松尾匡のページ

13年4月16日 お知らせ三件



 4月9日にラジオに電話出演させられた話を翌日トップページに書いたので、コピペ収録しておきます。
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 昨日突然TBSラジオの人から電話があって、夜、荻上チキさんの生放送ラジオ番組で福島瑞穂党首に電話質問しろと言われてびっくり。ああ、でもやっぱりやってみると、頭の回転遅くてアドリブできないからねえ。事前に準備した文読みあげている間はなんとかなったけど、想定問答にない返答が来たら案の定グダグダ。あのあとベッドの中で悶絶していた。チキさんにはすばらしいフォローありがとうございます。ここに音声があがっているみたいですけど、怖くて聴けない。福島さん一応、金融緩和理解については再検討するとはおっしゃって下さっていたけど、今日は内田樹さんと会談だそうで、一気にリセットの予感であります。(13年4月10日)
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 宮崎哲弥さんのテレビに呼んでいただいたときも、グダグダの極みであとで悶絶しましたけど、やっぱり自分にはテレビやラジオは向いていないと思い知ったわけであります。その週帰宅するときの新幹線が、新大阪で乗り換えて「みずほ」だったというだけで、ちょっと落ち込んでいました。
 そしたら、その後カミさんにスマホで無理矢理大音量で聴かされたのですが、思っていたほどひどくはなかったな。へたくそなしゃべりかたには違いないけど。(ちなみに私のはだいぶ前に裏蓋が取れてしまった古い携帯であります。はい何の不満もありません。)
 英会話でも、山のように言い間違いをしているに違いないのですけど、中でたまたま気づいた、be動詞の次に動詞を並べたとか、三単現のs忘れたとかが気になって話が止まってしまう。そしてあとで思い出してはウダウダしてしまいます。こんなので上達するわけがないのですが性格だからしかたない。

 あとでああ言えばよかったとウダウダ思っていたことのひとつは、「金融緩和しても緩和マネーは銀行に積み上げられて世の中にまわらないのではないか」という福島さんの疑問に対してです。「前回の景気拡大のときにも庶民には行き渡らなかったではないか」というわけです。ごもっともであります。──ああこの「ご疑念を持たれるのもごもっともです」の一言も言えばよかったあ〜。私の言い方はいかにも余裕なくしてるというのがアリアリで、反発買うだけでした。
 一番簡単な返答の仕方は、「緩和マネーのうちかなりの量は政府支出にまわるから直接需要になる」でした。ゼネコンに行くという中身の問題は別途批判するとして。前回の景気拡大のときは、途中で金融緩和をやめてしまっただけでなくて、小泉さんたちは年々公共事業を削減していたのでした。こっちの方がわかりやすかった。
 話の最中ではそっちの方は頭になくて、言おうとしてあきらめたのは、金融緩和だけでも実需にまわる理屈。人々がインフレ予想を抱けば実質利子率が下がるからというわけです。ではなぜ人々がインフレ予想を抱くのか。仮に政府支出拡大なしの金融緩和だけだとしても言える理屈はこうです。
 銀行などが、おカネのままおいておいてしまって貸出に回さないのは、将来景気が回復して金利が上がるかもしれないのに、今の低い金利で長期に貸してしまうと損だからです。あるいは同じことですが、将来債券価格が下がるかもしれないと思うと、怖くて債券が買えないというわけです。ケインズが言っている「流動性のわな」の理由ですね。だから、景気が多少回復しても、金融緩和はやめず、金利は簡単にはあがらないぞとという見込みがつけば、安心して長期の貸し出しにまわす分も出てきます。それで設備投資などに使われることが増えるから、プラスのインフレを予想するのも根拠があるというわけです。
 これを一瞬言おうとしたのですが、時間内に言えそうにないから諦めて、グダグダになっちゃったわけです。

 まあ、銀行に停滞したおカネが世の中に回り易くするには、普通の銀行が日銀におカネ預けた時にもらえる利子をなくしてしまった方がいいと思いますけど、なんでなくさないのだろうか。黒田総裁もこのあいだ2%を2年で2倍でという記者会見で、それをなくすことはしないと断言していたので、何か合理的理由があるのでしょうけど、実は正直言ってよく理由が理解できていません。

