17年4月3日 安倍政治に反対が多いのに内閣支持率が高いのはなぜか
まる三ヶ月更新を空けました。いつものことかもしれませんが、筆舌に尽くしがたい忙しさでしたので。
原稿やら提出書類やらの、締め切りすぎた督促が入って、びっくり大慌てで必死に書いて、やっと出してホッとした途端、「あれどうなってますか」と締め切りすぎた督促がくる。こんなことを、笑ってしまうぐらい何回も繰り返していました。まあ、学会の報告やら座長やらシンポジストやらを引き受けたら、その時だけの仕事ではなくて、事前には報告論文を出さなければならないし、終わったら報告文やら論文やらを出さなければならないし、引き受けた時には計算に入れてなかったことがスケジュールに割り込んでくるので、いくつも重なってワヤクチャになるんだな。
個人ホームページなんか更新してたら、あちこちから「オレの所の仕事を後回しにして何やってんだ」と思われるに決まっているので、手がつけられなかったのです。
家族の事情で九州と関西を行き来するのは、三月に入ったらだいぶ落ち着いて、今ではもう解決して不要になったんですけどね。
しかし、そのほかにも色々と困難が...。光回線のサービスが終わるからというので、プロバイダの提供するサービスに替えることにしたら、回線工事のあとインターネットにつながらなくなり、プロバイダのサポート電話とNTTのサポート電話の間を何度もたらい回しにされて、このためだけにまる二日潰れた上に結局プロバイダ側のミスとわかって一週間以上たってやっとつながった事件とか...。
そうそう。秋の信用理論研究学会での依頼報告の内容を、同学会の学会誌に書かなければならなくて、もうみんな出ているから早く出せと言われたのですが、それが録音を聞いて、質疑を書き起こさないといけないわけ。ところが、まさにその作業を始めた途端、いつも使っているノートパソコンの音声が壊れて鳴らなくなった!で、翌日大学に行ったら、研究室のデスクトップは古すぎて音声ソフトが対応していない。春休みで教員ラウンジは閉まっていて中のパソコンが使えない。教員の共用の部屋のパソコンには音声ソフトが入っていない。学生用パソコンルームがちょうど閉まっている。図書館の学生コモンズのパソコンは使えるけどヘッドホンがないのではた迷惑で使えない。…と言った困難が降りかかり、やっと理系図書館の学生用パソコンルームで作業ができました。いや、ホントに笑いましたよ。
もう何をやろうとしても、スムーズに一発でいったためしがない。必ず思ってもいない障害が次々降りかかるのです。しょっちゅうこんな目にあっていたので、その他にもこんなことあるのですが、いちいち思い出せませんよ。もう。
こんな中に、講演とかレクチャーとかのお話をいくつもいただいて、本当にありがたい話だと心から嬉しく思っていますが、忙しさに拍車がかかったのは仕方ないことでして。一時は、学会も含め、まる一週間の間に東京に三往復しました。
で、こんなことをやっている間に発表された作品をお知らせしておきます。
本学経済学部の紀要である『立命館経済学』の同僚の退職記念号(第65巻第5号)に寄稿を頼まれたので、下記の論文を書きました。
置塩信雄「国際マクロ経済モデルの理論的基礎」に基づく経済分析
師匠置塩が、主要な為替レート決定理論である「マンデル・フレミングモデル」「アセット・アプローチ」「マネタリー・アプローチ」を、一般的な統一モデルからそれぞれ特定の仮定を加えることで導出するという、シンプルかつ重大な論文を、無造作に神戸大学の学内紀要に書き残しています。これを紹介し、簡単な具体的モデルにしてその含意を検討し、日本経済の現実に当てはめてみました。師匠の論文にどこまで迫ることができたか(笑)、是非ご検討ください。
それから、『エコノミスト』誌からご依頼をいただきまして、前々回の元日のエッセーで書いた「レフト1.0」「レフト2.0」 「レフト3.0」の話を詳しくいたしました。掲載誌は、第95巻第11号(通巻4492号,2017.3.21)であります。
〔新潮流〕左翼新時代「上から目線」を捨てたレフト3.0の登場
