松尾匡のページ

15年1月7日 新春景気展望



 PHP新書の拙著『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』その後もネット上でいろいろご書評いただきまして、ありがとうございます。今回は特に今まで存じ上げていないかたからのご評価を何件もいただいていますが、だんだん分不相応に名が知れてくると各方面からのアンチも増えてまいります。ご迷惑をおかけしてはいけませんので、これまでネットで拝読したことのあるかたで、大丈夫そうなところだけご紹介して、お礼もうしあげておきます。

出版社「南船北馬舎」さま:近著探訪(36)
 いつも拙著について適切なご書評をいただき、ありがとうございます。

はてなid: davsさま:人民戦隊・党レッドの経済綱領に心引かれる〜『ケインズの逆襲、ハイエクの慧眼』
 従軍慰安婦問題についてはこのブログを読めというような有意義な言論活動をされていて、いつも尊敬しております。朝日謝罪事件以降、日本軍国主義の責任自体が虚構だったかのように言いふらすデマ言説が世間をおおう中で、大変貴重なブログだと思います。そんなブログの中で好意的に取り上げていただいて、とても光栄です。
 同じクラスターの人の中には、私のアンチもいると思うのですが、エントリーを出した時点でクラスター内には知れ渡っていると思うし、おそらく日頃ネトウヨの嵐に慣れていると思うので、謝意を公表することを優先したいと思います。

 ここに取り上げなかったみなさんにも感謝しております。

 12月20日には、郷里石川県の金沢で、金沢大学藤田暁男名誉教授の傘寿記念を期に復活した研究会で、本書の合評会を開いていただきました。金沢大学の瀬尾崇さんのゼミの学生さん三人が、私の本をよく読み込んで批評して下さり、とてもありがたかったです。
 その晩は石川県の実家に泊まって、翌日はシノドス連載原稿の締め切り。あいかわらずバタバタのスケジュールです。
 これは、なんとか無事書き上げて、年末25日に掲載されました。
連載『リスク・責任・決定、そして自由!』第13回:固定的人間関係原理から見た解釈の矛盾──新自由主義と「第三の道」の場合

 原稿を仕上げたと思いきや、締め切りの翌日23日は、学部のゼミナール大会の優秀者の発表会があって、最優秀賞の審査の仕事がありました。

 この日は天皇誕生日のはずですけどね。立命館は授業があるのです。
 文部科学省の半期15回授業をやれとのお達しによって、最近ではどこの大学も祭日に授業をやるようになっています。実は、立命館はこのかんいつも、お上の意向を先取り先取りして動いていますので、他の多くの大学に先駆けて、ずいぶん早いうちから祭日授業をやっているのです。
 いや、このところ、ついつい大学理事会への批判などをウェブ上などで公言してしまうことがあるのですけど、どうも最近わかってきたんですけど、当局はかえって喜んでいるんではないかと...。
 つまり、70年代あたりの上から下まで真っ赤に染まった大学のイメージが、世間でいまだに一部の人たちに残っているのを、あの人たちは、なんとか払拭したくてしたくて仕方ないらしい。本当は、国家と産業界に役に立つためのつもりで率先して突っ走っているのが実態なのですけど。
 だから、私みたいな立場からネオリベ精神の権化のように言われるのが公になるのは、かえって歓迎されているふしがあるのでは!なんだかそうなると、何を言っても無駄なような気がしてむなしくなってきます。

 もう、立命館当局を動かすには、保守側からの批判がおこらないといけない!
 ネトウヨがツィッターで、「立命館は天皇誕生日にも授業をやっている。やっぱりアカ大学だ。」とか言って炎上させてくれないかな。そうなったら、片×さ×き!出番だぞ!
 でも本当にそんな騒ぎが大きくなったら、
「わたくしのことはどうかお気になさらず、みなさんが心置きなく勉学にはげまれることを願っています。」
とか言って、例によってバカウヨの知恵の及ばぬ「大御心」が発動され、我が願望はついえ去るのであろう。

