松尾匡のページ

18年7月9日 『そろ左派』反響と白井聡『国体論』感想と太郎フィリバスター




 このたびの地震と水害で被害に遭われたかたがたに心からお見舞いもうしあげます。
 私は幸い被害は何もありませんでしたが、地震の日は動いている私鉄までJR二駅分、1時間15分ぐらい歩きました。

 今この時間(7月8日2時半ごろ)は、「安保法制に反対する関西圏大学有志の会」の「連続講座」が2時から大阪でやっている最中のはずなのですが、午前中の基礎経済科学研究所の市民たちとの読書会がいつものとおり長引いて、懇親のランチが2時ごろ終わったところなので、もう間に合わないからサボって京都のカフェでこれを書きはじめているところです。反安関西関係者のみなさんにはすみません。
 こないだ6月23日、24日は、京都大学で応用経済学会の大会があって出たかったのですが、風邪をひいて寝込んでしまって出られませんでした。これも関係者にはすみませんでした。おかげで久しぶりにたっぷり睡眠がとれました。よくこれだけ眠れるものだと感心しました。
 これが、風邪ひいた理由というのが、前日金曜日の大阪労働学校での講義に、万一地震の余震で出られなくなったら困りますので、早めに大阪に行っておいたら、どこにいっても冷房が効いていて逃げられなかったせいでして。いや四年前に腎臓取ってからめっきり冷房に弱くなって、すぐ調子が悪くなります。今は、地下街のカフェのテラスみたいな席を見つけたおかげで、暑すぎも寒すぎもせずに仕事ができています。

【ご批判への回答を書き込みました】

 まず、6月12日にトップページに書き込んだお知らせをここに載せておきます。
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 ツイッター上での私への批判を紹介くださり、私に回答を求めておられるように読めるブログ記事がありましたので、回答を書き込みました。同様の疑問を持たれているかたが多いかもしれませんので、この際広くご覧いただけたら幸いです。
https://ameblo.jp/monzen-kozo100/entry-12381626143.html
 ネット音痴で知らないところで批判が流れて、いつも反論の機会を持たないままですので、このような機会をいただいて本当にありがたいです。どなたでも、今後同様の機会をいただけたら助かります(何かと忙しいですので、せっかく機会をいただいてもフォローできないかもしれませんけど、それはご海容ください)。
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 これ、スマホではコメント欄が直接見られないそうですね。スマホの人はこちらをご覧いただければ、私がコメント欄に書き込んだ回答をお読みいただけます。

【『そろ左派』への反響御礼】

 さて、4月7日のエッセーでお知らせしたブレイディみかこさん、北田暁大さんとの鼎談本ですが、おかげさまで出だし順調で、すでに三刷りまで出ています。例によってミスもいくつか見つかっていて、本サイトでもちゃんとお知らせしないといけないと思っているのですが、目下整理中ですので、もうしわけありませんが、しばらくお待ちください。

 まだお読みでないかたで、どんな内容かなと気になるひとは、一部ウェブ上で読めますので、ぜひ目をお通しください。転載の場を提供くださったシノドスさん、プレジデントオンラインさんに深く感謝いたします。
ブレイディみかこさんによるまえがき「経済にデモクラシーを」(ひとびとの経済政策研究会ブログ)
「古くて新しい」お金と階級の話(シノドス)
"毎日牛丼なら幸せ"は裕福な年長者の誤認(プレジデントオンライン)
安倍政権に足りない"本当の経済政策"とは(プレジデントオンライン)

 また、私たちの訴えたいことを汲み取っていただいた書評を、もういくつかいただいています。特に宮崎哲弥さんは、『週刊文春』のコラム「時事砲弾」で、「レフト3.0の革命」と題して(!)何回もシリーズにしてとりあげて激推ししてくださっています。本当にありがとうございます。森永卓郎さんは、6月25日の『日刊ゲンダイ』で、お得意の「自虐ネタ」混じりでとても好意的に紹介してくださいました。荻上チキさんは、『週間エコノミスト』6月26日号で書評くださっています。私たちが「懇願に近い説得を行っている」って、よくぞわかってくださいました。ホントそう!

