解答例と解説:全国一区除斥投票式比例代表制
※下の案では、嫌われ者のワンマンでも、第1回投票をくぐり抜けさえすれば、第2回投票での当選者を辞任させることで、繰り上げ当選することができることに気づきました。繰り上げ当選制度をとらないか、何らかの制限を入れる必要があるでしょう。(10年9月14日)
※2月24日に最初にアップロードしたときの案では、わざと絶対落選する超暴言嫌われ者を名簿に入れることによって、除斥票を集中させて、多少の扇動者も含めて当選可能性を高める戦略が取れることに気付きました。そこで、下記1.の仕組みを入れて、第1回投票でスクリーニングをかけるようにしました。(04年3月1日)
問題:特定集団を傷つける言動によって有権者の支持を得ようとするような政治家をなるべく排除し、穏健な勢力ほど有利になるような制度で、なおかつ有権者の政策志向をなるべく反映できる議会選挙制度を設計せよ。
解答例:全国一区除斥投票式比例代表制
解説:
3.の仕組みにより、特定集団から嫌われる言動をする扇動者は順位を落とすので、各自穏当な言動をするようになる。ただし、4.の仕組みがなければ、扇動者は大政党の中では順位を落としても、独立政党を作れば当選できるようになってしまう。4.の仕組みがあれば、小政党は不利になるのでそれが防がれる。なるべく多くの勢力を集めた名簿ほど、足きりの負担が小さくなるので、政党どうし共同名簿を組んで勢力を集めるのが有利になる。
扇動者の小政党独立を押さえるためには、名簿搭載者の除斥票合計に比例して政党の得票から控除する方式もあるが、この場合は、特定集団を犠牲にするのではないが反対の多い政策を掲げる政党が、議院から閉め出されるおそれがある。これは人々の政策志向をなるべく反映する題意に反する。4.の仕組みならば、大政党の側でも小政党と共同名簿を組んで足きり負担を減らすのが有利になるので、ある程度多様な政策志向が一つの名簿に入ることになる。第1回投票では各政党の名前を表に出して小異を鮮明にして競争し、そうして反映された多様さが少数の名簿にまとめられることになる。
有権者は党派を選ぶ票がなければ、除斥票を政策的反対派に対して使うだろう。また、除斥票が二票以上あっても、そのうち一部は政策的反対派に対して使うかもしれない。しかし、政策選択は名簿票で行うことができ、残りの除斥票が一票しかなければ、それは候補者個人の資質の問題で行使される可能性が高くなる。被差別者が差別者候補を落選させたいインセンティブは、通常は、ただの政策的反対派を落選させたいインセンティブよりも大きいので、この制度でただの政策的少数派が被る犠牲は比較的少ないと考えられる。
この制度をとったならば、おそらく、過剰に個人名を連呼する選挙カーは姿を消すだろう。政治家を表に立てない「市民」団体主導のネガティブキャンペーンが吹き荒れる選挙を何回か繰り替えした後、穏健な中道政党中心の「恐怖の均衡」に落ち着く。つまり、例えば社会党が共産党を、中道右派が右翼政党を攻撃すると、評判を落として除斥票が増えるので、自分ではそれをやらず、社会党が右翼政党を、中道右派が共産党を専ら攻撃するかぎり、中道両党は自分に都合のいいものとしてそれを黙認しあうようになる。中道両党間では中傷合戦は控えあって勢力を増やすだろう。
なおこの制度では首相候補は不利になる。この点については、一種のリコール制として容認するというのも一案であるが、閣僚を議員でない仕組みにするとか、この制度は第1院の暴走を抑制する第2院のために適用するという方法もある。
なお、この案はあくまで演習のために、題意に対する解答として考案したものだから、私自身がこうした制度の導入を望んでいるわけでは必ずしもない。