 まあ今年は私自身は授業があったわけではないのですが、ゼミナール大会の優秀者の論文やプレゼンの審査があったのです。さすがに最後まで残ったのになると、ガチでジャーナル投稿もできる本格的な計量分析の論文が数本あったので、金沢研究会出張やシノドス締め切りが重なるとちょっと大変でした。
 でも私のゼミ生でこんな論文を書ける学生を出せるなんて想像もできないぞ。前なんか、一次方程式が解けないゼミ生がごろごろしたし。今回も、一度も研究室に相談にこないまま、ゼミ大論文の締め切りを迎えてそのまま何か出したのが何人もいたし...。ゼミ大出場を単位の条件にすると、他の先生たちにとんでもない文章を査読してもらうことになって迷惑をかけるから、今度から考え直さなければならないなぁ。う〜む。

 さて、授業は25日まであって、26日夜に九州の家に帰りました。
 そしたら、カミさんが、早くこのエッセーに書けとうるさいんですけど...。
 四月から私が単身赴任して、一人息子も大学進学で家を出ていたところでしたが、カミさんの父が10月末に死去してからは、いよいよカミさんとネコ一匹だけの暮らしになったわけです。そうしたら私がいないうちに、もともとゴチャゴチャだった家の中はすっかりきれいに片付けられ、瀟洒に模様替えされて別の家みたいになっていました。
 いやあ、ありとあらゆる点で性格が正反対の夫婦で、ただ片付けができないという共通点だけで結ばれていたはずなのに。──ちなみに息子は両親の性格の悪い方だけを組み合わせてできているのですけど、片付けができない性格は累積されて生まれています。

 そのうえ、カミさんは急に料理に凝り出していた!
 義父は大正生まれで、同居しだしたときにはもう後期高齢者でしたので、すっかり味覚が固定されていて、醤油の銘柄が変るともう受け付けない状態。私は全国有数の薄味地帯の生まれなので、私が食事を作ると食べないので、料理だけは妻の役割になって、こっちはその分家事負担が減って都合がよかったです。妻が残業などで私が食事の準備しなければならないときは、和食を作ると味が合わなくて食べないので、後期高齢者なのに洋食にした方がかえって受け付けてくれました。もっとも洋食も、シチューはホワイトシチューだけ、スパゲッティはナポリタンだけですけど。
 で、こっちは義父と同居してから日頃料理しなくてよくなって楽になったのですけど、カミさんにとっては大変な苦役だったらしい。ちょっと変ったことをすると食べてくれないし、かといって同じものばかり作っていると文句言われるし。やれやれ。
 それが義父が亡くなって重しがとれたら、料理とかしなくなるかと思いきや、好きなものが作れる喜びに目覚めたらしく、日頃本人一人しか食べる人がいないのに料理が趣味になっていました。

 そんなわけで、このかん長距離通勤していたあいだ、夜中に家に帰り着いたら自分が食べていない夕食の後片付けから始まる私生活のいろいろをこのエッセーに描いてきたので、カミさんからは「世界に向けてアタシの悪口書いてる」と評されてきたわけですが、今回帰宅したら、住環境はとても快適になっている上に凝った料理が出てくるではないか。このことを是非エッセーに書いて、「世界に向けて」汚名をすすげと、強い圧力がかかったわけであります。
 とはいえ、父親が死んで妨げる者がなくなった正月休みとなると、やっぱりカウントダウンだとか初詣だとかと先方は勝手に満喫してたわけですが、まあ、こっちとしてはそうやってほったらかしてくれた方が仕事がはかどっていいってものです。

 というわけで、2015年が始まりました。去年は、入院・手術して、引っ越して単身赴任を始め、子どもも大学進学して家を出て、おまけに義父が死去するということで、プライベートには、一年前には予想もつかなかった大激動でしたけど、世の中的には予想されたことばかりの一年でした。消費税を上げて予想通り景気は後退し、予想通り消費税再引き上げ延期を決め...。さすがに衆議院解散は予想していませんでしたけど、いざそれが起こったら、選挙結果も予想通り。
 さてでは2015年はどんな年になるでしょうか。

 昨年終わりには、浜矩子さんが毎年恒例の大予言をやはりしてくれていました。「2015年日本経済 景気大失速の年になる!」です。
経済危機ジャンルのノストラダムス本、浜矩子・高橋乗宣コンビの最新作は「2015年日本経済景気大失速の年になる!」
 「日本味蕾の党ととりぱんとなかまたち」さんが画像を作っていらっしゃって、「皆様ご活用ください」とのことですので、直リンクします。
浜・高橋本

