松尾匡のページ13年1月26日 好況の手柄を与党に独占させないために他にすべきこと
新年になって初めての更新になります。なかなか余裕がなくて、エッセーもまるひと月更新を空けてしまいました。
そういえば田中秀臣さんが下の動画で全力で釣ってきたりしていたのですけど、かまってあげられなくてすみません。
とりあえず、拙著『痛快明解経済学史』を紹介下さってありがとうございます。この動画のセイ法則とワルラス法則の話、詳しいことを知りたければ、この拙著の第6章のケインズのところを読んで下さい。
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余裕がないのは、やっぱり今内地留学している九大数理生物学研究室でみなさんやってらっしゃることは、マジ理系だけあって高度で、ついていくのにアップアップなせい。自分の無能ぶりを思い知っているところなのです。いろんなことがおもしろくて首をつっこんでいるので、どれひとつまともにマスターする余裕がない。
いやいや、植物が茎や根を延ばすのは、最適成長理論と一緒でハミルトニアン立てて動学的最適化問題解いているし。キクイムシは虫のくせに手番ゲーム解いているし。
土壌中の窒素を同化する菌は同化したやつを植物に渡し、植物は見返りに光合成した炭水化物を渡しているそうなのですが、この交換比率が、菌が多くなると植物側に有利になり、菌が少なくなると菌側に有利になるという…まさに市場経済。
おまけに、研究室では漁業研究が大流行りだし。漁業資源保護みたいな話に興味を持つ院生が多くて、啓発活動にどれだけ資源を割くべきかとか、漁場にどれだけ観光客を入れるべきかとか、そんな話をゲーム理論や動学モデルで解いているわけです。
経済学の大学院にいるみたいで全然違和感ありません。
そんな中で、受け入れ教授の巌佐庸先生の授業で、「拡散方程式」を初めて勉強しました。例えば、水の中にインクを落としたときの広がり方なんかを記述するための数学。すごく教えるのがうまいので、一応基礎はマスターできたつもり。
あんまり見事な授業だと思ったので、許可を得てノートを公開します。文責はノートをとった私にあるということで。
本サイトの「アカデミック小品」においておきますので、是非ご覧下さい。
これがですね。最初自分の研究に使おうと思ったわけですよ。
経済学の話ですけど、最適投資が確率的に分布するっていうのが、なんか「シュレディンガーの猫」みたいで気持ち悪いじゃないですか。ボクは生物学の研究室に内地留学するくらいですので、こういう話は、いろいろな投資態度をとる企業家が(進化的に安定な均衡として)分布しているという意味なのだととらえたいわけです。
確率的な分布だったら、その動きは、「マルコフ連鎖」とか、連続なら「伊藤方程式」とかの確率論の数学で表します。
それが、いろいろな投資態度をとる企業家の分布ということになれば、その動きは、拡散方程式で表せばいいと思ったのです。
そしたら、巌佐先生にそんなことを言ったら、「拡散方程式とマルコフ連鎖(伊藤方程式)は同値だ」と言って、目の前でスラスラ〜と同値性を証明されてしまいました。
OΓ乙。
同じようなことがまだあって、主流派経済学が人々の将来予想を扱うときの「合理的期待」って現実的じゃないじゃないですか。まあ、全くダメとは思いませんが、限定的だと思って。
だから、有利不利にあわせて生物のタイプが増減する「レプリケーターダイナミクス」という生物進化の方程式を応用して、人々の将来予想も、当たり外れの度合いに合わせて、レプリケーターダイナミクスで進化する扱いにすればいいと思ったのです。
で、そんなことを巌佐先生に言ったら、「レプリケーターダイナミクスと合理的期待は同値だ」とか言われて。合理的期待で、ベイジアンと言われる確率論で将来予想を修正して、自己回帰にかけることと同じなんだと言われて、それって主流派の人が今やってるじゃんという話になって、これも
OΓ乙。
こんなことばかり繰り返していましたが、やっと最近ごく簡単なモデルが立ちつつあります。当初の留学目的の「商人道/武士道」話ですけどね。
これも定式化が単純な割には計算がごちゃごちゃで、なんか計算しているうちに三乗の項がみんなきれいに消えたから、残った二次方程式で楕円か双曲線がかけるかもしれないと思って先生に見せたら、一瞥して「無理だからシミュレーションせよ」と。つまり、具体的数字を入れてコンピュータに解かせて動きを図示するということです。