このテーマに関しては、DVD収録もありました。ブレイディみかこさんが、ご自身のブログで発表されていますとおり、ケン・ローチ監督のドキュメンタリー映画「1945年の精神」の日本語字幕版が、来たるメーデーの日に発売されます。戦勝の1945年に、労働者が自分たちで世の中を良くせねばと立ち上がり、戦争指導の英雄チャーチルを打ち負かして、労働党が総選挙で勝利しました。その政府が実現した豊かな福祉政策を、それ以前と、サッチャー以後のひどい状況と対比しながら紹介しているものです。
この字幕監訳者がブレイディさんなのですが、なんと特典映像としておまけのDVDがついていまして、その中で宇都宮健児さん、唐鎌直義さん、國分功一郎さん、山本太郎さん、そして不肖私がメッセージを語っています。そこで、「レフト1.0」「レフト2.0」 「レフト3.0」について語らせていただいております。ぜひご期待いただければ。
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さて、このかんの講演やレクチャーで使ったパワーポイントファイルとレジュメを、「ひとびとの経済政策研究会」のサイトにアップしました。我ながらまとまってわかりやすいと思うので、ぜひご覧いただいて、周りの人への説明などにご活用いただいたら幸いです。パワーポイントのスライドをpdfにしたものもアップしてありますので、パワポお持ちでない人もご覧下さい。
「なぜ野党は勝てないのかどんな経済政策を打ち出すべきか」パワポスライドとレジュメ
この資料で取り上げたことを、いくつか紹介しておきます。
このところ、森友学園問題やら道徳教科書の検定やらで誰の目にも露わになっているのは、この国の政府がいかにエキセントリックな極右カルト集団に乗っ取られているかということであり、官僚も教科書会社もその空気を忖度して動くようになっているということです。こんなこと、私の若い頃に起こっていたら内閣がいくつ吹っ飛んでいたかわからない。全くもって、すごい世の中になったものであります。
にもかかわらず、内閣支持率はちょっと下がっただけでまだまだ高い率を保っています。上記リンク先の資料でもあげておきましたが、その後、籠池さんの証人喚問があった後の状況はこうなっています。
日本経済新聞社とテレビ東京が3月24日から26日に実 施した世論調査では、安倍内閣の支持率は62% と、対前月2%ポイントの増、不支持は前月と同じ30%となっています。自民党支持率は1%ポイント減の45%、民進党の支持率も1%ポイント減で8%でした。テレビ朝日が3月25日と26日に実施したANN世論調査では、安倍内閣の支持率は前月より4%ポイント下がったと言っても50.5%、不支持率は3.3%ポイント増えてもまだ31.2%でした。自民党支持率は1.9%ポイント減ってもまだ47.8%もあります。民進党支持率は、3.1%ポイント増の13.9%でした。
ところが、安倍自民党のやっていることに対しては、世論は極めて厳しいのです。森友学園問題について、政府の説明に納得していないという人と納得してる人の対比は、上記日経調査で74%対15%、テレビ朝日の調査では82%対6%と、圧倒的多数は納得していません。テレビ朝日の調査では、稲田防衛大臣の辞任を必要と思う人が50%、思わない人が32%、共謀法が人権侵害や捜査機関による乱用の恐れがあると思う人が51%、思わない人が24%となっています。
これは、このかんずっと続いている傾向で、上記資料でも紹介しましたが、12月のJNN調査では、内閣支持率が61%もあるのに、年金改革法案を評価する人は31%、評価しない人は55%、カジノ法案に賛成する人は24%、反対する人は55%でした。11月のJNN調査では、内閣支持率は56.6%とやはりかなり高いのに対して、「駆けつけ警護」に賛成する人は34%、反対する人が54%、山内農水相は辞任するべきだとする人が59%、辞任する必要はないとする人は30%でした。
つまり、多くの有権者は、安倍自民党のやっていることが嫌なのに、仕方なく支持しているということがわかります。これは不幸なことです。こんな状態に追い込んでしまっているのは野党の責任です。
どうしてこんなことになっているのかですけど、ちゃんとその原因を見抜いていないと作戦になりません。鏡から目を背けていると正しい作戦は立てられません。