 ウェブで読めるご書評もいくつか。
『朝日新聞』6月23日、石川尚文論説委員のご書評。とうとう朝日新聞で前向きに取り上げてくださいました。うれしい!
「官庁エコノミスト」さんのご書評。前著も含め過分なご評価と、建設的ご意見ありがとうございます。
・それから、いつも拙著ご書評くださる南船北馬舎さんのブログの「近著探訪47」。今回もありがとうございます。あんな安倍さんの好き放題を許してしまっている我が陣営の現状への悔しさが共感していただけたようでありがたいです。
・やはりいつも拙著ご紹介くださる赤間道夫さんからは、バカなミスをご指摘いただきました。ありがとうございます。
・そしてこれは読み物ではなくて動画ですが、宇都宮健児さんが「ウツケンTV 第6回」で、この本をとりあげてくださり、過分なご評価をいただきました。ありがとうございます。50分頃からです。

 そうそう、濱口桂一郎さんがやはりいつものようにブログで取り上げてくださいました。ありがとうございます。この本でやっている「レフト2.0」批判は、穏健派に対しても急進派に対しても濱口さんが昔からやってきた(「リベサヨ」批判、「ドロサヨ」批判)ということで、全くそのとおりで心強く思っております。
ブレイディみかこ・松尾匡・北田暁大『そろそろ左派は〈経済〉を語ろう』
リベサヨとドロサヨまたはレフト2.0の2形態
 それにしても、上の一つ目のリンク先のブログ記事で濱口さんがリンクをつけておられる、何人かの欧州の論者の文章の濱口さんの訳文。読んでみたら、向こうでも同じような批判を言っている人たちがいるのだなあと、妙に共感します。あっちではこんな批判があてはまらない左翼――階級的立場バッチリの「レフト3.0」――もたくさんいると思うのですが、こんな「左派は…」という言い方でレフト2.0批判してたら、「いっしょにするな。左派叩きだ」と、私みたいに怒られたりしないのかと心配しますけど。
 もちろん私も、左派の外からの左派叩きをしているわけでは毛頭なく、自分のまわりの、まさしく<経済>を語っている左派の人たちのフラストレーション――安倍さんに勝てる方針を打ち出せない指導部・オピニオンリーダーへのフラストレーション――に、背中を押される形でこの本を出しているわけです。どうかお間違えなく。
 まあ、濱口さんが同じことを言いながら、私と違って「左派叩き」などと言われて叩かれないのは人徳の違いなのでしょうね。

 それから、NHKラジオで、この本の内容についてインタビューを受ける機会をいただきました。6月3日の「マイあさラジオ:著者からの手紙」です。リンク先で聴くことができます。

【新潟県知事選挙敗因分析と京都との比較】

 また、本の紹介からはズレますが、「法学館憲法研究所」さんから、ウェブへの寄稿を頼まれました。ありがとうございます。それが載りましたのでご覧ください。
野党が安倍政治を止めるために必要なこと
 冒頭、先日の新潟県知事選挙のことで簡単な回帰分析をした結果を紹介しています。
 6月10日投開票の新潟県知事選挙の国政野党側候補の池田ちかこさんは、中道、左派政党勢揃いの推薦を受け、連合新潟の推薦まで受けておきながら、前回二年前の知事選挙での米山隆一さん――民進党の推薦を受けず、連合新潟には相手候補側推薦にまわられて当選した――よりも20万票も減らして敗北しました。
 私は、25歳から34歳人口の比率が高い市区ほど、米山さんと比べて池田さんは得票率を大きく減らしていることを見いだしました。これはNHKの出口調査からも裏付けられる結果で、50歳代以下の比較的若い世代が、前回の米山支持から今回の自公候補支持へ投票が移動していることが見て取れます。期待する政策を尋ねた調査では、「景気・雇用」が、30代を除き、10代から50代まででトップ。30代のトップは、さすがに「教育・子育て」ですが、それでも「景気・雇用」は二位で31%もあります。景気・雇用対策を求める票を、池田さん側がとらえそこなったことが敗因だったとわかります。
 実際、ホームページを見る限り、池田さんの掲げた経済政策公約は、躍進した4月の京都府知事選挙での福山和人候補の経済政策公約(4月7日のエッセー参照)と比べても、相手候補のと比べても、前回の米山候補のと比べても、明らかに貧弱でした。その点やっぱり福山和人さんの経済政策はすごいと思います。<経済>を語る左派と語らない左派(?)がどう違うかがよくわかります。詳しくは、上記リンク先の法学館憲法研究所掲載記事をご覧ください。