 まあ、中国やヨーロッパの状況いかんによっては「失速」もあり得ない話じゃないと思うけど、確率は低いでしょう。

 次のGDP速報が2月に出たときの、2014年10-12月期のやつが一番苦しい数字じゃないですかね。遅行指数である雇用関係の数字が、やっぱりその頃から悪くなってくるので、世間の印象としてはそのあたりが一番悪くなると思います。
 たった3兆円ばっかしという、今の景気対策はあんまりしょぼいので、統一地方選挙が迫っていることもありますから、これを受けてさらなる追加対策がなされるのではないか。日銀の追加緩和もあるんではないかと思います。(ん?ひょっとして、政権はそれも織り込み済みで、とりあえず緊縮派の顔を立てて3兆円ばっかしにしたんだろうか?)

 当面の焦点は二つ。
・昨年10月末の日銀の追加緩和の影響がいつ出るか。
・円安による輸出増大がどこまで進むか。

 まず、追加緩和の影響ですけど、だいたい半年から一年後に実体経済に効果が出てくるのが経験則ですが、このところ数年は半年のラグぐらいになっています。長期的に見てラグが縮まっているのはいい兆候だと思います。
 これを確認しますけど、デフレ不況の時期は、日銀の出したおカネの増加の度合いと、名目GDPなどが相関します。
 これは、いわゆる「貨幣数量説」とは違いますので注意して下さい。貨幣数量説というのは、「おカネの量が2倍になると物価が2倍になる」というものですが、これは、厳密には完全雇用のときにあてはまります。ものすごく景気の好いときの話というわけです。この貨幣数量説の場合は、おカネが出回っている量全体(ストック量)が名目GDPと比例することになります。
 しかし、デフレ不況のときは違います。極端なのは「流動性のわな」と言われるケースですけど、日銀の出したおカネが全部そのまま貯め込まれて世の中に出回らなくなります。銀行の「貸し渋り」などをイメージしてもらえばいいです。
 それは、極端には民間側の貯蓄が貸付されずに全部日銀の出したおカネを持つことにまわるということですので、結局は日銀の出したおカネの増加と等しい貯蓄が発生し、その貯蓄をもたらすだけの所得(生産)がもたらされるということになります。例えば、日銀がおカネを出す時に換わりに買う国債を政府が発行することで、その分の政府支出がされて、それが需要になって所得をもたらすわけです。このことは、以前景気循環学会の機関誌の『景気とサイクル』に掲載された投稿論文に書きました。くわしくは、本サイト2010年9月14日のエッセーをご覧下さい。
 つまり、貨幣数量説とは違って、この場合、日銀がその年に出す分のおカネ=日銀が出したおカネの増加分(フロー量)が、名目GDPと相関するわけです。おカネの増加分を増加させると、名目GDPは増える。おカネの量自体は増え続けていたとしても、その増やし方を今までより緩やかにしたら、名目GDPは減ってしまうというわけです。

 では2011年以降の、日銀の出したおカネ(マネタリーベース)の伸び率と、名目GDPの関係を見てみましょう。半年前のマネタリーベース伸び率とその年の名目GDPを重ねてかくと以下のようになります。(名目GDPは、内閣府の12月8日発表の四半期別GDP速報2次速報。以下、成長率、輸出入、寄与度も同じ。マネタリーベース伸び率は、日銀ホームページの時系列統計データ検索サイトより。)
マネタリーベースとGDP
2014年7-9月期のGDPの動きがズレちゃって、落ちてしまっているのは、もちろん消費税の影響ですね。それから、2011年4-6月期のGDPの動きもズレていて、落ちていますけど、これも大震災の影響でしょう。そうすると、あとはだいたいきれいにあっていると思います。

 マネタリーベースの増加がGDPに効くプロセスには、予想インフレ率を動かして実質利子率を下げ、企業の設備投資をもたらすという道筋があります。この設備投資によって機械が売れたり工場建設需要が発生したりして需要が波及していって、それにあわせて生産が増えるわけです。
 ですから、マネタリーベースの伸び率と、名目設備投資との関係を見たら、効果がもっとはっきりわかるかもしれません。そこで半年前のマネタリーベース伸び率とその年の名目民間企業設備投資を重ねてかくと以下のようになります。
マネタリーベースと設備投資
 消費税増税の悪影響がGDPよりも早く現われていますが、あとは上のグラフよりももっとよくあっていると思います。