上記リンク先のスライド資料でお見せしたグラフなんですけどね。日銀が「生活意識に関するアンケート調査」というのをやっています。その中で「現在の景気をどう感じますか」という項目があります。それへの回答の割合を時系列で折れ線グラフにすると、こんなのになります。
この手のアンケートに「良い」と答える人はもともとほとんどいないのです。「どちらかと言えば、良い」と答える人ももともと少数派です。だから、マスコミでその時点でのアンケート結果が報道されて、景気が良いと答えた人の割合が少なくて、「どちらかと言えば悪い」と答えた人の割合が多いのを見ると、ついつい私たちは「国民はアベノミクスの破綻を実感している」などという気になって、安倍政権への不満が渦巻いているような楽観を抱くのですが、そうじゃないわけです。時系列にして昔と比べて見なければなりません。
そうしたら、「悪い」と答えた割合は、民主党政権時代よりも安倍政権時代は画然と減っています。「どちらかと言えば、悪い」と答えた割合も、民主党政権時代よりも安倍政権時代は低い水準になっています。
それに対して、「どちらかと言えば、良い」は、民主党政権時代は無視できるぐらい少ない割合なのに、安倍政権時代は1割前後の水準に上がっています。「どちらとも言えない」という答えは、この手のアンケートでは、現状の消極的容認と見るべきです。これが、民主党政権時代には2割未満の水準だったのが、安倍政権時代は4割前後の水準にジャンプしています。
いずれもダラダラとした変化ではなくて、政権交代の時点でその前後の水準がジャンプしていることに注意して下さい。明らかに違いがあるわけです。
このアンケートには、「1年前と比べて、今の景気はどう変わりましたか」とか「1年前と比べて、あなたの暮らし向きがどう変わったと感じますか」「1年前と比べて、あなたの世帯の収入はどう変わりましたか」といった項目があるのですが、全て同じ傾向が出ています。安倍政権時代は民主党政権時代と比べると、状況が悪いと感じる割合がガクっと減って、「どちらかと言えば、良い」などと答えたり、消極的支持と思われる中間的答えをしたりする割合が、ポンと増えているのです。上記リンク先のスライドで折れ線グラフを見せていますのでご確認下さい。
「マスコミ報道に騙されているのだ」と思われるかもしれません。それは違います。同じアンケートで、景況感の変化について回答した根拠を尋ねる項目があるのですが、「マスコミ報道を通じて」は常に少数派で、しかも安倍政権になってから民主党政権期よりもやや減っています。「自分や家族の収入の状況から」が一番多く、「勤め先や自分の店の経営状況から」がそれに次いでいます。これもスライドでグラフにしてありますので、ぜひご確認下さい。
しかも、暮らしのゆとりが前年と比べてなくなったと答えた人だけに、なぜそう感じたのかを尋ねた項目があるのですが、そこからわかるのは、民主党政権期は「収入が減ったから」と答える割合がその前後よりも高いのに対して、安倍政権期は「物価が上がったから」と答える割合が多いということです。特に、消費税増税後しばらくはそれが多いです。
つまり、人々は明らかに、民主党政権のころよりも安倍政権になって状況が改善されていると感じているということです。安倍政権になって苦しくなったことがあるとすれば、その中心は消費税の増税のせいで、多くの有権者はそれは民主党政権が決めたことだということは覚えています。
何度も言ってきたことですが、政治に何を望むかのアンケートをとると、常に福祉と景気がトップツーです。若い世代は、特に景気を重視します。その景気について、民主党政権期と安倍政権期でこんな実感の違いがあるのだということです。明らかにこれが、数々の民意に反する悪政にもかかわらず、安倍内閣の支持率が高く、野党の支持率が伸びない理由です。
このように感じることには、客観的な根拠があります。これも本サイトで何度もお見せしてきたことですが、2016年も終わって年次データがそろってきたので、傾向がよくわかる年次データで改めて示しておきましょう。これもスライドの中で示してありますので、詳しくはそちらをご覧下さい。
まずこれが雇用者数の推移です。