シミュレーションなんて四半世紀前に「ベーシック」(昔のプログラム言語)でやってただけで、その後とんとやったことがないです。なんとか紙と鉛筆で解けないかと思ったのですが、やっぱり先生の言ったとおり何をやっても解けなくなりまして、今、院生から習っていよいよシミュレーションに乗り出そうとしているところです。
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前回のエッセーは、おかげさまでいろいろ反響を呼びまして、冒頭の、「次回の総選挙で流れかねない自民党テレビCM」の妄想が、誰かの手でAA動画になっていてびっくり。
こっちは、こんなCMが流れて自民党がまた圧勝したら悪夢だということで、好況の手柄を右派側に独占させないように、リベラル、左派勢力に警告するつもりで書いたのですけど、動画は逆に自民党の応援の立場で流れているみたい。OΓ乙。
とりあえず釈明のコメントは書かせていただきましたけど。
念のために、何度もしつこいようですが、こちらの言いたいことを確認しておきますとこういうことです。
二、三年後には、アベノミクスの結果、悪性インフレも金利暴騰もなく、好況が実現されています。もし、左派、リベラル派が、デフレ大量失業下ではありもしない「ハイパーインフレ」とか「金利暴騰」とかを根拠にアベノミクスを批判していたならば、事実をもって否定されて大衆の信頼を失い、「景気回復に反対した勢力」とみなされます。逆に、安倍さんのカリスマ性は、「間違った反対論の大群を押し切って好況を実現した救世主」ということで、かえって高まってしまいます。ヒトラーが政権獲得後、大規模な公共事業と軍需で完全雇用を実現して、国民から盤石の支持を得た歴史を繰り返すことになります。
そんなことになれば、その実績を背景に安倍さんが総選挙に打って出た時、左派政党は一議席も残らず壊滅するという可能性も十分考えられます。民主党政権の三年間はとても暗くて惨めで苦しかった時代として思い出され、民主党も大敗するでしょう。
そうなると、あとは安倍さんは、改憲も軍拡も人権抑圧もやり放題。右翼洗脳教育、右翼プロパガンダ報道もやり放題。
戦後民主主義体制にはピリオドが打たれ、あとはどんなに社会矛盾が吹き出しても、もう取り返しがつかなくなるでしょう。
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それにしても、何かアイデア書いたら、すぐこんな作品ができあがるなんて、ネットはすごいねえ。
こんなのができるんだったら、漫画のネタが一つあるんですけど、誰か絵にしませんか。
いや、こんな報道があったのですけど。
日本経済新聞1月2日記事「頭で念じればコンピューターが動く…「カンタン革命」が進行中 」
カーテンやドアの開け閉めを脳波で念じて行う技術が開発されているそうで、今、ロボットを念じて動かすのも開発中という話です。医療や介護の分野で応用が期待できるとのこと。
これを読んでこんな漫画ネタを思いついたんですわ。
正義ロボットと悪ロボットが戦っている。
物陰で、それを見ながら、ヘッドギアをつけた少年がシャドーボクシングしている。
巨乳少女出現。「なにしてるの?」 少年驚く。
胸元アップ
正義ロボット、乳をもむような動作をする。
少女「何やってんのかしらあのロボット。いやらしい動きね。」 少年あせる。
少年、頭を抱えてしゃがみこみ「何も考えるな。何も考えるな。」
正義ロボット、しゃがみこんだまま動かず、一方的に悪ロボットにやられる。
博士登場「何やってんだあ〜」 少女「え?」
博士「ああ、これはだね…」説明。
少女「さてはー」 少年「え?」
少女「ちょっと貸しなさい。」ヘッドギアを少年から奪う。
「ジイ〜っ」ヘッドギアを装着した少女、少年を見つめる。
「ボコッ、バキッ、ドカッ」悪ロボット、ボコボコにやられる。
背景で「ドカーン」悪ロボット爆発。正義ロボット仁王立ち。手前で同じ格好の少女が高笑い。少年腰を抜かす。博士「すばらしい。」
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ところで前回のエッセーには「はてなブックマーク」もたくさんいただきまして、
はてなブックマーク−総裁人事は好況の手柄を与党に独占させないチャンス
