松尾匡のページ09年12月13日 最近の「気づき」──「戦後イメージ」と「ランチの法則」
最後に追記あり。(09年12月14日)
あああ、びっくりしたというか、自分の甘さを思い知ったというか…
数日前、前任校の久留米大学の「コミュニティ・ビジネス論」というリレー講義でボクの番だったので、『商人道ノスヽメ』の話をしたのですけどね。
あの本の冒頭、「つかみ」の話は、「『世の乱れ』は戦後のせいか」として、「そうではない」ということを言いたいために、「昭和初期の異常事件」として、当時のトンデモな犯罪の数々をあげています。今度の講義でもそれを「つかみ」にしてレジュメにもあげたのですけど…。
受講生はその時間のうちに講義内容を一枚紙のレポートにして、授業が終わった時に提出することになっています。終わってからそれを読んでみたら、「世の乱れは戦後のせいだということがわかってびっくりした」とか「戦後長くこんな異常事件が続いてきたのだとわかってびっくりした」とかというレポートがポロポロ見つかる…。
頭の中が「?」ってなっていたのですが、あるレポートを目にしてその理由がわかりました。
「戦後の昭和初期からこんな事件があったなんて…」
あの人たちは、戦争がいつ終わったのか知らなかったのだ! (「昭和初期」は戦前です。念のため。)
しまったー!これは頭が回らなかった。「よっしゃー、今日は寝てる人も私語も少なくてウケたぞ。わかりやすく工夫したかいがあった」とか思っていたけど、まだまだ今の学生を甘く見ていた。
それと、わかったのは、「戦後」という言葉の意味がボクらと違うみたいですね。「維新後」と言ったら、維新後十数年を指して現在を含まないのと同じで、「戦後」というのは、戦後十数年を指すものとイメージされているようで、現在が含まれていないようなのです。
うーむ。ボクが学生時代のころの60年前と言えば大正時代か。無理もないですね。
ところで、話は全然変わりますが。
立命館の草津キャンパスの学食は、一階が学生用で、二階に教員用の食堂があります。そしたらこないだ発見したのは、二階の教員用食堂でいつも食べているのは未婚の男性教員で、一階の安い学生食堂では既婚のおじさん教員が食べているという法則。
このキャンパスには、いつも泊まっている「エポック」という宿泊施設にランチレストランがあって、900円ランチを出しているのですが、こんなもの誰が食べるのかと思っていたら、教職員が利用することはほとんどなくて、実は近所の住宅地のおばちゃんたちがいつも食べにきています。
そこで思い出した!
吉原直毅さんが「労働搾取の公理」というのを打ち出していて、その中に「関係搾取の公理」というのがあります。実は、「森嶋型」搾取概念にしても、ボクの「松尾型」搾取概念にしても、この「関係搾取の公理」にひっかかってしまうので、吉原さんからは「搾取概念として適当ではない」と判断されているわけです。ボクから言わせれば、どんな自然人のものにもならない機械や工場が膨らんでいく事態も「搾取」と言うべきだと思うので、この公理は納得してなかったのですが…。
「関係搾取の公理」というのは、「被搾取者がいれば搾取者がいる。搾取者がいれば被搾取者がいる。」という公理です。
「学生食堂/教員用食堂/エポックランチ」⇔「既婚男性教員/未婚男性教員/近所のおばちゃん」という見事な「対応原理」を目の当たりにすると、思わず吉原さんに納得してしまいそうになりました。
ひとからもらった本がたくさんたまっているので、そのうち書評、紹介を書かなければならないと思いながら、なかなか時間がとれないでいます。ご容赦下さい。
ああそれからそういえば、以前のエッセーで、『算法少女』で出てくる問題がわからないから誰か解けないかと問いかけていたら、台湾在住の方らしい地圖日記id: Arsueさんが解かれていました。すげー。
http://www.atlaspost.com/landmark-2826530.htm
でも「4R = 13r」って答だけ。解き方わかんないよー。
追記:13日にこれをアップしたら、大西広さんのとこの弟子の金江亮さんが速攻で解いて解答を送ってくれました。すげー。すげー。
『算法少女』算額問題の解答
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