松尾匡のページ10年12月1日 列島縦断の大激動──テレビ収録してなぜか小説書いた
『図解雑学マルクス経済学』引き続き、ネットでのご紹介いただいております。
前回のエッセーでもあげた、大学時代の文芸部の友人が、また過分に誉めてくれてうれしいぞ。彼は当時詩を書いていて、ボクは小説を書いていました。なつかしい。どうもありがとう。
lost2decads様のブログ「Memorandumof Economic Issues」でも、おとりあげいただいております。誠にありがとうございます。
ところで、宮崎哲弥さんのトーク番組に出演せよと言われたので、人生初のテレビ収録をしてまいりました。
実は、息子の通っている高校が宮崎さんの出身校でして、来年高校に講演にきていただくことになっているのです。それで、出演依頼のメールを妻に見せたら、妻はPTAの役員なので、宮崎さんにはお世話になるので必ず出ろと。担任にまで手を回して圧力をかけてくるので、断るわけにもいかず、妻やら担任やらの「くれぐれもよろしく」との声を伝えることを第一目的にいってまいりました。
マルクス経済学の解説をしろという話でしたけど、番組冒頭宮崎さんには、拙著『図解雑学マルクス経済学』ほか、『痛快明快経済学史』、さらには口頭で『不況は人災です』の紹介をしていただき、誠にありがたいかぎりです。
局があらかじめ『図解雑学』からフリップをいくつか用意していたのですが、宮崎さんはそれを10分ぐらい前にはじめてぱらぱら眺めただけで、ほとんどアドリブで話を進めました。
ボクは局側からおおまかな話の示唆をされていたので、あがってかんだりしたら困ると思って、あらかじめ少しは話を考えてきたのですが、結局役に立ったものはひとつもない!こっちもほぼアドリブで受け答えすることになりました。説明の前振りとか途中なのに次の話題にいったり、不正確な言い方をしたりしたことがいっぱい。思い出したら支離滅裂だったような気がするのですが、乗せ方は本当に上手で、まあまあ、楽しく収録が終わったと思います。
実は、このかん、これも含めて大変な激動が続いていました。ざっと並べたらこんな具合。関西→九州→東北→東京→関西→九州→東京→九州と、短期間のうちにすごい移動。
◆11月23日(火) 祝日なのに講義日。久留米をまだ暗い早朝発。立命館で10時半から推薦入試の書類審査。終わって、午後授業。最後三十分前に打ち切って、セミナーの会場準備。15時半から、ブラジルのベーシックインカムの実践家・研究者の報告によるセミナー。終了後部屋を片付けて、JRで移動して学部主催の別企画の懇親会に参加。
◆11月24日(水) 毎週1、3、4、5限が授業。合間、11月25日締め切りのゼミナール大会論文を今頃になって慌てて書いているゼミ生たちの相談が次々入る。5限目は指導予定の大学院生が病欠なので、代わりにゼミナール大会論文指導にあてる。国際経済学の小島さんの本の説明がさっぱりわからないので突き詰めていくうちに、背後に一般均衡モデルとかなくて、ただお話の道具として等産出量線とか使っているだけだということが暴露されていく。付属高校と学部との懇談の会議の時間になったのでかけつける。
◆11月25日(木) 夜九州の久留米に帰宅。
◆11月26日(金) 久留米大学経済社会研究所開設記念シンポジウム。一参加者ですが、13時半からフル参加して、懇親会にも出席。席上、講演者の京大のU教授がボクがこんなところにいることに驚いた様子なので、れっきとした久留米市民であることを強調。
◆11月27日(土) また早朝自宅を出て、飛行機で羽田へ。東京駅から新幹線で仙台に行って、東北大学で行われた吉原直毅さんたち主催の研究会に参加しました。これは、主にマルクス派やポストケインジアンの、かなりレベルの高い数理モデル研究の研究会で、報告を一人二時間かけてじっくり検討するものです。
◆11月28日(日) 研究会二日目で一日中カンヅメ。吉原さんのはもちろんおもしろかったのですが、最後に、一般均衡理論の大家の山崎昭さんの「均衡分析における市場均衡の存在・非存在の意義と市場メカニズムの解釈について」という報告が一番おもしろかった。ひょっとして一番ラジカルな報告だったかも。
◆11月29日(月) 翌日のテレビ収録のための上京があるので、九州に戻るより、新幹線パックで仙台三泊にした方が安かったので、何の用事もない仙台三日目。研究会に出てた、センの研究をしている東北大学の院生に世話をいただいて、図書館の一番静かな場所で、12月5日の学会誌編集委員会のための論文審査報告書の作成準備に取りかかる。
まあ、せっかくだから何か見なければと思ったのですけど、東北大学は仙台城二の丸にあって、近くには仙台市博物館があり、東北大学の植物園も公開されているのですが、両方とも行ってみたら月曜日は休みでした。仕方ないから雨の中、本丸跡、いわゆる青葉城まで登ってきたのですけど、馬上の正宗像があるぐらいでしたね。
◆11月30日(火) 仙台からテレビ収録のため新幹線で上京。仙台は街がきれいで、東北大のキャンパスも木々がいっぱいですばらしく、人も親切でよかった!!…で、乗り換え多少手こずり、原宿駅で降りて、はじめて竹下通りを歩いて局までたどり着きました。東京はいつも迷ってばかりなので、行くたびに緊張感が増すわ。収録後、新幹線で上洛。滋賀県の草津キャンパス泊。
で、12月1日、2日と、授業で立命館にいるわけです。このあと、3日は久留米にいますが、4日夜、久留米市議会議員の後援会の忘年会に出て、5日早朝出発、また27日と同じ飛行機の便で上京し、池袋の立教大学で学会誌の編集委員会に出席。前回の反省をふまえ、一本遅い最終便で日帰りする予定です。今、そういうわけで、学生の提出物の採点などに追われる中、編集委員会に向けて審査報告書作成にいそしんでいます。これが、レフェリーの意見をまとめるだけではすまず、ちゃんと論文読み込んで計算チェックしたり、レフェリーの数式とかも確認しないといけないので、けっこう大変なんですよ。
ところが、こんな列島縦断の大激動に見舞われると、なんか余計なことをしたくなるのはなぜだ!
ついこないだまで、ノートパソコンが壊れて持ち歩けなくなったもので、新幹線の中でものが書けなくなって、吉原さんの論文とか読まなければならないと思うんですけど、あんまり難しいから読んでるうちについついボーッと関係ないこと考えてしまう。それで、車中妄想することが多くなって、もしこんなことが起こったら、こうなってこうなってとシミュレーションしているうちに、久しぶりに小説が書きたくなった。
そういうわけで、大学の文芸部時代以来四半世紀ぶりぐらいに小説を書いてみました。読んでみてください。
小説「島の挽歌」
あ〜あ、とうとうこれで「門下の三大変人」になっちゃった。(内輪受けネタなので詮索しないように)
そういえば、仙台での懇親会で、W田さんのミケランジェロの小説がおもしろかったと言ったら、「あんなものおもしろいと言ってるようじゃ才能ないね」と言われたのでした。
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