02年8月13日 景気対策のアイデア
景気対策は必要である:
昨日のエッセーでも書いたように、たとえ供給構造改革の必要性を認めたとしても、そのもたらす将来像をまっとうなものにするためには、現在の不況から目をそらすわけにはいかない。現在の不況の原因が総需要不足であることは明らかなのだから、早急に何らかの総需要拡大政策が取られるべきである。
しかし財政政策は有効でなくなっている:
しかし、これまで通りの公共事業等の財政政策は、すでに有効性を失っている。様々な論者がそのことを論じてきたが、いずれも現在の日本では現実にあてはまっていると思われる。
すなわち、ざっと以下のような理由である。
消費需要を喚起する政策:
では財政赤字を出さずに総需要を拡大する政策はないだろうか。
金融緩和政策? それも必要だろう。実際ばんばんやっている。しかし、「流動性のわな」の現状では、やらないよりはましというだけで、ほとんど効果はない。
私の考えているアイデアは、人々の有利不利の判断に訴えることによって消費需要を喚起する策である。いずれも新たな財政支出はほとんど要らず、むしろ税収が増えて財政赤字解消に役立つ。
介護保健関連産業での消費税引き上げ猶予:
上記政策を同時に組み合わせて取れば、間違いなく旺盛な消費需要が興ってくる。
しかし、持続的な景気回復のためには、これが設備投資需要に結びつかなければならない。果たして上記政策でそれが期待できるかと言うと、これだけでは全く期待できない。消費税復活引き上げ後の反動消費減が見込まれる上、長期的にも、人口が停滞して市場規模拡大が望めない以上、いくら目先の消費需要が高まっても、設備投資をしようという企業は現われない。これでは、消費税復活引き上げ後、また深刻な不況に舞い戻ってしまう。
そこで法人税増税とそれと同額の設備投資補助金を組み合わせて、配当や金融投資よりも設備投資を有利にしなければならない。
さらに、介護保健関連産業では、例えば追加的5年間は消費税復活引き上げを猶予すればよい。高齢化の予想に加えて、こうして税制面からも、介護保健関連サービスへの需要が将来も減らずにむしろ高まることが見込まれるならば、企業は、この産業での事業拡大や新規参入を決断し、投資財に消費税がつかない今のうちに設備投資をしようとするだろう。
これは、昨日のエッセーで書いた「良い将来像」を実現するためにも重要であろう。
高齢化への産業の適応を支援する税制:
他方で、高齢化に向けて、供給構造改革はたしかに必要だから進めればよい。
しかし、公共事業削減で建設業をつぶし、規制緩和で生産性の低い商店街やタクシー業をつぶし、農産物自由化で農家をつぶして、これらの産業から余った労働を吐き出しても、今まで長年これらの産業で働いてきた人々がいまさら介護労働にまわることができるわけではない。結局大量の失業者が出る一方で、高齢化に対応した福祉労働はさっぱり確保できないということになりかねない。
そこで、失業者の職業訓練や、各種人材育成事業の拡充策が必要なことは言うまでもないが、旧来産業自体が、何もつぶれてしまわなくても、建設業者がバリアフリー建築をする、商店街がタウンモビリティをする、タクシー業者が介護タクシーをする、農家がシルバー農園をするというように、従来の職業はそのままで高齢化時代の役割を果たすように転進することが必要になる。
これを促進するために、このような事業では消費税や事業税を減免し、それが将来も持続することを今から確約すればよい。そうすれば、こうした事業転換のための設備投資が興ってくるだろうし、昨日のエッセーで書いた「良い将来像」を実現するのにも役立つだろう。
住宅金融公庫は当分残しましょう:
最後に。上記の消費喚起策において、一番景気回復効果が期待できるのは、住宅建設需要である。住宅金融公庫の廃止民営化が小泉改革の一環として議論されているが、将来なくなるぞとおどしをかけて「駆け込ませる」という意味では戦術的に有効な議論かもしれないが、公庫自体は、目下景気回復のためには十分存在意義がある。
しかも広く勤労者に資産形成を促すという意味では、これもまた昨日のエッセーで書いた「良い将来像」を実現するのに役立つだろう。