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 07年9月7日 04年12月22日エッセーの選挙制度案改良(+近況)


 まず、近況を。(どうでもいいが、「近況」と書こうとするといつも「均衡」と打ってしまう。職業病。)
 8月末日にダブル締切りがありました。本当はトリプルだったのだけど、一つはとっくにすましてしまったんですね。
 で、残る二つのうち一つは、某原稿締切りで、これは「必着」となっていて、甘えが効きそうにない。もう一つは、碓井敏正先生や京大の大西さんとの新共著の校正でした。校正なんだけど、碓井先生からは、全体の統一のためにちょっと書き加えろという指示をいただいていたのです。まあとりあえず校正なんだし、もうひとつの方が厳守っぽいから、校正の方は後回しにしようと思って、原稿の方に集中していました。
 そしたらその最後の晩、徹夜執筆にかかろうとしていたときに、校正の方の編集者の人から、明日の朝8時に校了と非情なメールが。
 そう言われても、差し迫っているのはどうしようもないので、とりあえず原稿執筆最後の追い上げに励んでいたら、結局提出書類すべて整えたころには朝7時になっていたのでした。
 発送して戻ってきたらもう校正の方の時間はありません。参考文献に、今度出た野口旭さん達との共著をあげただけで、校正は手付かずの挫折に終わったのでした。あとから見直してみたら「やばい」というのが多くて、出来上がってもあまり人に配れないかも・・。
 齢40を過ぎると、徹夜のダメージは簡単には消えないのです。ところが9月2日はちょっとハードでした。
 まず朝から、市のボート大会に町内の動員で出場。これが疲れていてうっかり集合に寝過ごして、家の前まで車で拾いにきてもらってもうしわけなかったです。出場チーム名が「長門石招集メンバーズ」。「長門石」って町の名前なんですけどね。そのまんまのチーム名です。いつも練習怠りない強豪チームに混じって、勝てるはずがない。
 ちなみに市議会議員のチームもあって、そのチーム名が「呉越同舟」。
誰がうまいこと言えと。
私が後援会役員している議員も一回乗っていましたけど。
 さらに2日は、子供の夏休み最後の日でもあります。夏休みの宿題リストというものを、親子ともども初めて目にして、あれもやってない、これもやってないと大騒ぎ。英語の書き取り毎日1ページというのがあるのをこのごに及んで発見したし。結局深夜2時で私の方が先に挫折しました。
 つづいて4日が、「酒蔵開き」の経済波及効果報告の締切り。とりあえず数字が急ぐということなので、3日から何回かミスを発見しながら、再計算を繰り返し、数字と報告書のドラフトは間に合わせました。別件の懸案の事務書類も送ったし。
 5日は後援会の事務局会議があって、一日それ関連の仕事で終わりました。6日は、公開講義準備諸務(21日から始まるのにまだスケジュールが完成しないのです)でメールや電話に追われていたのと、「酒蔵開き」波及効果報告書を完成させて提出したのと、野口旭さん達との共著の献本リストを出したのとか。学内には宣伝に部分コピーを配っておきました。
 そしたら今日7日、23-24日イベントの関係で一回まちなかに行ってきただけで、急にぽっかりと差し迫った用事がない日になりました。
 このあいだにエッセーの更新しておかないと、と思っていそいそ書いているのであります。
 ちなみに、前回のエッセーにも書いたとおり、9月下旬にまた一山あります。21日が公開講義初日で私の担当回。それが終わるのが夜8時半で、そこから京都に行って、22日午前中が京大の基礎経済科学研究所の研究大会でセッション一つの座長と報告をやらされ、23日、24日は、大学で市民と協働したお祭りイベントで会場運営です。あーあ。そう言えばまだ報告のこと何も考えてない。
 10月は22日締切りで某雑誌の原稿が入っているのですが、実は同じころ、20日、21日にある経済理論学会大会で、三人の報告のコメンテーターをそれぞれしろとの要請が大会事務局から入っています。殺生な。他に探していなければしかたがないけど・・・。
 ちなみに、碓井先生、大西さん達との共著は、共著者の高橋肇さんのブログでちょっと紹介しています。