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 さて、あいかわらず九大での共同研究論文は終わっていないのに、次々と新年度からの仕事が入って忙しい中、なんでこんなもの更新しているかというと、期限の迫っているお知らせがあるからでして…。
 先日、卒業式に出校したら、「弁護士アピールを支持する市民の会」という団体から署名用紙が送られてきていました。推測するに、昨年12月22日のエッセー「参院選共同名簿はウィン・ウィンのアイデア」をご覧になったかたがいらっしゃるのではないかと思います。
 呼びかけ人のかたがたは弁護士のかたがたなのですが、要するに、今度の参議院選挙で、改憲反対や脱原発といったほとんど同じ主張をする弱小政党がまたもや乱立して、たぶん足ひっぱりあって負けるだろうから、共同の政党連合を結成して立候補して下さいという要望です。

 ホームページはこちらです。
弁護士アピールを支持する市民の会

 次のページから署名用紙がダウンロードできます。
要望書

 ウェブ署名もできます。
弁護士の「要望書」の支持・賛同署名

 次の集約が4月20日で、その次はだいぶ先の5月31日になるようなので、取り急ぎお知らせしておきます。要望書の宛先は、未来の党、生活の党、共産党、社民党、新社会党、緑の党、みどりの風(うわっ字間違っていた。単なる変換ミスでした。4月17日修正)、新党日本、新党大地ということです。

 まあ、現実には相当難しいでしょうけどねえ。
 2月18日に行われた「選挙時協力党方式について考える」という討論集会で、コメンテーターの緑の党の人は、社民党、新社会党との選挙協力を否定し、「特に若い人には何の魅力もない」と発言したそうです。
 社民党、新社会党が若い人に魅力がないのは事実でしょうけどね、それを克服して若い人にアピールする方向が緑の党だと思っていらっしゃったならば、こんなお門違いはないと思います。緑の党のような主張の勢力の存在意義は認めますけどね、それはたとえ若い人々の願いに背を向けて、ごくごく少数者になっても守り抜く覚悟をお持ちになってのものだと思います。

 緑の党は、「アベノミクスは人びとの生活を破壊する」とする論説の中で、「すでに日銀による金融緩和は十分すぎるほど行なわれています」と言って一層の金融緩和を批判し、緩和マネーで政府支出することについて、「日銀が戦時中に国債を直接引き受けたのと同様で、財政赤字の膨張に対する歯止めは失われます」と論難しています。そして、「すでに経済成長の条件の時代は終わり、仮に一時的に経済成長しても、増えるのは低賃金の非正規雇用と正社員の長時間労働だけなのです」という見通しを示しています。
 社民党や共産党と違って、こんな主張をされても怒る気は全然しませんけど。緑の党はそういう政党なのですから。社会主義政党は人間解放を目指すものですが、人間の生活よりもイルカやアザラシが大事だという政党があってもいいと思います。

 既成左翼政党が若い人に魅力がなくなっているのは、長引く不況の中で、就職口がなく、あっても不安定で低賃金で、貧困の中でのたうちまわっている多くの人々に、この状況から脱却する明確な展望を示してこなかったこと。このことにつきます。だからこそ、自分に寄生して良い目を見ているスケープゴードがいないか探して、相対的に恵まれた層や弱者や少数民族等を排撃する方向に、よほど展望を感じることになるのです。これはこのような条件で発生する必然の現象であって、このようになった責めのかなりの部分は既成左派勢力が負わなければならないと思います。
 かつて総評・社会党ブロックの平和と民主主義、反差別等々の方針が、多くの労働者の支持を得たのは、右傾化した今の大衆よりも賢かったからかと言えば、絶対にそんなことはない。そもそも年々賃上げを実現し、労働条件を改善して、人々の暮らしを豊かにしてきたからこそ、大衆の信頼を勝ち取ることができたのだと思います。これが本当にできているならば、ウヨのナショナリズム論議など、一銭の得にもならない空中論議にしか感じられないでしょう。

 まあ、おとといの、我が師匠が住んでた宝塚市の市長選勝利は本当によかったけど、これも浮かれずに是非勝因を冷静客観的に分析してほしいものだと思います。官邸前デモに直面したときの浮かれぶりったらなかったし。自分たちの力を冷静に見たら、バラバラに闘って得られるのは、三分の一どころか、全部合わせても議席が取れるかどうかというところだとわかると思いますけどね。
 

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 そういえば、もう一つお知らせ。
 「朝日カルチャーセンター」の新宿教室から頼まれて、6月1日に東京で講演をするのでした。内容とお申し込みはこちらから。
「右」と「左」を問い直す──これからの本当の対決軸とは

学生用のお申し込みページはこちらだそうです。
学生会員 「右」と「左」を問い直す──これからの本当の対決軸とは

 去年の2月20日のエッセー「いわゆる「政府の失敗」論は何を問題にしてきたか」の内容を解説するつもりでいます。




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