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 02年10月13日 ソ連未練派と国粋主義者がいかに同じか


 私は東欧革命のずっと前から、ソ連型体制は社会主義ではなく国家資本主義体制なのだと言ってきた(「用語解説:ソ連=国家資本主義論」「私の主張3『ソ連の「社会主義」とはなんだったのか』)。しかし、ソ連東欧体制の崩壊後、かの体制の欠陥と悪業が暴露されつくしている今になってもなお、この体制に未練を引きずる人々を説得することは誠に容易ではない。
 私はそれでもめげずに繰り返し繰り替えし説得を続けてきたのだが、その際返ってくる反論には典型的パターンがあることがわかってきた。
 そうこうするうちに、90年代の終わりから、日本の過去の侵略を開き直る国粋主義者の主張が急に世に広がってきた。そのとき気付いたのは、この国粋主義者達の主張が、ソ連未練派の言っていることと実にそっくりなパターンを持っているということである。
 これを表にまとめてみようと思う。下線部を入れ替えると右と左は全く同じになることがわかるだろう。
 
ソ連未練派
国粋主義者
 現代の基準で評価してはならない。革命は食うか食われるか。白衛軍や列強干渉軍も非道なことをしていたではないか。ソビエト政権は帝国主義列強に包囲されていたのだ。その中で必死で生き残ろうとしていたのである。  現代の基準で評価してはならない。戦争は食うか食われるか。英米や中国軍も非道なことをしていたではないか。日本は帝国主義列強に包囲されていたのだ。その中で必死で生き残ろうとしていたのである。
 共産党体制ロシアに教育を普及させ、工業建設をした。  日本韓国や台湾に教育を普及させ、工業建設をした。
 普通の共産主義者労働者解放の理想に燃えて革命に献身したのである。これを踏みにじるのか。(と言って、個々の真面目な共産主義者労働者のために尽くした善行の具体例をあげる。)  普通の日本人は、白人の支配からの大東亜の解放の理想に燃えて戦争に献身したのである。これを踏みにじるのか。(と言って、個々の政府スローガンを真面目に信じる日本人アジア人のために尽くした善行の具体例をあげる。)
 ロシア革命が成功しソ連が発展したおかげで、世界の労働者は勇気づけられ、資本家階級はそのパワーに脅威を抱いた。こうして、世界の労働者の闘いが発展し、労働保護法規の制定や社会保障制度の実現などの譲歩を資本家から勝ち取ることができたのだ。  日本が大東亜戦争に乗り出して緒戦で米英をけちらしたおかげで、世界の植民地大衆は勇気づけられ、白人はそのパワーに脅威を抱いた。こうして、世界の民族解放の闘いが発展し、植民地独立などの譲歩を白人から勝ち取ることができたのだ。
 ソ連ベトナムなどの世界の民族解放闘争を支援した。  日本兵インドネシアなどの世界の民族解放闘争を支援した。
 自分がこんなことをもう一度したいわけではない。しかし過去先人が理想のために壮大な試みに乗り出した歴史を精算してしまったならば、どうして今仲間のためにがんばろうという気持ちになれるだろうか。自分だけよければいいというエゴイズムが蔓延し、結局労働者は資本家に食い物にされてしまうだろう。  自分がこんなことをもう一度したいわけではない。しかし過去先人が理想のために壮大な試みに乗り出した歴史を精算してしまったならば、どうして今同胞のためにがんばろうという気持ちになれるだろうか。自分だけよければいいというエゴイズムが蔓延し、結局日本人は外国に食い物にされてしまうだろう。

 しかし結局自国と世界にもたらした悲惨は同じなのである。
 両者に共通するのはその膨大な犠牲者への共感の欠如である。自分の都合の良いところばかり見て都合の悪い事実からはなるべく目をそむけようとする姿勢である。

 このような立場は、根本的な反省がなければ、「ソ連」や「日本」にあたる部分には、「オウム真理教」が入ったり「○○会社」が入ったりいろいろ入れ代わっては、延々と同じような過ちを繰り返し続けるだろう。
 
 

 

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