【白井聡さんの『国体論』感想】

 ところで、こないだ地下鉄で白井聡さんにばったり会って談笑していたら、このほどお出しになった『国体論』(集英社新書)がずいぶん売れているそうで、いやいやうらやましいかぎりです。
 白井さんも大阪労働学校で毎週授業しているので、私たちの鼎談書をそこに預けておくから受け取ってもらうよう言ったら、カバンから『国体論』を一冊出してご恵贈くださいました。ありがとうございます。
 そしたらやっぱりすごく文章うまいから、二日とかからず読んでしまった。労働学校の事務の人が「アジテーションの文章」と言っていたけど、そのとおりですね。
 内容は、戦前の「国体」と同じ構造のものが戦後も続いていて、戦前の「国体」の天皇にあたるものが、戦後の「国体」ではアメリカであるというもの。それで戦前の国体の盛衰の歴史を戦後国体も繰り返しているとして、そのアナロジーをなぞっているわけです。実にわかりやすくておもしろい。

 まあ、あいかわらず大衆にやさしくない目線だなあというのが正直な感想ですね。そのほうが同じ目線で大衆を見ている読書人層にはウケるのかも。アメリカに従属する戦後日本人のアイデンティティを、「コンプレックスとレイシズムにまみれた「家畜人ヤプー」(沼正三)という戦後日本人のアイデンティティ」(306ページ)とか言ってしまっているし(笑)。おお。石原さとみのカヨコ・パターソンが念願通り大統領になったら私も「家畜人ヤプー」になりたい。

 で、やっぱり何が一番この本の問題かと言ったら、階級的視点が弱いことですね。日本の大資本は対米従属から総じて利益を受けてきたし、今も基本的には利益を受け続けています。日本資本が日本の労働者ともどもアメリカに食い物にされて損をしているように描くのは一面的で、今日本の大資本は空前の利益を上げているのです。そもそも資本には国籍なんてなくて、たとえ取締役に白人がたくさん入ってきて英語で会議するようになったとしても、それでも日本資本なのです。
 その上で、アメリカから自立して、もっともうかるようにしようと言うことが何を意味するのか。

 以前17年1月7日のエッセーでも言いましたが、EUがドイツ資本主義の一人勝ちで、アメリカから相対的に自立したドイツ帝国になっているのを、成功モデルと見ている支配エリートの人たちはいるはずです。もともとネオ大東亜共栄圏の夢は、戦後対米従属レジームの元で隠伏させられつつも伏流水として続いてきたと思いますが、安倍政権では相対的にその力を増していると思います。
 特に、安倍政権ができてからの東南アジアへの企業進出は爆発的です。下の、住友商事グローバルリサーチのサイトにあるグラフをご覧ください。


 そもそもアメリカ抜きのTPPになぜそんなにこだわるのでしょうか。有力な先進国として日本一国だけが入っているTPPが何を意味するのか。内閣官房のTPP政府対策本部のサイトでは、進出企業が現地政府を訴えることができるようにするISDS条項について、「海外で活躍している日系企業が、進出先国の協定に反する規制やその運用により損害を被った際に、その投資を保護するために有効な手段の一つになる」と言っています。つまり、日本企業の進出先のアジアの国で、政権が変わったり自治体が独自政策をとったりして、労働保護基準や環境保護基準を強化したり、開発を禁止したりして、進出企業が当初より損をする動きがおこったら、これを武器にして恫喝しようというのです。
 この上に、自衛隊を海外派兵できるようにする動きが重なると何が見えるか。低賃金で現地の人々を搾取するために企業がどんどんと進出し、その結果激しい労働運動やテロなどで進出企業やその駐在役員が危険にさらされたり、政権が転覆して国有化されようとしたりしたとき、最終的には自衛隊を派遣して実力で守るということでしょう。
 しかも、安倍さんが領土問題で成果がなくてもロシアと結んだことは、これから東南アジアで中国帝国主義とショバ争いに乗り出す野望があると思えば、北方を安全にしておくという意味のある合理的な行動だったと言えるでしょう。
 要するに、大枠ではアメリカの支配下にありつつも、東南アジアあたりを勢力圏として従える地域帝国主義が、今の安倍政権の目指すところのように思われます。

