松尾匡のページ

12年9月16日 民主党支持者にされてしまった件ほか



◆ 前回のエッセーの、若田部昌澄さんと栗原裕一郎さんの本『本当の経済の話をしよう』の紹介の続きになりますけど、「食糧自給率」にこだわるのは意味がないというお話が出てきます。「自給率を高めるとむしろリスクが増える。自給率の高い食品に何かあったら途端に困ることになるから」等々。
 全くそのとおりで、ボクも前回のエッセーで紹介したTPP本の拙稿で、そのことを指摘しています。拙稿ではさらに、熱帯産品でない農産物の輸出によって、途上国が経済発展する道を、閉ざしてはならないということを論じています。ご関心がありましたら是非ご検討下さい。
 で、『本当の〜』では、その箇所で、農水省が黒木メイサさんを起用して、「日本の食糧自給率は40%なのに、黒木メイサさんは64%。食糧自給率が高い人は、美しい」とか言ってキャンペーンやってたことをクサしています。若田部さんが「美しさと自給率を結びつけるのは全くナンセンス」と言ったのを受けて、栗原さんが「頭がわるすぎる」と。もちろん、黒木さんのことじゃなくて、農水省のことね。
 これは検証しないといかんと思い、ユーチューブを探したら…ありました。ありました。
 さっそく見てみよう。ポチっとな。

ハハハハ…たしかにバカだ。頭わるすぎ。………でももう一回。

◆ ようやく目の前に差し迫った仕事がなくなったら、ゆっくりひとの学術論文でも読めばいいのに、ついついホームページの更新したり、エゴサーチなんかしちゃったりするわけです。
 そしたらこんなブログ記事が見つかっちゃいました。「べっちゃん」さんの「静かなる細き声」より
民主党はついに対外宥和ですらなくなったわけですが

 この人、Baatarismさんのブログでよくコメント書いていらっしゃる人ですよね。短い文章だから引用しますと…

 ケインズ的経済運営と対外宥和政策の二者択一を迫られたら、対外宥和政策の政党を選ぶと豪語していた松尾匡先生。民主党が新自由主義に走ることを見越した防衛線であったわけだが、ついに最終防衛ラインまで突破された先生の言動やいかに?

 ホームページを見ていたら、見事に無視していますねえ(笑)

 自民党は東アジアの安全ピン。東アジア最大の平和勢力だというのが何故知識人には分からなかったのでしょうか。

 まあ松尾匡先生の対外宥和云々も自己防衛の言であったに過ぎないことが明らかになった。どうして左翼はこうも自らの間違いを認められないかね。先生が平素非難している日銀と変わりがないよ。

 せめて「野田一派は保守反動に走った!民主党内の平和勢力は今こそ立ち上がり、保守反動野田政権を倒して諸国民と連帯すべし」とか書けばいいのに、民主党を守ることの方が大事と見える。


 これってボクが民主党支持者ってことですよね。どう読んでもそうよね。…ウギャーこの私が民主党支持者にされてしまった〜www。

 まずもって、「ケインズ的経済運営と対外宥和政策の二者択一を迫られたら、対外宥和政策の政党を選ぶと豪語していた」というのが出典不明。
 一番近いのでは、おそらくこのことだと思いますけど。

「仮に選挙で歴史歪曲派と構造改革派の二人しか候補者がないならば、首長選挙レベルならば確実に構造改革派に投票します。選挙運動をするかもしれません。」
10年8月21日エッセー

 このあとには「国政選挙なら棄権すると思いますけど」と続けています。「歴史歪曲派」でない方を選ぶということと「対外宥和政策」を選ぶということとは同じことではありません。
 そもそも「対外宥和政策」など、国ごとに人がまとめられていることを前提した上で、国どうしの関係をうんぬんするという点で、対外強硬論と同じ枠組みを共有するもの。私の立場ではありません。私の立場からすれば、民衆を抑圧する支配者はどの国でも批判の的。民衆とは連帯する。それだけです。民衆の意識が自分と相容れないならば、自分が間違っているかもしれない可能性を常に頭におきつつ、反発を受けないように粘り強く説得する──それは日本の民衆でも外国の民衆でも何も変わらない原則だと思っています。
 まあ今だったら、「領土問題で社会矛盾から目をそらす日中韓の権力者を打倒するべく、日中韓人民の連帯を」ということですね。

 それにしても、結党当初から変わらず民主党に対しては批判的な立場にあったのに、ボクのどんな言動が民主党支持者のように見せたのだろうと当惑しきり…(胸に手)。
 たとえば、本サイトでは次のように言ってきました。

(社会主義協会系の発想の批判的検証の中で)「新社会党に行った人々はまだこの点まともだったのであって、かつて同じ社会主義協会系であった少なからぬ人々が民主党に流れたのは、正にこの根本態度そのものが原因だったと言えよう。」
02年10月17日エッセー


(裁判官が保守派に偏っていることについて)「今後は新民主党政権ができるかもしれないが、それで任命された裁判官でバランスがとれるようになるとはとても思えない。」
03年11月3日エッセー

