松尾匡のページ

15年5月4日 マクロ経済学入門パワーポイント(前半)作成!



 とうとう4月はまるまるエッセー更新しませんでした。
 組合の副委員長とかしたら大変だろうと思ったけど、やっぱり大変。何の貢献もしていないんですけどね。会議に出るくらいしかできないのに、その会議が多すぎて、うっかり忘れたり。
 いやはや役立たずですみません。ホント自分では何の知恵も回りませんので、具体的に作業をご指示下さい。

 まあこれが春闘準備でどんどん立て込んでいく中に、取材やら、原稿やら、投稿論文やら、紀要論文やら、出版社との打ち合わせやら、出版企画書作成やら、校正やらが次々入ってきて、その上、年度末諸事務に新年度授業準備と息をつがせない。振り返ってみると、取材とか原稿とか引き受ける時に、「校正」というものを考慮に入れずに間を空けずに詰めていくから、あとで校正の締め切りと次の原稿の締め切りが重なって大変になるんだな、これが。

 という中で、シノドス連載は当初月末ごろ掲載だったのですが、このところ毎度原稿提出が遅れて月はじめに掲載されることが続いている間に、いつの間にか掲載時期がズレていたみたいで、めずらしく3月は20日頃に出したのですが、掲載は4月10日でした。

連載『リスク・責任・決定、そして自由!』:理性による自己支配という自由概念の恐怖──リバタリアンは消極的自由論に徹しているか?

 次回はいよいよ「マルクス」と最後に予告したのですけど、締め切りは5月8日に迫るも、まだ一字も書いていないぞ。さあどうする。

 それから、また後日詳しくお知らせしますが、いわゆるリフレ派経済論客の若田部さんとか飯田さんとかといっしょのムック本が出ます。執筆の時間がないと言ったらライターさんをつけてくれて、丁寧に意図を汲み取って話をまとめてくださったので助かりました。とはいえやはり校正はそれなりに日数をつぶしましたけど。

 ちょっと今抱えている出版企画を整理してみよう。
(1)ナカニシヤさんの大学院初年生向け教科書「最強のマル経」共著企画。原稿待ちでずっと止まっている状態。このままいくと、ひょっとすると誰かの分担分を書くことになるかも。
(2) C社、学部向けマル経教科書。同僚の橋本貴彦准教授との共著。
(3) D社、一般向けマクロ経済学入門書。
(4) H社、ミクロ・マクロを分けないでごっちゃにして、ミクロ、マクロ、マル経の経済学全大系を統一的に200ページで描ききる入門教科書。

 で、もちろん、シノドス連載は7月までで終わって、秋にPHPさんから出版する予定であります。

 さらに、授業外で、院生とのセンの読書会とか、毎月の市民向けのケインズの読書会とかしているのですけど、頓挫していたドブリューの一般均衡の本の読書会が、学部生一人と洛中のかつて団塊闘志だったお医者さんとで月例で復活することになりました。
 センの読書会は今読んでいる本はもうすぐ終わるのですが、次何を読むかという話になったら、女子院生が嬉々として「せんせ〜、ピケティ読みましょ〜」とからかってくる。はいはいアマゾンの古本がもっと安くなってからね。

 こんな状況の中で!
 4限目にある2回生のゼミで拙著『不況は人災です!』をテキストに使って景気の話をすることにしているのですが、続く5限は「サブゼミ」の時間ということになっていて、原則空けてあることになっています。九州と長距離通勤している間、ながらくこの時間を使っていなかったのですが、今年度は長距離通勤向けシフトの時間割でなくなったので、この時間にマクロ経済学の話をすることにしました。
 ところが、正課外の授業を入れている人がいたり、バイトが入っている人がいたりしたから、そんな人でも自習できるようにと、授業内容をパワーポイントファイルにすることにしました。ちょうど3回生のゼミでもしばらくこの話をするし、大学院の授業でもマクロ経済学の話をすることになったので、全部に使えるからちょうどいいというわけです。

 それが前半分、昨日できたぞ!
 いやいや、たぶんちょっと手間がかかるだろうなと思ったら、ちょっとの手間どころではなかった。ものすごい労力だった!
 おそらく日本で一番わかりやすいマクロ経済学入門になっていると思います。是非ダウンロードしてご覧になって下さい。

「マクロ経済学入門」パワーポイントファイル
第1話 財市場均衡の決まり方 (676KB)
第2話 財市場需給と貯蓄・投資バランス (119KB)
第3話 乗数 (549KB)
第4話 失業の原因 (1.5MB)

 このサイトの「講義・演習」のコーナーにもリンクをつけておきます。

 で、この第1話の分ができたときに、2回生のゼミの「本ゼミ」でザッと見せたわけ。そしたら、その次のコマの「サブゼミ」に残ったのは二人だけだった。本ゼミは20余名出席していたのに。
 残っていた女子学生の話では、「パワポがあんまり完璧だったから、みんな出なくていいやって思ったんでしょ」とのこと。ああ、それが合理的経済人の行動だ。経済学者としてはあらかじめ読んでおくべきことだった!
OΓ乙

 しかし、みんな出ないことを前提すると、こっちはますます作らないわけにはいかない。こっちが完璧に作ることを前提すると、みんなますます出なくなる。お互いに、相手のとる手を前提すると、今とっている手をとることが最善になっている...。
これが「ナッシュ均衡」だ!