 こんなことは、低賃金を目指して企業の海外移転が進んで国内の雇用がなくなるし、海外子会社からの利潤送金のせいで円高が進んで国内景気は悪化するし、海外進出企業の低賃金激安製品が逆輸入されて国内競合産業は壊滅するし、労働者階級にとっては全くもってろくなことはない路線ですが、日本資本の繁栄をよしとする立場からすればたしかに「国益」にかなっています。で、国内に残す高付加価値工程については、労働者を「高プロ」制で残業代出さずに長時間こき使って、この体制下でも国際競争力を維持しようというわけだな。こういうビジョンを少なくともオプションの一つとしては抱いた上で、改憲などの「日本会議」的な復古志向が、地域帝国をリードするべき国民のプライドを支えるイデオロギーとして位置付けられていると考えられないでしょうか。
 (ちなみにこう考えると、立憲民主党の基本政策の「自由貿易体制の発展にリーダーシップを発揮し、多国間・二国間での経済連携については、日本の利益の最大化を図ります」という項目は、極めて危険なことを言っていると評さざるを得ません。)

 『国体論』は、アメリカから自立できさえすればともかく解決という論調に終始しているように読めます。現実に対米自立が実現したらどんな自立になる可能性が一番高いかということについて、怖い想定を何もしていないところが不満なところです。その意味でこの本は、労働者階級の立場に立つかどうかという意味では全く左翼的でない人たちでも、帝国主義志向を持った人たちだったとしても、「そうだそうだ」と喝采して読める本です。

 そうするとこの本のオチが、今上天皇の退位問題をめぐる「お言葉」への「共感と敬意」と「応答」の呼びかけで終わっていることは、いささか衝撃的でした。この「お言葉」が、「古くは後醍醐天皇による討幕の綸旨や、より新しくは孝明天皇による攘夷決行の命令、明治天皇による五箇条の御誓文、そして昭和天皇の玉音放送といった系譜に連なるもの」(338ページ)とみなしたとき、当初私は白井さんは当然これを批判して言っているものと受け取っていましたよ。「アメリカを事実上の天皇と仰ぐ国体において、日本人は霊的一体性を本当に保つことができるのか、という問い」(同)に、日本人が「それでいいのだ」と答えたならば、「天皇の祈りは無用であるとの宣告にほかならない」(同)と書いてあるのを読んだとき、当初私は、今上天皇のおかれた立場の矛盾に対するシニカルな指摘なのだと思っていました。でも違ったのです。
 白井さんは最後で、「お言葉」について、「今上天皇の今回の決断に対する人間としての共感と敬意」(339ページ)を表明し、「この人は、何かと闘っており、その闘いには義がある」(340ページ)と「確信」(同)し、「お言葉」の呼びかけに「応答せねばならない」(同)と感じたと言うのです。そして最後は次のように締められています。

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 「お言葉」が歴史の転換を画するものでありうるということは、その可能性を持つということ、言い換えれば、潜在的にそうであるにすぎない。その潜在性・可能性を現実態に転化することができるのは、民衆の力だけである。
 民主主義とは、その力の発動に与えられた名前である。(同)
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 す…すごい。つまり、後醍醐天皇の討幕の綸旨などと同様に、「日本人の霊的一体性を保つための天皇の祈りを意味のあるものにしてほしい」という天皇の「お言葉」に応答して民衆が立ち上がり、アメリカ傀儡の安倍政権が代表する戦後対米従属レジームを打倒して、歴史の転換が画されることを訴えているわけです!

 私の鼎談書の鼎談相手の一人である北田暁大さんも、このほど新刊書『終わらない「失われた20年」』(筑摩書房)を出されています。この中に収録されている原武史さんとの対談(292-296ページ)では、まさしくこの今上天皇の「お言葉」が取り上げられています。
 ここでは「お言葉」について、北田さんは「政治・立法過程を吹っ飛ばして国民との一体性を表明する」「憲法の規定する国事行為を超えた行動」と評し、「天皇の政治的な力を見せつけられました」と言っています。原さんは「憲法で規定された国事行為よりも、憲法で規定されていない宮中祭祀と御幸こそが「象徴」の中核なのだ、ということを天皇自身が雄弁に語った」とし、「御幸」の効果について、「実は国体が継承されているのではないか。昭和との連続性を感じます。イデオロギッシュだった国体の姿が、より一人一人の身体感覚として染み渡っていく」と解説しています。最後に、北田さんは、「今回のお言葉で目が覚めました。「これはむき出しの権力だ」と」と言って締めています。もちろん、批判して言っているのです。
 私も生前退位は認めるべきだと固く思うし、政治家が言うこと聞いてくれないならば国民に訴えるのもありだと思いますが、だとしたら「私の人権を認めろ」とおっしゃればよかったのだと思います。「お言葉」はそれにとどまらない、日本の政治体制のあり方をめぐる高度に政治的なメッセージを込めた、憲法を超えた天皇権限の行使だと言えます。そしてそのことを十分認識した上でその評価が大きく分かれる点に、白井さんと、北田さん原さんとの間の根本的な立場性の違いが現れているのだと思います。

