松尾匡のページ

09年10月5日 プスプスプス・・・



※下記文章中の「今トップページに書いてある」とある文は、更新で消してしまいましたので、以下に収録しておきます。カミさんに見つかって、今後このゼミのゼミコンで自分の分以外の負担は禁止されてしまった。(09年10月22日)

 25日から、研究会+視察兼ゼミ旅行があって、さきほど立命館の研究室に戻りました。家で準備したデジカメもノートパソコンの通信装置も忘れてくる。個人研究室の鍵を紛失し、届け出て(じき出費!)スペアキーを借りたら、あとで部屋番号間違えてたことがわかり、時間も手間もとって職員の人にも迷惑かける。いっそのこと大学にデジカメ備えておこうと、研究費で買ったら、直前でカードがなくて使えないことがわかり、どこにも売ってなくて結局使えない。その他、幾多のプチ不運、ミス、先方との話の行き違いのハプニング、さらにはネタにならないハプニングが襲いかかり、只今疲れきっています。火曜日から後期授業。webちくまの連載は最終回アップ。(09年9月27日)
 ひぇぇ〜。ゼミ合宿の補助が1ゼミあたり「宿泊費6000円+交通費実費。上限3万円」となっている。学生への補助と思って、「これ補助金3万円、プラス、これワタシからや」とかって、自分の分以外に出したんだけど、今手続きしたら、補助というのは担当者個人に対する補助で、宿泊費は上限6000円しか出ないことが判明。
OΓ乙 (09年9月28日) 追伸: なぜかマックからFTPが効かなくなっていて、これアップするのも一苦労した!!
再追伸:デジカメのカード、もともとついていたことを発見。OΓ乙
 エッセー更新(09年10月5日)
 デジカメ購入の理由書を出せと通知が。ここまで引っ張るかデジカメ。ボク今何か憑いてるのか。こんな中で、id:dojinさん経由で、いまさらこんなことがあったことを知って、心理スランプも底割れへ。
http://d.hatena.ne.jp/mojimoji/20090929
id:mojimojiさんの論旨絶対支持。常野雄次郎は偉大だ。富山で何をしたのか知らんが、こんどはいくらでも誉めるぞ。「講義・演習」に明日の久留米大学の市民事業論の講義パワポをアッブ(09年10月8日)


 えー、例によってまた、拙著ご書評のお礼から。
 愛媛大学の赤間さんから、『商人道ノスヽメ』のご書評いただきました。いつもお忙しい中ご検討いただきまして、ありがとうございます。
http://d.hatena.ne.jp/akamac/20090929/1254232506


 さて、今トップページに書いてあるように、夏休み末のゼミ合宿関連の「激動」がいろいろあって、引き続いて怒濤の授業第一週を切り抜けたら、なんだか急に夏休み中より楽になっちゃいました。緊張がとけて頭がボー。
 と同時に、ケンブリッジ・ジャーナル・オブ・エコノミクス誌に論文投稿していたのの門前払いの連絡が・・・。
OΓ乙。
 これ、ベームバベルクって20世紀初頭の人の忘れ去られた概念を、吸収マルコフ連鎖っていう数学的工夫で復活させたら、フロベニウス根やら最大限利潤率やらと密接な関連が出てくるって内容の論文なんですが、この10数年、あっちこっちのジャーナルから門前払いでたらい回しにされているんです。経済理論の雑誌からは、現代的意義がわからないから経済学史の雑誌に出せと言われ、経済学史の雑誌からは、数学的に過ぎるから経済理論の雑誌に出せと言われ・・・、メトロエコノミカ誌なんて、三回も書き直させたあげく、やっぱり意義がわからないから経済学史の雑誌に出せって。もー、どうすればいいんでしょう。

 そんなこともあって、先週帰宅してから何もやる気がおこらなくなっています。ともかく経済学のことも、まちづくりやらNPOやらのことも、商人道もマルクス思想のことも考えたくないし、それ関連の本も読みたくないって感じ。読んだら頭がプスプスプス・・・。
 まあ、日本経済の行方なんて考えたら気が滅入るしかないですよね。だいたい、攘夷捨てる前に維新が起こったみたいなもんだし。