民主党政権期は、リーマンショック後の低迷から抜け出せなかったの対して、安倍政権期に入って、リーマンショック前どころか史上最高値をつけて、どんどんとそれを更新しています。
これが、生産年齢人口が減り続ける中で起こっているということに注意して下さい。生産年齢人口全体が減っているならば、雇用者数も減っておかしくないのですが、減るどころか増えている。
しかし、自営業者は民主党政権期も含めて一貫して減っていますので、それも加味した就業者全体はどうなっているか気になります。こうなっています。
これは民主党政権期と安倍政権期の対比が一層クリアです。リーマンショック後、民主党政権期は停滞しています。漸減し続けていると言ってもいい。それに対して、安倍政権期に入ると一転して増加しています。現在、さすがにまだ生産年齢人口(1995年がピーク)が今よりずっと多かった1997年の最高値には及んでいませんが、リーマンショック前の水準は超えており、この調子では遠からず史上最高値を記録しそうです。しつこいようですが、少子高齢化して生産年齢人口全体が減ったら、就業者数も減るのが自然です。なのに増えているということです。
非正規雇用の増加については、民主党政権時代も進んでいたことです。また、安倍政権下での非正規雇用の増大には、団塊世代の大量退職後の再雇用・継続雇用や、専業主婦の労働力化などの要因が大きく、数字全部が不本意なものととらえることはできません。それに、たとえ本来正社員になりたかった非正社員でも、今まで職のなかった人が職を得たありがたさは大きいですし、世の中で人手が足りなくなれば、条件の悪いところから比較的良いところに移ることもできるようになります。雇用が不安定ならそれだけますます、不況になったときに職を失うのを恐れて、安倍さんの景気政策にしがみつくことにもなります。それゆえ、非正規雇用の増大を見て、直ちに安倍政権への不支持につながる条件だと期待することはできません。
しかも、正規雇用の数は現在増えています。これは民主党政権時代には、小泉時代からの傾向に引き続いて減り続けていたのです。
このように、現在、民主党政権期の後半の水準は超えています。ちなみに直近2017年2月の原数値3397万人は、2009年の年平均を超えています。
民間企業のお給料の推移はこうなっています。
つまり、リーマンショックで大きく落ち込んで、民主党政権時代は停滞し、安倍政権期に入って漸増しているということです。しかしまだ、リーマンショック前には遠く及んでいません。スライドでは、GDP統計の雇用者所得を雇用者数で割って求めた一人当たり賃金も示しましたが、全く同じ傾向になっています。
安倍政権に入って実質賃金が減ったと言われます。しかし、これも民主党政権期から始まっていることで、しかも2015年後半から実質賃金は弱々しいながら上昇傾向に転じています。実質賃金の変化の要因分解を分析することは、以前このエッセーでお見せしましたが、民主党政権時代の実質賃金の低下は名目賃金の低下によるものだったのに対して、安倍政権期の実質賃金の低下は主に消費税増税の効果でした。名目賃金の低下は、物価上昇による目減りよりも、人々には厳しく感じられるものです。また、先にも言いましたとおり、消費税増税が民主党政権が決めたことだということは有権者は覚えています。それゆえ、実質賃金の低下をもって安倍政権を批判することも、民進党への支持にはつながりにくいことになります。
学生の就職率は民主党時代は落ち込んでいました。それが安倍政権期にはどんどん高まって、分母に卒業生全員をとった実質就職率では、2015年春からリーマンショック前ピークを超えて、7割を突破しています。
また、厚生労働省の平成26年度所得再分配調査報告書(2016年9月15日発表)の6ページの図3では、所得格差を表す指標である、所得再分配後のジニ係数が、麻生政権期の2008年は0.3758、民主党政権期の2011年は0.3791、安倍政権期の2014年は0.3759と、ほとんど横ばいながら、民主党政権期はわずかに増加し、安倍政権期はわずかに減少していることが示されています。これは所得格差が高まれば数字が大きくなるものです。変化はほとんど誤差の範囲だと思いますが、少なくとも、安倍政権期に所得格差が拡大したという言い方は、ジニ係数からは否定されることになります。総務省の平成26年全国消費実態調査「所得分布等に関する結果」(2016年10月31日発表)の1ページの図Iー1では、家計の人数を調整した「等価可処分所得」のジニ係数が示されています。やはり前回調査の民主党への政権交代の年2009年の0.283よりも、安倍政権期の0.281の方が小さく、所得格差が改善されていることがわかります。原因はちゃんと調べていませんが、無所得だった失業者や求職意欲喪失者が職を得て所得を得ることの効果が大きいのだろうと思います。