【04年12月22日のアイデアの問題点】
 さて、今日書いてみたいのは、04年12月22日のエッセーに書いた、連邦国家用議会選挙制度案について。
 イラク(シーア、スンニ、クルド)とかウクライナ(西部と東部)みたいに、異質な地域に分かれている国で、単純に人口比例の議会選挙を行ったら、人口に優る地域の利害代表が多数を占めてしまって、地域的に偏った政権ができてしまう。そうすると、少数側地域で不満が高まって、分離を求めて内戦になったりする。
 そこで、以前書いたアイデアは、各政党の、それぞれの地域での得票率を比較して、一番得票率の低い地域の得票率に比例して議席を割り振るというものである。そうすれば、地域的に偏った政党は議席を得られない。すべての地域で満遍なく得票する政党が有利になり、専ら地域を超えた政策で選挙が争われることになる。
 しかしこの場合は、得票率の高い地域でどれだけ得票しても、議席には全く影響しないので、それはまたそれで極端である。
 例えば、人口規模がほぼ同じA地域とB地域があって、A地域では社会党が7割、市場党が3割、B民族党がほとんど得票なし、B地域では、社会党が4%、市場党が6%、B民族党が9割得票したとしよう。B民族党は人口のほぼ半分を占める地域で9割得票していても、議席はゼロである。まあ、これはそういう効果のためのルールだからいいとしても、問題は次のことである。この場合、社会党も市場党も、A地域よりもB地域の得票率の方が低いので、B地域の得票率が適用されて、それに比例して議席が配分される。そうすると、市場党が6割、社会党が4割の議席シェアを占めることになる。全体を通じたら、明らかに社会党の支持の方が多いのだけど、逆の結果になる。無効票の多い地域の、その分ブレの多い得票率に左右されてしまうのである。

【得票の積に比例する】
 そこで、考えたのが今日紹介したいアイデアである。
 簡単に言えば、両地域の得票率の積を点数にして、その点数に比例して議席を配分するという仕組みである。かけ合わせるわけだから、片方の得票率がゼロに近ければ、点数は非常に少なくなる。満遍なく得票すれば点数が多くなる。
 ただし、単純な積では、地域間の人口差が大きい時不都合が生じる。別にエスニック問題とは関係ないテーマでも、人口の少ない方の地域での得票の変動が、全体の議席結果を大きく左右してしまうからである。
 だから、この場合まず、各政党の各地域での得票率を、その地域の投票総数の全国投票総数に占める割合でべき乗してやる。それを両地域についてかけ合わせたものをその政党の点数とし、その点数に比例して議席を配分すればよい。すなわち、無効票を無視すれば、
        yi=xiAγxiB1-γ,  γ=ΣixiAi(xiA+xiB)
ただし、 yiは第i政党の点数。xiAはA地域での第i政党の得票率、xiBはB地域での第i政党の得票率である。
 この場合、全国得票数が同じならば、その中で点数が一番高くなるのは、全国投票総数に占める各地域の投票総数の割合とそっくり同じ割合で、各地域での得票が分かれた場合になる。つまり、全く地域的偏りがないときが最も有利になる。

【CES関数による一般化】
 ここから先は、経済数学の趣味的な興味に走った話になるので、専門でない人には面白くないかもしれません。すみません。
 上の関数は、経済学で「コブ・ダグラス型」と呼ばれる生産関数と同じ形をしている。xiAとかxiBとかのところに、労働投入量や使った機械の量などの「生産要素投入量」をいれると、yiに生産量が出てくるという式である。
 そうすると、04年12月22日のアイデアというのは、労働などの各生産要素と生産量の関係が比例的に固定されているケース、いわゆる「レオンチェフ型」の生産関数にちょうど対応していることになる。
 そして逆に、単純に全国の得票総計に比例して議席を配分するやり方は、生産要素間が完全に置き換え可能なケースに対応している。
 したがって、いわゆる「CES生産関数」にあてはめれば、
        yi=[γxiA+(1-γ)xiB]-1/ρ
の、ρ=-1のときが、単純な得票総計に比例するケース、ρ→0が今回提唱のアイデア、ρ→∞が04年12月22日の「少ない方の得票率」で決めるケースになる。
 
 
 
 
 

 

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