この中で、id: tdamさんから、「参議院は欠員が6人いるから「あと一人」でいいはず」とのご指摘をいただいています。
何のことかと言うと、前回のエッセーで「シナリオB」と書いた、与党提案の日銀総裁候補が、民主党や左派、リベラル系から反対されるケースについてですが、私は、参議院では、自民、公明、維新、みんな、改革を足しても、過半数には「4票足りない」ので、ごり押しできないだろうと書きました。
ところが実はご指摘のとおり、参議院には欠員があったのでした。忘れていました。すみません。
同じ指摘は、高橋暗黒卿からもいただいています。
私は、まだツイッターの登録をしていないのですが、「Topsy」というサイトで、ホームページについて言及したツイッターのつぶやきを、リツイートを含めて全部出すことができます。
Twitter Trackbacks for 総裁人事は好況の手柄を与党に独占させないチャンス
この中で、高橋洋一さんは、「興味深いのですがシナリオBはちょっと無理?というのは、参院欠員6人、議長は採決に加わらないと、自公み維改の118でも過半数になるからです、民主党参院の良識派であるKさんらの賛成できる人を選べば採決確実」とご指摘下さっています(ず〜っと最初の方をたどっていって下さい)。
なるほど議長の分も引いておかなければならなかったのですね。ご指摘ありがとうございます。
もし、これで与党側ごり押しが可能ならば、わざと竹中さんみたいな、民主党や左派政党が反対せざるを得ないような筋悪の候補を立ててきて、あえて反対させた上で可決し、後年好景気が実現したあとで、反対した政党に「景気回復を邪魔しようとした者たち」とのレッテルを貼って攻撃するという作戦がとれるので非常に困ります。
とはいえ、自民党からも投票機の誤動作などで造反が出る可能性はないわけではないし、竹中さんとかになると与党内にアレルギーもあると思いますので、与党側にしても、リスクが多い作戦だとはわかっていると思います。
やはり、左派、リベラル派の側から先んじて、インフレ目標政策を唱える人のうち、自分たちが受け入れられる候補を提案すれば、与党にも受け入れられる可能性はあるし、たとえ受け入れられなくても、あとで「景気回復を邪魔した者」とのそしりを受けることはなくなるでしょう。
そういえば、リフレ派マル経のわりと大物の先生から、中原伸之さん一押しの熱烈なメールをもらっていますけど。大変有能だそうで。
みんなの党の提案リストには入ってなかったみたいだけど、歳だからかな。頭はまだまだ非常に聡明にまわっている人みたいですけどね。(2月2日の渡辺さんの提案リストには入っていました。2月4日追記)
ブルジョワ派には違いないが、そんなこと言ったら、社民党も共産党も白井さんみたいなばりばりネオリベの日銀審議委員に賛成しているくらいだからねえ。
ボクは岩田規久男さんでもいいと思うけど。もう学習院定年だそうで、いい機会かも。
まあ、たとえ日銀総裁人事が右派サイドだけのペースで進められたとしても、左派、リベラル側には、好況の手柄を与党に独占させないためにやれることはまだあります。
戦後民主主義体制が守れるかどうかの瀬戸際にあるという危機感を持って取り組んでほしいと思います。
きたる好況の手柄を与党に独占させないために左派政党がすべきこと
1.現政府にもできないもっと大胆な手法の要求
返還無期限の国債を発行して日銀直接引き受けで資金を作れ。百兆円硬貨を発行して日銀に両替させて政府の口座に百兆円振り込ませろ。既存国債を無期限債に転換して日銀に買取らせろ…等々。欧州左翼党は欧州中央銀行を欧州議会のコントロール下におくことを主張していますが、これ「も〜らい」ですね。「日銀を国会のコントロール下に置くよう、日銀法を改正せよ」と要求すべきです。
2.政府支出の振り向け先の批判
現政府の景気対策によってもたらされる景気は、少子高齢化が進む中での完全雇用とつじつまが合いません。人手は増えず、逆に減っていくので、完全雇用の持続とつじつまが合うには、生産能力を量的に拡大するための機械や工場の純増分は要らないことになります。その分、総需要の構成のうち、消費需要の割合が高くないといけません。また、その中でも、限られた人手のうちで、医療や福祉にまわる割合が多くないといけないし、少子化とはいえ、教育のための人材は現状では不足しすぎでもっと増やす必要があると思います。
