松尾匡のページ

11年8月27日 『社会新報』がまたへんなこと言っている件ほか



 新書原稿まだ一字も書き始めてません。我ながらあせってきてます。
 実は、社会主義理論学会から出す共著に一章書くことになっていたことをすっかり忘れていて、もう締め切りがだいぶすぎてから督促を受け、しばらくかかりきりになってしまったのでした。新書原稿と内容的にも少しかぶるので、トレーニングみたいに位置づけて、対話調のネタ入り口語文で書いてみました。先日一応できて編者に送り、今自主的に書き直ししている段階。この上に、博士論文審査の報告書とかの学務の報告書類が入っていて、合間に、新書執筆用の資料の本を読んでいます。
 今は、当面締め切りが迫ったものがなくなった合間なので、逃避行動でエッセー更新でもしようと。


 さて、リビア革命の成功は祝賀の至りなんですけど、目下カダフィ大佐はまだ見つかってないところです。なんだかこのあと、
ギガントが出てきそう。

 リビア情勢については、日本共産党の『赤旗』は、早速「『圧制への抵抗』は、侵そうとしても侵せない権利なのだ」と、今回の政変を評価する論評を発表しています。でも、社民党も新社会党も、ウチに届く機関紙ではほとんどリビア情勢を取り上げてませんね。
 やっぱり左翼世界の一部では、ともかくアメリカと対立する者は何でも「敵の敵は味方」になる傾向があって、本気で「カダフィは暴君ではなかった」とか思ってる人もいるみたい。本人が「天安門事件のようにデモ隊をたたきつぶす」って言っていて、中国外務省から公式に怒られているぐらいなんだから、デモの武力弾圧は否定しようがない事実でしょう。それだけでも政権の正当性はもはやない。
 でも、左翼系掲示板「阿修羅」のこの板で、「ダイナモ」というid名の人がリビア革命支持の立場からリビア情勢をフォローしているのに対して、書き込まれてるコメントのひどいこと。反政府側の兵士は帝国主義の手先の傭兵扱いされてます。反政府側の人々がNATO介入を断って玉砕でもしたら味方してくれたのかな。

 昔、ベトナムがカンボジアに軍事侵略してカンボジアのポルポト政権を倒したとき、日本共産党も社会党の社会主義協会もベトナム側を支持しましたよね。よーく覚えていますよ。そしてこれは正しかったと思います。これによってカンボジアはベトナムの属国になり、カンボジア国民はまた新たな一党独裁の支配のもとにおかれたのですが、しかしそれでもポルポトの大虐殺が止められたことは絶対によかった。
 それから、東チモールのインドネシア併合派民兵が住民虐殺を続けていたとき、国連軍の介入を急げというのが左翼世界の一般世論だったように記憶してます。外国の介入に支援されたら、他のあらゆる条件が無視されて悪者側に認定されるなんてことはもともとなかったはずです。

 どうせこのあとリビアにはろくな将来はないさと、先進国のソファから、命がけで闘った民衆を裁断する態度も見られますが、恥ずかしい態度だと思います。これまでのあらゆる革命は幻滅に終わったものなのです。いつも自由と民主、平等と平和を約束しながら、結局、内紛や戦乱、一部の者による権力の簒奪に終わってしまうのが常なのです。だとしても、民衆を苦しめる結果をもたらした政権は、交代させることによって罰せられなければならない。力で居座っているならば革命で打倒されなければならない。例外なく必ずそうなるものなのだということが教訓になってこそ、為政者には、ちょっとはましな政策をとらざるをえない規律が働くというものです。
 エジプト革命のとき、一部マスコミでイスラム原理主義勢力が主導しているかのような報道が見られたとき、そうではない、街に出た若者たちはただ純粋に自由と民主主義を求めているのだということを強調したのが、左翼世論の主調だったと思います。打倒を目指す相手がアメリカと仲がいいか悪いかによって態度を変える二重基準に陥ってはいけないと思います。
 たとえ今度の革命もまた幻滅に終わるかもしれなくても、今度こそ自由を求めた民衆の夢が成功裏に実現することを心から祈り、困難な闘いに立ち上がった人々を素直に讃えたいと思います。


 そういえば、社民党の機関紙の『社会新報』、リビア情勢取り上げないのは別にいいんですけど、8月3日号の経済コラム、またへんなこと書いてるぞ。まず、アメリカの情勢を次のように描いています。

