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11年2月7日 今度は報告レジュメ原稿ムダムダ事件



 田上孝一さんから2月6日の「社会主義理論学会」の研究会で報告せよとの話がありましたので、前回の上京から一息つく間もなかったのですが、専修大学に行ってまいりました。

 これ、長島誠一大先生が新著『エコロジカル・マルクス経済学』を出されたので、その「お披露目」報告をしてもらうので、ついでに、ボクも新著『図解雑学マルクス経済学』にひっかけて何か話せということで降ってきた話。でもただ並べるだけではおもしろくないから、何か話がぶつかるようにしようということで、もともとケンカするつもりとかは何もなかったのですけど、あえて話がぶつかりそうなところに論点を絞って、「マルクス経済学の人間主義的構造」とタイトルを掲げた次第です。

 掲げたはいいけど、全然準備なんか着手せずにずっとほったらがしてたら、なんかいろいろやることが重なりだしたでしょ。
 で、先週末は1日の全労協の講演準備でつぶれ、1日火曜日がその講演で、翌日は東京発って関西の大学に事務手続きによってから九州に帰宅したら夜中。3日、4日は睡魔と闘いながら成績付けと、別の学会の仕事を少々。
 ところが5日土曜日は、県会議員の人の新年会があったんだな。しかも学会報告後の帰宅が月曜になって月曜朝の資源ゴミが出せないから、その日のうちに、溜まった古新聞の切り抜きをしておかなければ。それに、名刺を切らしていて(せっかく2日に大学よったのなら名刺取って帰ればよかったのに)、県会議員の新年会と翌日の学会報告のために名刺を作らねば。
 これがまた名刺作るのって、微妙な調整で結構な苦労で、思わぬ時間を喰ってしまいました。新聞切り抜きは新年会までに間に合わず、新年会から帰ってきてまた続行。
 ちなみにその新年会では、来賓に民主党関係者がいっぱいいる中、会う人会う人「大きな声では言えないけど...」という話(笑)で盛り上がっていました、ええ。そういえば私事で大変世話になった知り合い(『不況は人災です!』も読んでくれている)が、今度市議会議員に初出馬…というだけでも大変な苦労なのに、わざわざ民主党公認をとっての立候補ということで、「なぜにこんなイバラの道を!」と。まあ、自分とこの候補者じゃないから文句はつけませんが…。票は入れないけど心から応援しているので、こっちの市議候補ともども勝利してがんばってほしい。

 で、やっと深夜準備に着手することになったわけだが、実は飛行機のチケットが間に合わなくて取れず、新幹線で九州と東京を往復することになったので、翌日は新幹線の中で時間がたっぷりある。しかし新幹線の中で本を引用しようとすると、何冊も持ち歩かなければならない。それはキツい。──というわけで、その晩まずやるべきことは、資料の抜き書きを作っておくことだと思いつき、せこせこと本をワープロ文書に写してたのでした。やっぱりかりにも学会報告ですからね。いっぱいマルクスの引用しておかないといけない。ところが通称『グルンドリッセ』(『資本論草稿集』)が自宅にないものだから、あの本に載ってたはずだ、この本に載ってたはずだと、主に角田修一さんの本から孫引き。あと、覚えてるフレーズで検索かけてネットで見つけるとか。
 当日6日になって、日曜というのに朝早く起きて、いつも立命館に行くのと同じ新幹線でノートパソコンを開いて、いざレジュメ執筆開始です。よせばいいのにコリコリの図をかいたりして。
 首尾よく東京に着く前に完成したので「よっしゃー」とか思っていたのです。

 プリントアウトやコピーにかける時間も考えないとと思って、パンかじりながら歩いて、会場に着いたら。
 結局、プリントアウトする機械なんてありません、映写装置もありません、とのこと。OΓ乙。

 仕方なく、まるで講義のように、ホワイトボードに激しく板書して報告したのでした。
 結論は、人間が主体で、自然を対象として、これをコントロールする力が増すことを進歩とみなす見方は、マルクス思想の根本にあり、それは労働価値概念の本質だということです。だからこれは、エコロジー思想と、そう簡単に結びつけられるものではないわけです。
 これが結構ウケて、やりとりも建設的に盛り上がってよかったです。

 そういうわけで、また例によって膨大なエネルギーをかけたものが無駄になってしまったのですが、もったいないので本サイトの「アカデミック小品」のコーナーにあげておきます。
 そういえば思い出したけど、大昔学生時代に自治会役員をやっていて、自治会新聞の記事とか論考、ネタ文をしょっちゅう書いていたのですが、それを当時の委員長に次々ボツにされて、そのうちボツにされたボクの原稿を入れるための袋が壁に付けられ...。その袋に大きく「お蔵」と書いてありました。当時、向坂逸郎らの作った社会党の綱領的文書「日本における社会主義への道」が「お蔵入り」と言った社会党執行部の表現をもじって、文書がボツになったら「お蔵入り〜」と言いつつその袋に入れるという案配です。(佐藤委員長ってんだけど、「同志サトーリン」とかいうキャラを作って、最初から絶対「お蔵入り」にされるに決まっているのに、しょっちゅう「サトーリン」ネタをかいていた。)
 このサイトでも「アカデミック小品」じゃなくて「お蔵」のコーナーに名前を変えた方がいいかもしれない。

 研究会の参加者のみなさんは、研究者だけでなくて、いろいろな職業の人や退職者や学生などがいらっしゃって、懇親会も盛り上がっておもしろかったです。拙著を読んでおもしろがって下さっている人もいろいろいらっしゃることがわかって、ありがたく思いました。いただいたアイデア、アドバイスなど、今後できるかぎり反映するよう努力いたしますので、これからもよろしくお願いいたします。

 ところで以前エッセーにちょっと書いた、保健管理センターから呼び出された件は、肺の写真に結節が見えるとのことで、明日久留米大学の病院に精密検査に行きます。さあどうなるか。
 

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