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 用語解説:選挙制度・議会制度


 このサイトでは、選挙制度や議会制度のアイデアをたくさん提案している。私自身は政治学者でも政治家でも法律家でもなく、ただの経済学者である。だからこのサイトで述べていることはすべて素人談義である。
 しかしどうしてそんな素人談義を恥ずかしげもなく載せているのか。私は素人だからこそ、これまで政治学や法律家の発想でなされてきた議論を知らない。それゆえそうしたこれまでの議論にとらわれず、全く経済学的な発想で言ったらどんなことが言えるか思考実験してみることができる。
 私がここでしている発想は、経済学の世界では普通の「ゲーム理論」的発想である。すなわちそれは、個々の政党や候補者、有権者といった行動主体が、広い意味で自分の利益を最大にするように振る舞うとみなす。そうすると、他のすべての人があるパターンの行動をとるかぎり、自分もそのパターンの示す行動をとるのが一番トクになるように、すべての人が互いになっている状態に落ち着くことがある。こうして決まる、人々の様々な行動のパターンのことを「ナッシュ均衡」と呼ぶ。この状態になれば、人々は互いに自分にとって一番トクになるように自ら選んだ行動によって、ひとつの社会状態が維持されることになる。
 制度を設計する時には、設計者が望ましいと思うような効果を生む制度が、こうした「ナッシュ均衡」として自動的に実現されるようにルールを作ればよい。経済学の世界ではこのような発想は「メカニズム・デザイン」と呼ばれている。選挙制度や議会制度もこうした発想で設計してみたのが、本サイトで私が提案しているいろいろなアイデアなのである。
 また、このような発想をとれば、人々の選好やそれに影響する経済的技術的環境が変化したら、あるルールの結果帰結するナッシュ均衡がいかに不合理なもの(パレート非効率なもの)になるか、ということを示すこともできる。こうして、既存のルールや提案されたルールを批判する手法にもなる。
 最近では政治学の世界でも、政治工学などと言ってこういうゲーム論的発想で問題を解く分野が現われたらしい。もともと経済学からこういう手法をもって政治学の分野に進出していった「公共選択理論」というものもある。
 どんな発想でやっているのかを実感するために、試しに一つ演習問題を解いてみよう。

【演習問題】

問題:特定集団を傷つける言動によって有権者の支持を得ようとするような政治家をなるべく排除し、穏健な勢力ほど有利になるような制度で、なおかつ有権者の政策志向をなるべく反映できる議会選挙制度を設計せよ。

解答例と解説 (04年3月1日修正)
 

サイト内リンク

首相公選制反対論と代替案
 私が首相公選制に反対なのは、衆愚論からではありません。全く逆で、人々が合理的選択をした結果へんなことになるのです。あわせて、事実上首相公選と同じになるような国会の選挙制度も提案しています。

02年8月14日エッセー「多民族国家用議会選挙方法案 」
 多民族国家で、民族ごとの排他的政党ができず、しかも多様な政策志向は反映できるような議会制度のアイデアです。

02年9月12日エッセー「公選大統領制と議院内閣制の理想的な組み合わせ方 」
 議会内の安定性状況によって、公選大統領と議院内閣首相との間で自動的に実権が交代する制度のアイデアです。

02年10月8日エッセー「寄付投票制度のアイデア」
 補助金予算の使い方を、政治家や官僚に決めさせるのではなく、納税者が投票で決めるアイデアです。

02年11月24日エッセー「市議会制度案」
 選挙民の世話を焼く議員の存在意義を認めながら、一般市民の感覚と専門家の智恵を取り入れ、なおかつ政策志向の選挙ができるアイデアです。

03年2月23日エッセー「事業組合議会のアイデア」
 無理な合併をせずとも、事業組合や広域連合の議会によって、民意を反映した広域事業ができるというアイデアです。

03年5月6日エッセー「決選投票の是非を選ぶ投票 」
 首長選挙などに、必要な時にだけ決選投票を導入する提案です。

03年5月15日エッセー「革新共同名簿はどう?」
 参議院の非拘束名簿式比例代表制では、各参加党派が党派間競争を十分しながら、なおかつ足を引っ張りあわずに統一名簿が組めるという提案です。

03年7月30日エッセー「ウェブの根アイデア改良ゼミナール1:「民主国債システム」 」
 ウェブで見つけた民意にそった公共事業ほど実現される国債システムのアイデアを、メカニズムデザインの発想で改良しました。

03年8月20日エッセー「冷戦後日本政治を図表で解く」
 今の政策分布が経済実体と合致していない矛盾から、冷戦後日本政治の変遷を説明しています。

03年9月3日エッセー「低投票率問題に対処する制度」
 投票率に応じて選挙結果が政治に影響する制度のアイデアです。

03年11月3日エッセー「私の改憲案〜裁判官人事制度について」
 一党一派にかたよらない裁判官任命ができるシステムのアイデアです。

03年11月26日エッセー「二大政党制ってどうなのよ」
 二大政党制だと、どこでも、現実の経済課題に対応した政策志向分布を反映できない矛盾が起こるという説明です。

04年6月2日エッセー「公選制論議・議会選挙制度・二院制改革」
 行政首長公選制か議院内閣制か、小選挙区制か比例代表制か、一院制か二院制かの三題ばなしを一度に解決するアイデアです。

04年7月13日エッセー 「参院選革新惨敗は戦術負け」
 革新各党派が、非拘束名簿式なのに地区割りしたのは有害無益だった。地区割りするなら共同名簿をという総括です。

04年12月22日エッセー「ウクライナとイラクの新国家システムは失敗か」
 混住のない二、三の異質な地域からなる連合国家のための、地域分裂を防ぐ国家制度のアイデアです。

05年1月20日 「広域連合議会公選制度案 ver.2」
 上記03年2月23日エッセーのアイデアの新バージョン。投票が一回ですむようにした。

07年9月7日エッセー「04年12月22日エッセーの選挙制度案改良」
 上記04年12月22日エッセーのアイデアの問題点を指摘し、各地区得票率のべき乗の積という新しいアイデアを示しました。
 
 

勝手にリンク
 

選挙制度の話
 信太一郎さんのサイトの中にあります。熟考された興味深い制度案が出ています。
 
 
 
 

 
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