 後半、IS−LMの話などは、夏休みに作りますのでご期待下さい。

 さて、上で書いたように、8日にはシノドス連載原稿の締め切り。そのあと間に一般向け雑誌論文の修正・校正をはさんで、18日にE誌の原稿締め切りがあります。これが結構資料調べるのに手間がかかりそうなのですけど、春闘佳境に向けてこれから盛り上がる中どこまでできるか?

 そんなわけで、今年のゴールデンウィークも、どこに出かけるわけでもなく、ひたすらパソコンに向かう日々です。
 1日にメーデーに行ったのと、今日、岡林信一さんが主宰されている「市民社会フォーラム」の学習会が近くであったので出かけてきたのとぐらいかな。どこか出かける機会は。
 今日の会は、前半が、「ミンダナオ子ども図書館」の松居友さんと泥憲和さんの講演で、さらに池田香代子さんを加えたトーク。松居さんのやっていらっしゃることは、池田さんが「とてつもないこと」とおっしゃっていましたけど、そのとおりですわ。こちらにたくさんの動画リンクがありますので、是非どれかご覧下さい。
http://www.edit.ne.jp/~mindanao/documentarysite.html
 松居さんたちの団体では、フィリピン政府軍とモロイスラム解放戦線の紛争が続いたミンダナオ島で、紛争で親を亡くした子どもたちなど、本部に住む120名はじめ、総計250名あまりの子どもたちのめんどうを見ています。さらに、困難な境遇の子どもたちを奨学生に選んで、教育支援しています。活動の原点は絵本の読み聞かせ。本部に住む子どもたちが、紛争地域や極貧地域などに出向いて、子どもたちに絵本の読み聞かせをしています。
 ミンダナオでは、政府軍とイスラム解放戦線の間の内戦で、累計世界一(国連調べ)の難民を出しています。松居さんたちは、紛争地域のただ中で、キリスト教徒もイスラム教徒も先住民族もわけへだてなく難民を支援し、子どもたちを受け入れ、平和構築のために貢献してきました。
 泥さんは、『安倍首相から「日本」を取り戻せ‼ 護憲派・泥の軍事・政治戦略』の著者として知られる、元自衛官の平和・人権運動家ですが、ミンダナオでJICAがわずか6000万円の予算を受けて、丸腰で学校をいくつも作り、農業指導をして、現地の信頼を得て実際の和平進展につなげた活動を紹介し、日本のなすべき国際貢献のあり方を提起しました。
 後半は、ヘイトスピーチに対するカウンター行動を追ったドキュメンタリー映画『レイシスト・カウンター』の上映会に続いて、また泥憲和さんと、ネット上のヘイト攻撃に対して訴訟に立ち上がった李信恵さんとの対談でした。例の「在特会」のヘイトデモに対して、反対の示威行動を行う「カウンター」行動がテーマですが、泥さんは「元祖カウンター」だそうです。直接行動性の必要性と将来あるかもしれない陥穽の両方を見据えた、実にまっとうなセンスに感服します。李信恵さんは、深刻な被害を受けた身であることを感じさせないボケをかました語り口で語る、したたかな闘い方が印象的でした。
 それにしても岡林さんのおかげで、大物の方々と知り合えて感謝しています。私は懇親会でもただひたすらお話を感心してうかがっているだけでしたけど。

 さて、先日の地方選挙、久留米にいたころ後援会役員をしていた市議会議員は、大丈夫か心配していましたが、思わぬ比較的上位の当選で安心しました。しかし、やっぱり全体的には自民党が順調でしたね。いろんな意味で残念。個人消費が相変わらずどうにも弱すぎるのに、アメリカの景気はパッとしないので、さらなる追加対策が欲しいところなのですが、こんな選挙結果なら、政府は安心してしまって、当分実現の目はないでしょう。
 いったい安倍さん何を考えているんだ?ひょっとして、このままいくと今年度けっこうすごい税収になるので、「還元」とか称して来年度予算で冒頭でドカンと支出して、7月の同日選挙に向けて一番効果的に景気を盛り上げることを狙っているとか。いやただの妄想だけどガクガクブルブル。



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