 さて、これから判断すると、2月に発表される14年10-12月期のGDP速報の数字は、グラフにそのままあてはめるかぎり、さらに落ち込むということが予想されます。もちろん、去年のそれまでの数字は、消費税の影響で過剰に下がっているので、その影響が多少薄れることを考えれば、そのまま線を引き下げて予想するわけにはいかないと思いますが、まあまあ悪い数字には違いないでしょう。
 上にも書きましたように、雇用関係へは景気の影響は遅れて現われます。消費税引き上げ後の景気後退の影響が、そのころになって雇用に現われてきますので、それも相まって、「アベノミクス大破綻」「景気崩壊」との大合唱がわきおこるものと思います。
 すると、財務省も選挙が迫っていると言われれば勝てませんから、ただちに緊急の経済対策が組まれて、追加政府支出がなされるのではないかと思います。日銀の追加緩和も行われると。

 しかし実はそのとき足下では10月末の金融追加緩和などが効いてきていて、すでに設備投資は底を打っているだろうと思います。目下計画されている景気対策の効果もあって、統一地方選挙のある4月ごろには、かなり景気のもちなおしが感じられるようになると思います。特に自民党の集票マシーンになるような業界ではそうだろうと思います。
 そうすると、2月ごろに派手な景気対策が追加されていたならば、あたかもその効果がすぐ効いたように受け止められる可能性が高いですので、「自民党さまさま」という雰囲気が作り出される恐れが大きいと思います。特に、野党側の反対を呼び込みやすい景気対策を仕込んでおけば、それに反対したことを選挙宣伝に利用できますので、いっそう自民党に有利になると思います。
 それゆえ、野党側としては、この手のうちに乗らず、自民党よりもいっそう派手な景気対策を対案として打ち出すことが肝要だと思います。

 なお、よく聞かれる話に、実質成長率は2013年1-3月期こそ高かったけど、その後どんどん下がっていって、10-12月期にはもうマイナスをつけていた。2014年1-3月期の高い成長は消費税増税前の駆け込み需要のせいで、もともと消費税がなくても景気は挫折していたのだという議論があります。
 それは、次のグラフに示す数字をもとに言っていることです。
GDP成長率前期比年率
 しかし、これは上の二つのグラフから受ける印象とずいぶん違って感じられませんか。
 実は、ここで見ている「成長率」というのは、前期比成長率(季節調整済み)を年率換算したもの、つまり、前の四半期と比べた今の四半期の成長率を、一年あたりに引き延ばしたものです。
 同じ成長率でも、「前年同期比」、つまり一年前の四半期と比べた成長率で見ると、こんなグラフになります。
GDP前年同期比
 2014年度に入ってからの深刻な状況は変わりませんが、2013年中の様子は全然違って見えますね。

 両者の成長率の取り方は、どちらがいいということはなくて、目的によるのですが、前期比の年率換算は、たいへんブレが大きいです。95年以降のをグラフにすると、こんなふうにギザギザのゴチャゴチャになります。
GDP年率1995-2014Q3
 それに対して、前年同期比ではこんなふうになります。
GDP前年同期比95-14Q3
景気の状況を直感するには、こちらの方がわかりやすいですね。

 さて、円安による輸出増大がどこまで進むかという件ですが、前回のエッセーで、三菱UFJモルガン・スタンレー証券景気循環研究所の10月のレポートを紹介して、海外生産と国内生産の比率が約2年前の円・ドルレートと相関するということを述べました。これでいくと、円安の開始から2年がたって、そろそろ生産の国内回帰がはじまってきそうだと書いたところですが、共同通信は1月5日パナソニックが家電製品40機種を国内生産に移すことを報じました。
 翌6日には、中央日報が「パナソニックにホンダ…続々と日本に帰ってくる海外工場」と報じています。この記事では、日産、ホンダ、ダイキン、キヤノンの例もあげています。