だから、せっかくのデフレチャンスで無から作り出した資金。ゼネコンをもうけさせることばかりに使うのではなく、医療や福祉や教育を充実させる基盤を作るためにつぎ込むべきでしょう。特に、人材の育成のための投資が必要です。
総需要の構成中、設備投資よりも消費の割合が高まるように、無から作り出した資金が、賃上げの原資に流れるような仕組みを作れと要求することも必要でしょう。
3.最低賃金や生活保護基準の引き上げの主張
12月22日のエッセーにも書きました通り、2%のインフレ目標と言うならば、最低賃金も生活保護水準も2%で上げないとつじつまが合わないし、インフレ目標の本気度が疑われることになります。ましてや、安倍政権は今、生活保護水準を引き下げようと言っているわけですから、これはもう「デフレ推進するつもりか」と突っ込んでやらないといけません。
今書きましたように、現政府の経済政策は、少子高齢化下の完全雇用の持続と整合しないと思います。したがって、完全雇用に達したあとには、またも不況に舞い戻るなり、さもなくばそれを避けようとして、それこそ本当にインフレが昂進したり、金利が高騰したりするかもしれません。その頃には、格差や過労などの問題も人々に意識されるだろうと思います。
しかし、それはたぶん2010年代後半以降のことだと思います。二、三年後の段階では、まだ年々失業が解消されて景気が好くなっていく恩恵ばかりが意識されるはずです。
そして、その段階で総選挙がなされ、自民党圧勝、左派議席消滅といった事態になったならば、もうその先にはまともな自由選挙はなくなり、いくらその後問題が起こっても我々に反撃の手だてはなくなってしまっているでしょう。それこそ、膨大な犠牲とエネルギーをかけた末の「革命」しか出口はなくなるかもしれません。(明治の革命家とか調べてると自分とはまるっきり人間の質が違うとしか思えない。私にはとてもとてもまねできませんので、そのときにはみなさん頑張って下さい、よろしく。)
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ああそれなのに。
1月16日付けの『茶会新報』なんか読むと、ほんと暗澹たる気持ちになってくるわ。
最後の一面まるまる使った「安倍「金融緩和」の危うさ」と題する記事が載っています。これ、これまでちょくちょく取り上げて批判してきた「宇野雄」名のトンデモ記事と違って、署名のない文章です。どうにも言い逃れのしようないですね。社民党の公式見解と取るほかない。
のっけから「「2%」で日銀に圧力」と小見出しをつけて、「中央銀行の独立性を確立しておくことは、先進国が過去の経験から学んだ知恵でもある」と、欧米の保守派みたいなことを言っています。以前からこのサイトのエッセーでも書いてきましたように、欧州の左派は欧州中央銀行の独立性に苦しめられ、これを改めようと闘っているのに。
日欧左派政党の金融政策論
欧州左翼はこんなに「金融右翼」だぞ〜(笑)
また、id:himaginaryさんの最近のブログ記事では、新自由主義やIMFを批判してきたことで知られるスティグリッツさんが、中央銀行の独立性を批判していることがまとめられています。
himaginaryの日記(2013-01-10):スティグリッツ「中央銀行の独立なんかいらない」
そして次の小見出しは、「禁じ手の「国債引受」」だ。国債の新規増加分が結局日銀の買いオペでまかなわれることになることを指して、事実上は、「財政法で禁じられた「政府債務のマネタイゼーション」(日銀の国債直接引き受け)にほかならない」としています。
はあ。それが何か?
流動性のわなのデフレ不況の中では、副作用なくいいことばかりの方策ですから、むしろ社民党はこの世から貧困をなくすために、積極的にこれを使うことを標榜すべきなのに。
そしてその先では、次のように書いています。
12年9月に日銀が実施した「生活意識に関するアンケート調査」では、86%がインフレを「どちらかと言えば困ったこと」と回答しており、「どちらかと言えば好ましいことだ」との回答は2%に満たない。つまり、98%の国民がインフレを積極的に望んではいないことになる。
いや、まずもって、ネオリベ白川日銀のアンケート結果を無反省に示すこと自体社民党の姿勢として問題なんですけど、この記事は、アンケートそのものの内容を歪曲して報じています!