 米国は…財政運営を円滑に進めるため債務上限枠を引き上げる必要に迫られている。これに「待った」をかけているのが野党である共和党だ。

 来年に迫っている大統領選挙で、オバマ大統領から政権を奪取しようと国債増発(債務拡大)よりも歳出削減を優先すべきだと主張し、民主党の債務上限引き上げ案に反対している。
 共和党の主張に対してオバマ大統領も協議には応じる姿勢を見せているが、安易な譲歩はできない。大統領選を意識して、景気浮揚を本格化させ自身の政策が成功しつつあると言いたいところだ。
 そうはさせないと両手を広げているのが共和党で、8月2日の期限を前に緊迫状況が続きそうだ。

 このあと中国の高速鉄道事故の原因がリーマンショック後の財政出動でインフラ整備を急ぎすぎたことにあるとの見方を述べた後、次のように結論しています。

 いずれにしても各国は恐慌回避のために財政面で多少無理をし、インフレや格差拡大などの問題を顕在化させてしまったようだ。

 すでに英国では財政危機に対処するため、財政拡大から緊縮財政に大きくかじを切っている。どうやら世界はやみくもな景気拡大策から、貧富の格差是正や、社会の絆の再構築、相互の助け合い強化など、バランスの取れた社会の発展へと大きく方向転換を志向する時勢にあるようだ。

 これをすなおに読むとどう読めますか。オバマ政権が志向しているのは「やみくもな景気拡大策」で、「そうはさせないと両手を広げている」共和党は、「バランスの取れた社会の発展へと大きく方向転換を志向」している。イギリス保守党政権が「緊縮財政に大きくかじを切った」ことは、「バランスの取れた社会の発展へと大きく方向転換を志向」したことだ。…ボクの読み方何か間違ってますか。いやアメリカ共和党やイギリス保守党政権が「バランスの取れた社会」を志向しているとみなしているかどうかはともかく、少なくとも彼らの志向する方向を、世の中の進むべきの方向に合致したものと認定していることは間違いないでしょう。まったく、なんでイギリスで暴動が起きたと思ってるんだか。
 労働党にチクってやろうか。貴党の日本の友党はこんなこと言ってますよって。

 アメリカで共和党などの保守派が、ちょっとした社会保障支出に対しても「社会主義」呼ばわりして目くじら立てて、大金持ちの利益のために奉仕しているのに対しては、クルーグマンさんがこのかんさかんに批判の論陣張ってますよね。まだまだ雇用は足りない。景気対策はこんなもんじゃ足りない。それなのにこいつらときたらまた経済を恐慌に叩き込もうとしている。「このわからずやめ!」って感じで怒りまくってます。こことか、こことかによく翻訳が載ってます。
 いいねえクルーグマンさんは。あっちの国では明々白々な敵を叩いていればいいんだから。国中の左半分からはこぞって喝采されてさぞ気持ちよかろう。

 だいたい社民党のホームページの「経済コラム」。「不気味なインフレ」「サブプライムでインフレ」「食料品の値上げで」「サブプライムよりインフレ」「景気失速とインフレ」「世界的スタグフレーション」とさんざんインフレ恐怖を煽る記事を立てておいて、2008年8月27日で更新がストップしています。リーマンショックでデフレ不況突入以降は全然更新してないわけです。デフレ不況で失業や倒産があふれ、学生が就職難に苦しむ事態は、インフレと比べて公の場で告発する価値が劣ると思っているのでしょうか。
 まあ、「福島瑞穂政治スクール」の経済系陣容を見ても、不況問題についてはまだまだ期待薄かな。ガチガチの化石マル経学者を並べてくれたほうがなんぼかマシか。


 さて、ボクが後援会役員している久留米市議会議員が、このほど久留米市議会の「新エネルギー調査特別委員会」なるものの委員長になりました。まあ、久留米市の行政がどの程度本気でこんなこと取り組もうとしているのか疑問ですけど。さんざん議論だけさせておいて、一応こんなことやってますってポーズだけして見せて終わろうという気じゃないかと。
 だいたいあの経産省にしても、「グリーンエネルギー」って一応旗振ってますもんね(笑)。
 サイト見てみたら、経産省が「グリーンエネルギーマーク」って作ってて笑ってしまいました。「グリーンエネルギー認証センター」が、グリーン電力で作った製品に認証して付けるものだそうです。まあ悪いことじゃないからいいけど。

 これ見て考えたんですけど、「制服向上委員会」…ってアイドルグループがあるらしい(伝聞)けど、集会なんかで「脱・原発の歌」って歌ってるようです。

それで、「脱原発」って言って、原子力マークつけた制服脱いで、グリーンエネルギーマークのついた制服に生着替えして、「制服向上」ってパフォーマンスしたらどうかって…リフレ派のオタクども(他人事)なら言い出すんじゃないかと。


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