 よく、円安が進行しているにもかかわらず輸出が増えていないと言われます。特に、名目輸出は増えていても、数量は増えていないと言われます。しかし、実際にグラフにかいてみると、実質輸出は円安が始まって以降、それなりに増加傾向にあるように見えます。
実質輸出入12-14Q3
 もちろん、問題にされるのは2014年に入ってから、円安の進行にもかかわらず輸出が頭打ちになっていることで、それはやはり、このかんの円高時代に海外移転がずいぶん進んでしまったために、円安に対して稼働率上昇で対応することが限界にきているからだと思います。今後、国内回帰が進めば、輸出は伸びていくことと思います。

 なお、上で見た、2013年10-12月期の前期比年率換算の実質成長率がマイナスになっている件ですが、要因を調べる「寄与度分析」をすると、次のようなグラフがかけます。(これは、年率換算ではなくて、前期比ですので、だいたい四倍すると上のグラフの数字になります。)
寄与度前期比2012-14Q3
 これで見ると、2013年10-12月期の成長をマイナス方向に引っ張っている大きな原因が、純輸出のマイナスにあることがわかります。
 ところがさっきの実質輸出入のグラフを見返してみると、この期は実質輸出は減っているわけではありません。純輸出(輸出−輸入)が減っているのは、実質輸入が増えている効果なのですね。輸入の増大は、国内産品との競合品の輸入が増えているのでしたら雇用にマイナスになりますが、この場合はだいたいはそうではないと思われますので、見かけほど雇用にマイナスに働かなかったと考えられます。詳しくは、去年の5月3日のエッセーをご覧下さい。消費税増税がなかったとしても景気が挫折していたという認識はあたらないと思います。

 消費税増税の悪影響は、今後もあとを引くと思います。本当は消費が拡大することが主導して景気を拡大すべきだし、政府支出も福祉や医療などの社会政策を中心につぎ込んで、雇用を増やしていくべきだと思います。それが最も有効に総需要を拡大させる道だと思います。しかし、消費税が上がってしまい、賃上げも遅れている上、福祉にあまり目を向けない政権の現状では、残念ながらそうはならないでしょう。(安倍さんは、法人税を減税して賃上げを促しているようですが、そんな不確実なことをするくらいならば、減税せずにその分の税金を低所得者にバラまいた方が、よっぽど確実に消費需要が拡大するでしょう。あるいは、労使交渉が手取りの給料を意識してなされる以上、源泉徴収制度のもとでは、所得税は企業にかかる「賃金支払い税」みたいなものです。そうしたら、法人税を下げるよりは、所得税を下げた方がよほど賃上げにつながると思います。)

 現実は消費が主導するのではなくて、春以降、輸出と設備投資、特に輸出関連の設備投資が拡大するのに主導されて、景気の拡大がもたらされると思います。
 それは、消費需要の拡大に主導される場合と比べて、めざましさに欠けるものとなるでしょうが、野党側がもっと景気が好くなる有効な対案を掲げない中では、人々に安倍政権の成果として認識されていくことと思います。

 日銀の公約では、今年、インフレ率2%を実現することになっていましたけど、ほぼ絶望的だと思います。これは、本来は責めるべきことです。
 左派・リベラル派の野党の側は、本来は、このことを公約違反として責めるべきだということを、とりあえず確認するべきだと思います。そして、それができなくなった主因である消費税引上げの責任を問うべきだと思います。
 しかし、有権者一般の感覚としては、消費税引き上げ後の危機を脱して、ひとまずそこそこ悪くない景気になっているならば、インフレ率が1%台までに落ち着いていることを、かえっていいこととみなす可能性が高いです。そんな中で「2%になっていないからケシカラン」と言うことは、有権者の反発を受ける可能性が高いと思います。改憲に向けた動きや一層の右傾化を阻止するために、少しでも票を集めなければならないときに、これは慎重であるべきだと思います。私から言われなくてもそんなこと言わないと思いますが。

 ああ、このエッセー正月三が日で書くつもりだったのに、やっぱり今までかかっちゃった。年末九州の家で何かに集中していたの何だったっけと思い出してみたら、今のうちに、同僚との共同研究論文のドラフトを書き上げようとしていたのだった。まだ途中だったのを忘れていた。もう授業も始まっちゃったし、定期試験の原稿も締め切りすぎているので、また先延ばしだなあ...。



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