※ 以上の白井さんの本への私の感想について、白井さんが反論のレクチャーをされましたので、次回のエッセーでとりあげました。

【たろさ渾身のフィリバスターすごい】

 ところで今述べたTPPですが、山本太郎さんが関連法案の成立に抵抗して内閣委員会で30分のフィリバスターをやってくれました。
 最初この荻上チキさんのコメントに際して流れた太郎さんの声を聞いたのですけど、聞いててつらくてたまらない。全文は山本太郎公式サイトの次のページでおこされています。動画もついているのですけど、つらくて聞いてられないと思うのでまだ見ていません。あ〜、たろさ一人にこんなたいへんな闘いをさせてしまった〜(泣)。
2018.06.28 内閣委員会 反対討論「山本のアホ、半端ないって〜反対討論、普通3分くらいやのに 10倍くらいやってるもん そんなん、せえへんやん普通〜に関する動画・字幕入り

 私はこの問題については何も知恵をつけたことはない(そんな必要はない)のですが、ただ酒の席で無責任に激励めいたことを言った記憶はあるので、心苦しくてしかたないです。たろさ、も〜ひたすらすごいよ。
 フィリバスターの締めの言葉。「あの本当に、ひっくり返えさして頂きますんで。えぇ、その時は力合わせて、このTPPも離脱できるような動きを、みんなで一緒にやって頂きたいと思います。/だって、元々TPP反対だったんだから、皆さん。お力貸してください。」
――この最後の言葉は直接には自民党議員に向けたものですけど、我々みんなに訴えたものでもあると思います。この「お言葉」にこそ「応答せねばならない」!

 まあ、「高プロ」やらTPPやらだけでなくて、このところ、災害のドサクサとオウム死刑執行とワールドカップにまぎれて、ろくでもない法案が次々通されつつあります。水道民営化法もあっと言うまに衆議院通っちゃったし。この問題も去年の3月にたろさが取り上げて、悪い方の太郎さんの「ポエム答弁」が話題になりました。
2017.3.15 予算委員会「美しいポエムの裏にある、米国で勝手に水道民営化宣言」
 民営しちゃったらできませんけど、もともと水とか電気とかガスとかって、人間が生きていくために必要な分までは誰でも無料にするべきだと思うんですよ。これ、どこだったかで市民のかたから提案されたアイデアですが、一種のベーシックインカムですよね。貧困解決にかなり役立つし、消費にまわせる所得が増えて景気対策にもなります。その分、大口の消費の料金は割増して今よりぐっと引き上げればよい。

 それでですね。有料の分の料金は、インフレ目標で引き上げていく仕組みにしたらいいのです。
 水とか電気とかはどんな事業にも使う普遍的なコストですので、それが一定率で値上がりする予想が確実になれば、一般物価も同じ率で上がると予想することは合理的になります。インフレ目標の目的は、人々の頭の中に目標どおりのインフレ予想をつけることにあるのですから、そのための有効な手段になります。
 さらには、実際のインフレが高くなりすぎた時、それを抑える工夫の一つになります。もちろん、あまりにインフレが亢進しすぎて、水や電気の供給能力で追いつけなくなったら無理ですし、他の、「売りオペ」とかの普通のインフレ抑制手段も併用することは当然の前提ですけど。でも、現実のインフレがインフレ目標を多少超えたくらいの段階では、あらゆる事業に普遍的に需要される水や電気の料金がインフレ目標でしか値上がりしないことが確実ならば、一種の「水本位制」「電気本位制」みたいなもので、通貨価値を安定させる力が働くでしょう。
 こういうシステムをやろうとしたら、民営化どころか国営にすべきだということになりますね。

 山本太郎公式サイトの国会質問動画(&書き起こし)は、ほかにもすごいのいっぱいあるので見てね。特に、入管の人権蹂躙問題をたびたび取り上げてくれているのがいいですね。そういえば、4月7日のエッセーでは、山本太郎さんが日銀の黒田総裁を追及した質問のユーチューブ動画を紹介しましたが、その後、太郎公式サイトに収録されていて、書き起こしが読めます。まだの人はぜひご覧ください。
2018.3.28 予算委員会ー締め括り総括質疑「デフレマインド払拭できないのは、日銀総裁の存在じゃね。」


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