松尾匡のページ

 07年3月15日 ガチウヨクラスター見えた!──政治ポジションテスト



 
撤回 このエッセー執筆の数日後、下記「ガチウヨクラスター」は40代以上でも観察されるようになり、世代差はないと考える方がよいようになりました。執筆時点では、40代以上のデータ数が少ないため、観察されなかっただけだとみなすのが妥当のようです。勇み足でした。軽はずみなことを言わないようにするための戒めのため、文章はそのまま以下に残しておくので、ご嘲笑下さい。07年3月20日

 

 いやいや激動の日々が続きました。特にすごかったのは今月始め。3月3日からウチの教授の科研の仕事で屋久島に連れて行かれて、5日の夜に帰宅したあと、翌6日の朝また出発。京都で京大の大西さんの研究会に出て、吉原直毅さんの報告を聞いて翌日帰ってきた。この6日の研究会では、別の科研の仕事で、大西さんに論文を出さなければならなかったのだが、それが全然着手できないまま屋久島行きを迎えた。結局、行きの飛行機の中で計算を始め、日中いろいろと連れまわされながら、4日の晩に宿で論文を書きはじめ、翌未明4時半に書き上げるという強行軍。屋久島は全く亜熱帯だったのに、京都は雪が降っていて、体調壊しました。おまけによせばいいのに3,700円の宿とかとってるし。
 その後も会議の連続やら細々した事務仕事やら市議会議員の後援会の仕事やらいろいろありまくって、今日、まちなかの「六ツ門大学」と称する市民講座でしゃべってきて、やっとちょっと一息ね。と思ったら今、市議会議員の後援会からまた事務作業の依頼の電話が入ったわ。
 そういえば、さっき「六ツ門大学」で講座を終わったあと、年輩の常連受講者の人がプレゼントをくれたので、何かと思ったら女の子のフィギュアだった。量的緩和解除の批判とかしまくったせいで、そういう趣味人と思われたに違いない。偏見だあ。そんな趣味はないので処置に困って事務所に置いてこようとしたら、事務の女の人にさんざんウケたあと、外から贈り主の人に見えて気を悪くするから駄目だといわれて突き返されてしまった。どうしよう。

 さて以前、ポリティカルコンパスというサイトの話を書いたことがあるが、そのそっくりパクリの「政治ポジションテスト」というのがYahoo!のサイトの中にできている。私がやってみた結果は相変わらずで、こんなかんじ。「リベラルかつ小さな政府を目指すタイプ」ということだ。ポリティカルコンパスのときみたいに、「リベラル右派」とかいう呼び方されるとガックリきますが。
 下の星印が私の位置。


 

 で、今回のは、ポリティカルコンパスと違って、世代別とか政党支持別で傾向分布を見ることができるので面白い。
 こないだのエッセーで、今の20代終わりから30代初めにかけての世代は、他の世代よりガチウヨが多いという話をした。そのガチウヨが敵視する左翼や社会主義というもののイメージは、個人の自由にやらせる志向であり、上の世代の常識とは逆に、経済的な自由化志向もそのような敵イメージに含まれている。こういう話であった。もし彼らがこのテストを受けたらどこに位置するだろうか。
 上の図を見てほしい。中心よりややリベラルよりをピークとして分布するメジャーな山から離れて、左下の端に固まりがある。
 実はこの固まり、下の図の赤丸で囲ったところであるが、30代以下、特に20代、30代で見ることができる。
  
10代                   20代                   30代

 ところが、40代以上では存在しない。こつ然と消失するのだ。
  
40代                  50代                   60代

 まさにこの左下の固まりこそ、ガチウヨクラスターだろう。40代以上はデータが比較的少ないし、ほんとならばちゃんとした数値データがあれば、厳密に検定分析にかけるべきところだろう。それでも、ここまできれいに図に出ると、やはり世代の違いの有意性を感じないわけにはいかない。
 ちなみに左下だけでなくて、右上に別クラスターが顕著に見られるのも30代以下、特に20代である。60代では分布は右下がり。つまり、「リベラルかつ大きな政府」=革新、「保守かつ小さな政府」=保守という80年代までの保革図式がはっきりと見られる(私の位置を表す星印の下には何もない)。それが世代を下るごとにだんだん崩れていくさまがよく見て取れる。これも60代ぐらいになるとデータが少ないので断言はできないが、右上の象限は全体ではかなりメジャーな分布をしているところなので、その層が上の世代で薄くでてしまうのは、やはり偶然とは言えない気がする。

 ちなみに政党支持別で見ると、自民党も民主党もバラけているが、自民党は全体として保守より、民主党は全体としてリベラルよりになっている。「大きな政府」「小さな政府」については両党とも偏りがなく、差は見られない。特に、図の上の端、下図の赤四角で囲った部分が、自民党では空白になっているのに対して、民主党では埋まっている。これも「大きな政府」「小さな政府」志向と関係ない。
 
自民党支持者                         民主党支持者

 ここから言える民主党にとっての安倍内閣を向こうにまわした最適選挙戦略は、経済政策はあまり語らず、自民党とほとんど変わらないやや保守よりの政策を打ち出しながら、相手をウルトラ保守反動の権化のように宣伝することだろう。まあ実際権化なのだろうけど。
 それから、国民新党の分布が主に図の左半分というのは、設立の経緯からよくわかる。共産党支持層と社民党支持層を比べたら、共産党支持層の方がやや保守的である。社共は左上のマーケットを奪い合っているが、右上のマーケットを主たるターゲットとする政党がないということもわかる。マーケットとしてはかなり大きいのに。
 あと、右下の「小泉象限」とでも呼ぶべき位置が、予想されるほど分布が厚いわけでないとも思った。「小泉現象」というのは、右上と左下に分布する人々が、同床異夢で加わってもたらされたものなのではないか。
 
 
 

 

「最近感じること」目次へ

ホームページへもどる