このように見ると、上記生活意識アンケートの結果は、ごく当たり前の結果だとわかります。現在の暮らしの状況はいろいろひどいことがありますけど、それは民主党政権時代にも言えることで、多くのケースでは、安倍政権になってから多少改善しているわけです。それゆえ多くの人は、安倍政権になってやっとちょっと一息付いていて、野党が勝つともっと悪い経済状態になるのではないかと危惧し、安倍自民党を支持しているのだと言えます。特に、就職できるかどうかに人生がかかると感じている若い世代にとってはそれが言えます。このかん中国の株暴落とかイギリスのEU離脱投票結果とかで世界経済が荒れ、円高になって株価が下がるたびに、野党は喜んで「アベノミクス破綻」と言って煽っていましたが、それを聞いた大衆は、そのような世界経済で野党に政権を任せるのをますます恐れ、自民党にすがりつく結果になったのだと言えます。
だから、安倍自民党のやることなすことみんな反対の方が多いのに、内閣支持率も自民党支持率も高いというのは、こうして見ると不思議でもなんでもない。当たり前の結果だとわかります。「野党が政権を取ってもいいのか」と暮らしにピストルを突きつけて、右傾化政策を脅し取っているとも言えます。世論調査の数字から、「何とかしてくれよ、こんな奴選びたくないんだよ」という悲鳴が聞こえると思うのは私だけでしょうか。
こうして見ると、安倍自民党が国政選挙で4回も圧勝したことは、当たり前のことだとわかるでしょう。
民主党政権時代と比べて安倍政権時代の民衆の暮らしはどんどんとひどくなっているというような現状認識でいたら、このことは永遠に解けない謎のままで、これからも何度も何度も負け続けることになります。景気は民主党政権時代と比べたら好くなっているのです。このことを直視して打つ手を考えないと作戦になりません。
しかも安倍さんはこれから本気の勝負に出ようとしているのです。
公共工事の保証をしている東日本建設保証株式会社が「公共工事前払金保証統計」というのを出していて、これを見ると、公共工事の発注動向を知ることができます。すると、去年の12月から前年比の伸びが大きいことがわかります。補正予算などの執行を本格化させているようです。
近時、いろいろなボトルネックで、公共工事の発注から実需になるにはちょっと時間のずれがあると思いますので、春以降影響が現れてくると思います。景気を本格的に拡大させて、解散総選挙に打って出て、改憲に向けて国会を完全制圧しようという腹だと思います。
ところがみなさんご存知のとおり、3月31日に発表された労働力調査では、2月の完全失業率の季節調整値がとうとう3%を割って2.8%になりました。失業率が2%台後半になると、賃金の上昇は目立ってくると思います。そこにまとまった政府需要が入ると、それなりに賃上げが大きくなるのではないかと思います。実際、今次春闘は、労働市場の状態に敏感な中小の賃上げが高かったという報道がなされています。
賃金の総額である雇用者所得は、安倍政権ができてから急増し、去年にはリーマンショック前のピークを超えました。これを物価を割り引いた実質値にすると、ウェブから統計の取れる1994年以降では最高値になっています。これもグラフをスライドに載せていますのでお確かめ下さい。
目下のところ、賃金が上がっているにもかかわらず、消費は停滞したままです。するとこんなことが観察されました。総務省の家計調査の勤労者家計の収入と消費支出から、収入のうち消費しないで貯蓄にまわった割合である貯蓄率を計算し、月による変動が激しいので後方12ヶ月移動平均にしてグラフにかくとこんなのになりました。
急上昇してどんどん上がっています!!
