に寄るしかなく、名古屋に泊まっている以上間に合わない。授業が始まったら借りにいく暇などあろうはずがない。
…って言ってたら、熊澤君が行ってくれました。ありがたい。
ところがそこにもそろっていなかったという…あくまでふりかかる困難。熊澤君によれば、国会図書館の関西分館が京都府の不便なところにあるらしく、そこにはあるらしいとのこと。で、行ってきますと言って探しにいってくれました。ああなんとありがたい。
結局、水曜日の晩、九州に帰宅する途中、京都駅でコピーを手渡してもらうという展開に。
深夜帰宅後、木曜日、金曜日と二日かけて分析とパワーポイント作成をして、土曜日の本番に間に合わせました。久留米大学医学部図書館では、その後職員の人が見つけてくれていて、もともと古い資料しかなかったのですけど、ちょうど熊澤君のコピーがカバーしていなかった年代だったので、金曜日に出かけていってとうとう21年分のデータをつなげることに成功!
こんなやっつけ仕事だったのに、本番ではウケてもらえたみたいでよかったです。どうやら、性感染症には、失業率が増えてから報告数が増えるまでには一年ほど遅れがあるみたいなのですが、失業率が減るときにはほぼ同時に減る性質があるようです。標本数が少ないので、なるべく説明変数は減らしたいので、増えるときと減るときのラグを別変数にする扱いにするわけにもいきません。それで、ちょっと工夫をこらしてなんとか形になる回帰分析結果を得た次第。それでも標本数が少なすぎる問題は残るけど。もっとも、都道府県ごとのデータで、クロスセクションでやったのも結構実証結果よかったですよ。
特に、女性の淋菌感染症が、失業率との相関が有意に高かったです。詳しくはこちらのパワーポイントファイルをご覧下さい。
性感染症と日本経済 ppt 2.2MB
淋菌感染症の都道府県データで、横に失業率、縦に定点当たり観測数をとった散布図で、一貫して大阪府が回帰直線よりだいぶ上にありますけど(笑)。こんなん見たら「ああ、大阪ね」ってみんな納得してそのままスルーされちゃいそうですけど。実は、奈良県が一貫して異常に低い。ときどきゼロになっていて、こんなん絶対ウソやん。和歌山県なんかも下の方に出てくることがあります。
つまり、奈良とか和歌山の該当者のみなさんは、地元で失業率が高くなって食うに困ったとき、大阪に働きにいかれているわけですな。で、不幸にして感染したとき、地元のお医者さんにかかったら、近所のおばちゃんとかがいてて、「あら○○ちゃん、どないしたん」とか言ってくるかも。だから大阪で受診しているということですな。たぶん。
それで過剰に上に出ているのに、「ああ、大阪やん」で済まされてスルーされそうなかわいそうな大阪。
ボクの講演のあと、ヘルペスの大家の人の講演があったのですが、ナマナマしい病状のスライドはしろうとの身にはかなりエグいですね。これがまた、治ったと思っても潜伏しているし、発症前にも潜伏しているし、いかなる粘膜接触でも感染するし、……24時間カミさんを恐れて生きていて、つくづくよかったと心から思いました。ちなみに、ヘルペスは失業率との相関が全く出なかったのですが、神経節に潜伏して何度も現れるということで、なるほどと思いました。
さて、実はこのかんには、6月15日に、週の真ん中の水曜日になるのですが、大阪で経営者のみなさま相手に「商人道」の講演をしたというのもありまして。
これ、ほとんど追加的準備をすることもなく、手持ちの材料だけで講演したのに、自分基準ではかなり多いおカネをブルジョワ様からいただいてしまったので、気持ち悪いのでほとんど被災地に使ってしまいました。
いや自分基準では、今まで、あちら様とかこちら様とか、交通費で足が出てしまうところが普通でしたから(笑)。いやいや愚痴っているのでも、皮肉っているのでもありませんぞ。そういうご姿勢は真面目に高く評価いたしております。自分の考えを発表させていただくだけでも大変ありがたいと思っておりますから、これからも長くおつきあいいただければと心から願っておりますよ。
で、今回の大阪の商人道講演の講演料の件ですが、アマゾンに、「東日本大震災ほしい物リスト」ってのがあるんです。これ、被災地のいろいろな避難所とか支援団体とかが今差し迫って必要なものをあげていて、ワンクリックで注文して現地に届けることができるって寸法です。手軽で、なかなかよく考えたビジネスアイデアだなと感心していたところでした。
日赤とかの義援金に払っても、どうせなかなか配ってくれないから、こっちの方がダイレクトに必要なところに必要なものがいくからいいやと試してみたんですね。