アンケート結果の原文はこれですので、ダウンロードして確かめてみて下さい。
第51回調査 [PDF 443KB]
この数字は、「1-3-4.物価上昇・下落についての感想」にある、「Q12-a 物価上昇についての感想」のものと思われます。これは、その直前の質問項目「Q12 あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか」に対して、「かなり上がった」「少し上がった」と回答した人の合計、全体の43.9%の人に対して尋ねているものなのです。
したがって、あたかも全体が回答しているかのように、「98%の国民が」という言い方をするのは、デマと言われても仕方ないひどい印象操作です。
しかも、尋ねているのは「一年前と比べた物価」、それも「あなたが購入される物やサービスの価格全体」と説明をつけたものであって、「インフレ」一般ではないし、ましてやこれから起こるインフレについて尋ねているわけでもありません。
ちなみに念のために説明しておきますが、インフレ目標政策が目指すインフレというのは「絶対価格水準」の上昇であって、理論上は本来、労働力の価格である賃金も、外貨の価格である為替レートも、貨幣以外のあらゆる商品の価格が同様に上昇することを指しています。
そもそも、Q12の「あなたご自身の感じでは、「物価」は1年前と比べてどう変わりましたか」という質問。回答結果はどうだったかというと、単純平均で+2.8%、上下0.5%の極端な値を除いた平均でも+2.7%。去年の9月の調査ですよ。
そんなはずないやん!
もちろん、下がっていると答えた人もいての平均なわけですから、それを除いた「上がった」と答えた人に限れば、どんだけすごい数字になるのやら。
そんな認識の人たちだけに尋ねているのが、問題のQ12-aであるわけです。そりゃもう、
100%が「困ったこと」と答えるのはあたりまえです。
天下の公党、しかもsince 1901の伝統ある政党が、こんな情けないことをするなんて、明治の革命家は草葉の陰で泣いておろう。
さらに、こんなことも書いています。
「1%すら達成できない物価目標を2%に引き上げるナンセンスな政策」
達成できないのならよかったね。社民党は是非、「政府債務のマネタイゼーション」で無から作った資金で高度福祉国家を建設するよう求めるべきでしょう。
それから、次の文章。
「長期金利上昇による住宅ローンの金利上昇は国民の負担を重くする。」
「低金利は国民の負担」と言っていた頃から比べるとずいぶんな進歩だと思いますが、金融緩和で低金利になったと認識していた過去をどう説明するんですかね。
いいですか。金融緩和すると金利は下がるのです。
それがどうして上がる可能性があるのかというと、将来インフレが予想されると、おカネを貸す方としては、インフレで債権が目減りしてしまいますのでその分損になります。だから、貸すよりは自分で支出したいと思います。そのためにおカネを貸したいという力が、おカネを借りたいという力に比べて減って、金利が上がるのです。上がった結果として、インフレによる債権の目減り分が金利上昇で埋め合わされたと感じたところで、元通りのつりあいが復活して金利の動きが止まります。
そうすると、借りる側としては、名目金利は上がるかもしれないけど、その分はインフレで借金が目減りすることになるので、結局はトントンだということになります。
その上に、もともとの金融緩和で金利が下がる効果が加わりますので、名目金利からインフレ予想を引いた「実質利子率」は絶対に下がります。
それだけでも、借りる側にとって得になりますが、現実には、おカネを貸す側の銀行は、自分でモノを買う選択肢があまりなくて、どっちにしろインフレでは目減りしてしまう選択肢ばかりが多いので、インフレでの目減り分が埋め合わされるまでは貸すのをやめるというわけにはいきません。だから、金利の上昇はインフレ予想分にまで至らない可能性が高いです。したがって、住宅ローンを借りる側の国民にとっては、インフレによる借金の目減りでも、ある程度得をすることになります。
そして最後は、次のように先の衆議院選挙のマニフェストの一節を引いています。
今優先すべきは、金融緩和ではなく、内需の拡大、所得と雇用の安定で、GDPの6割を占める個人消費を活性化すべき
「内需の拡大、所得と雇用の安定で、GDPの6割を占める個人消費を活性化すべき」というのはその通りですが、その前提として金融緩和が必要なのです。金融緩和したからと言ってこれらが実現できるとはかぎりませんので、その点を社民党は政府に対して追求していくべきですが、そもそも金融緩和なしには絵にかいた餅です。
ヨーロッパでは、社会党系も共産党系も、「欧州中央銀行はインフレ抑制のことばかり考えるのじゃなくて、雇用のことも考えて、もっと金融緩和しろ」と主張しているのです。「雇用の拡大のためにはまず金融緩和」これ常識ね。経済学の常識だし、世界の左翼の常識。
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