これは異常です。もし野党が政権を取って、安心できる福祉を約束したら、これが消費にまわってすごい好景気を実現できるでしょうね。しかし、安倍政権が続いて安心できる福祉が約束されなくても、このグラフがこのまま無制限に上がり続けるとは考えられません。遠からずどこかで止まるはずで、そうすると消費需要が増え出すことになります。
水物の話ですが、今、円安傾向で輸出は伸びています。設備投資も拡大する兆しがあります。これらが合わさると、本格的な好景気が演出できることは否定できません。
もちろん、そうなったとしても、安倍さんの政策よりももっと直接民衆の暮らしに役立つことに政府支出をつぎ込み、最低賃金も上げて、安倍政権よりももっと景気を拡大させることを公約すれば、右傾化に怯える多くの有権者が安倍自民党に入れるのをやめて野党に入れるでしょう。しかし今の野党のままだったら、極右カルト勢力の日本制圧を止めることはできないでしょう。
もし野党のみなさんに向かって、「政権をとってもどうせ景気をよくすることなんてできないでしょう。それを開き直るべきです。景気を好くすることを安倍さんと競ってはいけません」というようなアドバイスをする人がいたとしても、決して耳を傾けてはいけません。そんな開き直りをしては、まず次の総選挙には勝てません。そして次の総選挙にボロ負けしたら、極右カルトの日本私物化はますます進行し、もっと悪法が作られ、もう民主的手段でこの状況をくつがえすことはできなくなるかもしれないのです。みなさんの身近な野党政治家や活動家がいらっしゃったら、よくこのことを訴えて下さい。
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さて、私の経済政策に耳を傾けてくださる政治勢力が現れたとしても、それぞれが小さな勢力だったら、なかなか安倍自民党に対抗するのは難しいですよね。やっぱり力を合わせないといけないけど、それぞれ主張やルーツが異なっていたら、簡単に合同と言うわけにはいきません。
そこで、ドイツ左翼党みたいな「プラットフォーム政党」ができたらいいなと思います。往年の山川均の「共同戦線としての統一無産政党」みたいなやつ。それぞれ別個の政党としての実体を持ちつつ、統一的に行動する連合政党。
でもこれが、支持者民意を反映しないボス交渉で物事が決まったり、民意の支持が少ない政党がゴネるのに振り回されたり、民意と関係ない政治力で牛耳られたりすると困るんですね。よくあることですけど。あるいは、コンセンサスのあまり、全員に責任が分散して曖昧になってしまうのもよくないですね。
で、なんとか支持者民意を反映して決定力が配分されるようにできないか考えてみました。
以前、12年12月22日のエッセーで提起した「参議院共同名簿」の応用でできそうです。
連合党の最高議決機関の委員の選出に、参議院比例代表区を利用するのです。参議院比例代表区は非拘束名簿式で、個人候補名での得票が全て党の得票としてカウントされるので、どれだけ立候補者を立てても、連合党全体としては全く「共倒れ」がありません。だから、各参加政党内部で地区割りでもやってもらって、連合党全体としては自由に立候補してもらい、各自個人に投票してくれるように選挙運動すればいいことになります。
そうした上で、参議院選挙後、候補者みんなが、自分の得票数を持ち票にして、連合党の最高議決機関の委員の選挙をすることにします。これは、各参加政党に対して投票する比例代表選挙にします。そうすれば、連合党に投票した支持者全体の民意を反映して、議決機関の勢力配分を決めることができます。現職議員が全員委員になることが望ましいならば、そうなるように委員定数を後から決めればいいと思います。
そして、この議決機関の過半数の支持で執行部を組織して、執行部が議決機関に責任を負うようにすれば、責任関係は明確になります。
どうでしょうか。ご意見をお寄せ下さい。