そしたら、「欲しい物リスト」を当面あげていない避難所とかをクリックしたときには、アマゾン利用者全体の一般的な「ほしい物リスト」の上位商品が出てきます。その一位が、
『女医が教える本当に気持ちのいいセックス』
だったりするので、ああ人間極限状態に近くなるとやっぱりこれが一番のニーズになるんだなあと妙に納得してしまったりします。実は、一番上に、「ほしい物リストには商品がありません」って表示があるんですけど、小さい字ですし、一瞬誤解してしまいます。
実際試してみましたら、一つ一つ発注しなければならないので、まとまった金額でやるのは実は結構手間でしたね。たくさんの人が一人一人ちょっとずつ貢献するにはいいスキームでしょうけど。
そしたらこれが後日カミさんにバレまして、そりゃそりゃ大激怒されちゃいました。すみません。でも息子までカミさんの味方したのは悲しかったぞ。
そのとき、最近ちっとも子供の相手していないって怒られたこともあって、後日、性感染症の講演の翌日は、息子を職場のある滋賀県草津市に呼びました。講演の主催者から帰りの新幹線のチケットをもらっていたのですけど、すぐ月曜から授業なので帰宅すると損。それで、そのチケットをキャンセルというか、振り替えて、息子の久留米からのチケットにしたんです。
実はその日は、滋賀県青年会議所の企画で、草津の琵琶湖博物館で「さかなクン」のトークショーがあったのでした。商人道シンポの件でお世話になったから一応顔を出しておこうと。実際一番お世話いただいた青年会議所メンバーのかたが、今度も一生懸命会場係をされていて、挨拶できてよかったです。
トークは小学生向けだけど、息子も熱帯魚飼ってたりして魚の話が好きなもので、まあ楽しんでくれたみたい。
性感染症の講演料は、現金でいただきましたので、そっくりカミさんにお納めしました。
まあ、実は今、長いことDVDデッキが壊れていまして、しかも地デジ転換のためのテレビの買い替えをまだやってなかったので、ちょうど入り用だったのです。一階の義父が見ているテレビも買い替えないといけないので、実際言うと今回の講演料では足りませんでした。
ボクは自宅に固有の書斎というものを持ってなくて、子供の部屋と一体になっています。自宅を設計したときには、もちろん口出しをする権限などあろうはずもなく、周りの決めたことに「はい結構です」と従うほかない。
でも、家ができてみると、子供の寝るときには部屋出なければならないし、いろいろ不便だから、やがてリビングにノートパソコンを置いて四六時中仕事をするようになり、リビングのテーブルに本が積み上がるようになっていって……そのうち妻子ともに、テレビを見るという習慣をなくしてしまったのでした。
そういうわけで、みんなテレビ見ないから地デジ対応なんてとんと考えてこなかったし、DVDデッキも全然使わないから壊れたまま長年ほったらかしていたわけです。でもさすがに期限が迫ると買い替えないと。なんか家電資本救済策に乗せられた感じもするが、これで少しでも景気浮揚に貢献できたらいいんですけど。
さて、性感染症講演のあとは、学会の編集委員会の仕事で投稿論文の修正稿が上がってくるのに目を通しながら、締め切りのすぎた書評を急いで仕上げ、今度は定期試験問題作成だ。
これがまた締め切りとっくに過ぎてるんですけど、やっと着手できると思ったら、何しろ人数が多いもんで記述式などとんでもない。どうしても計算問題中心になるんですけど、なるべくちょうど割り切れるように、なるべく複数桁どうしのかけ算にはならないように注意して数値を設定するのが大変で、最後の最後できれいな割り算にならなくて設定をやり直したりというのを繰り返して、やっと送信したのがこないだの日曜日。
そういえば、昨年度の後期、「社会経済学初級α」がクラス分けした共同担当で、試験が共通試験になるのですが、責任者の角田先生の作られた試験問題の案に、二桁かける二桁のかけざんがあったので、事務室の裏で角田先生を捕まえて、「二桁かける二桁のかけざんなんてできませんよ」と詰め寄ってました。そしたらそれをそばで聞いていた英語の先生が「どこの先生の会話かと思いました。公文かどこかですか」って笑っていましたが…。結局そのままゴーしたんですけど、案の定できていませんでした。
そんなこともあって、計算問題の設定は苦労するのです。
定期試験仕上げたあとは、今度は市議会議員の後援会通信の編集だ。14日までに印刷所に原稿出さないと。
それと同時に、仕事でまたひとの論文をたくさん読まなければならなくて、これも結構急ぎの仕事になっています。夏休み中に新書一冊書かなければならないんですけどね、まだ一つも着手してません。
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