 こんなときは、超久しぶりに数学の読み物でも読むしかない。経済学と関係する読みかけの数学の本とかは、また難しくてプスプスくるので、なんかもっと軽ぅーいやつがいい。
 というわけで、小島寛之さんの『キュートな数学名作問題集』(ちくまプリマー新書)を読みました。ご本人の紹介文がこちらにあります。
 そしたら、まあ、すごくおもしろい。すごくおもしろいんだけど、解けないの。中学生レベルだと言うのに、だんだん解けない問題が続くようになる。考えているうちに、すぐ眠ってしまう。なんてこった。
 最後の方の難問が歯が立たないのは、もともと自分のレベルがそんなものと思うけど、最初四分の一ほどすぎたあたりからもうダメダメになってきちゃいました。
 特にショックだったのは、144ページの2-11。ネタバレになるから書かないけど、経済学者なら絶対この解答を考えつくべきだった。いつもかいてる図と同じ発想で簡単にできたんじゃん。ああ、すさまじい数学的帰納法を解いてしまった。
 いやほんとさっぱり頭が動かずにすぐ眠くなるんで、我ながらあきれました。一番頭が回った時期を、育児と地域貢献仕事に追われて無駄に過ごしてしまったなあ。数式解かない日々が続くうちに、もう数理モデル分析ができない頭になってしまっているのかもしれない。近年はそれが薄々わかっているから、それを直視しないために、いろいろ余計な仕事を入れて忙しくしていたのかもしれない。このまま、知力が衰えていって、ボクの後半生が終わっていくんだな。・・・と思い知りました。
 そんな中でも一応一つだけ小島さんの解答より我ながらうまく解けたぞー、というのを自慢。ネタバレになってもよろしければこちらを。p92、問題2-1。


 数学読み物と言えば、こんなのも買いました。その名も『算法少女』。リフレ派のオタクども(他人事)が萌えもだえそうなタイトルですけど、初版70年代のいたって健全な少年少女文学です(遠藤寛子作、ちくま学芸文庫)。
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 子供に読ませようして全然読もうとしてくれないうちに、こっちが一気に読み切ったんですが、いやあ面白い。たしかにある意味萌えるかも。
 『算法少女』というのは、実は、実際にある江戸時代の和算書の名前です。ある市井の和算家である町医者と、その娘が書いたものです。この小説は、この江戸時代の和算書をめぐるドラマです。
 和算と言うと、足し算引き算かけ算割り算ぐらいしかないようなイメージがあるかもしれません。しかも少女が書いたとなると。
 ところが江戸時代の和算は、西洋数学から独立にすごい発展を遂げていて、円周率は42桁だったかまで出ているし、高次方程式、級数展開、行列なども普通に使われていたようです。『算法少女』も円周率の求め方などが出てくる高等数学の書物です。
 小説の『算法少女』は、これに題材をとり、この父娘はじめ、実在の和算家が次々出てくるお話になっています。我がご当地久留米の有馬の殿様も出てきます。
 お話は、主人公の13歳の少女「あき」が、旗本の息子が奉納しようとした算額の誤りを見つける騒動から始まります。それを聞きつけた算法家の有馬の殿様が、あきを姫の算法の相手に召し抱えたいと言い、そこに流派争いから横やりが入って、お約束のライバルの少女が出てきて等々という展開ですが、終盤は、このエッセーでも以前取り上げた久留米藩大一揆がからんで、ちょっとしたサスペンスになります。クライマックスは例によって少女の正義の勇気にドキドキだ。
 で、最後はやっぱり殿様のところには上がらず、貧しい子供達のために算法塾を開く人生を選ぶという、これもまあある意味お約束のオチですけど、なかなかグッドな読後感です。おすすめ。

 それで、この中に出てくる問題がやっぱり解けないの。
 ひとつが、冒頭の旗本の算額の問題。

「半円に直角三角形が内接している、この直角三角形の内接円と弓形内に描いた最大円が相等しいとき、 外接円と小円の半径の関係を求めよ。」

と言ってもイメージつかないと思いますが、こちらのG.C.さんの「数学資料館」にある「算法少女」のページの「( 7) 算法少女の中の問題」のところに、本のイラストのが載っていますので、それを見れば題意は一目瞭然だと思います。

(後記:大西広さんのとこの弟子の金江亮さんが解いてくれました。09年12月13日のエッセーの追記。)

 もうひとつが、殿様の前でのライバルとの対決のときの問題。

「円のうちに、大円二個、小円二個が接した形があるが、それらの大円小円は、またお互いに接している。いま、いちばん外側の円の直径を七寸、内に接している大きい方の円の直径を三寸としたら、小円の直径はいかほどか。」

 これは、題意がよく取れません。ともかくどちらも気になってしかたない。誰か解けますか。


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