「「リベラル右派」なんていうと、民主党の新代表とか、何かこの世で一番いっしょにされたくない人々のイメージがするけど。」
05年9月21日エッセー
「民主党の新代表」というのは前原さんのことです。

(社共を叱って)「民主党に超えられてどうする!! 」
06年10月14日エッセー

「社会党もいわゆる「右傾化」を続け、ついには90年代において、自民党との連立や民主党への合流のように、保守と連携する変節ぶりにまで至った。」
07年12月25日エッセー

「民主党の経済政策など、一生懸命、別の支出を削って財源を用意することを強調している。そんなの自慢げに言うようなものか?」
09年8月3日エッセー

「民主党政府は「仕分け」の清廉なイメージで世論の支持を得ようとして景気を冷やす危険をおかしている、戦前の民政党の二の舞だ云々と、持論をぶたれるのに逐一拍手喝采していました。」
09年11月24日エッセー

(社民党の連立離脱について)「当たり前じゃん。離脱してなかったら選挙で改選議席ゼロでしたよ。」
10年7月23日エッセー

「私は民主党支持者でもみんなの党支持者でもありませんし、」
10年8月21日エッセー

「まあ、さしもの全労協の関係者の方にしても、民主党政権で倒閣を叫ぶのは、内心すっきりとは言えない気持ちが残るようで、それはボクも同じでよくわかります。しかしこれも、ちゃんと言わないと、代わりを右翼がつとめて大衆の不満を吸収することになるわけです。」
11年2月2日エッセー

「ちなみにその新年会では、来賓に民主党関係者がいっぱいいる中、会う人会う人「大きな声では言えないけど...」という話(笑)で盛り上がっていました、ええ。」
11年2月7日エッセー

「このかん社民党も、野に下ったはずなのに、なんか今ひとつ民主党政府との対決に腰が据わらない感じがしていてちょっと不満だったんですよ。/だから、このままだったら、今度の選挙では、「共産党に入れよう」と呼びかけるつもりでした。たとえそれが議席に結びつかず、ただ自民党が勝つ結果になったとしても。」
11年7月24日エッセー

(辻元清美さんが民主党に行ったことに対して)「野田政権って言ったらあぁた、首相自身政治的に右翼の上に、内閣そろって増税シフトって、何もいいところがない。民主党への迷いも遠慮も断ち切ってくれたというのが一番いいところという内閣ですけど、こんなのができたとたん民主党に入るってことがどんなメッセージになるか。もう政治家の考えることって難しすぎて私にはわかりません。」
11年9月16日エッセー

これは、何カ所もあるしちょっと長いので、リンク先をお読み下さい。なんか今となっては我ながら予言めいたことも書いてある(笑)。まあ降霊本を書くぐらいですので。
08年4月12日エッセー

 なんか山形浩生さんからは、反成長論のエコロジスト扱いされるし、自分が一番こんなのといっしょにされたくないのとばかりいっしょにされる気がしますねぇ。
 まあ、地元では自民党や鳩山邦夫さんが圧倒的ですから、民主党、社民党、共産党、連合、環境派どことコジれても生きていけませんので、得意の日和見に徹して仲良くやっていますけど(笑)。

 べっちゃんさんのおっしゃるように、「自民党は東アジアの安全ピン」というのは、保守本流についてはそういう面があったと思います。もちろん社会党もタッグ組んでたんですけど。
 うちの地元なんて、どちらかというと鳩山さんの系列になるのだと思いますけど、威勢のいい市議会議員が、市役所の男女平等政策推進室に押し掛けたり、教育基本法改悪要求決議に一生懸命になったりと、一銭のトクにもならないことに血道を上げていてホント辟易します。それに比べると、保守本流の古賀誠さんの系列の人たちは、カネにまみれてるかもしれないけどよっぽどまっとうだと思いますわ。ハト派だし。
 なのに、周りの左派・市民派空間では古賀誠アレルギーが強くて強くて。古賀さんの系統と手を組む位なら、もっと右派的な人たちと手を組んだ方がましというような雰囲気がある感じ。まあ、過去ひどい実害を受けた経験がおありの人がたくさんいらっしゃるのでしょうけど、なんか違和感あります。
 全国的にも、ある世代以上の左派空間では小沢一郎アレルギーが強すぎますし。まあ小沢さんがいいとは全然思いませんけど、野田総理とか、ましてや橋下さんとかよりは百万倍ましと思いますけどね。

◆ 昨日、今日と、基礎経済科学研究所の大会だったんですけど、カミさんが職場旅行なので、食事の準備とかしなければならないから行けませんでした。
 今日は台風に備えて息子と家のまわりのものを収納したりしたら、カミさんが帰ってきた。そのあとこのエッセーを書いていたら、旅行で疲れたから夕食を作れと。やっぱりそうか。
 よく考えると、月末締めの共著原稿があるし、9月26日から始まる内地留学に向けて、受け入れ教授から勧められた本も読んでおきたいし、10月はじめの経済理論学会でのコメンテーター用の論文も読まないと。その学会ついでにナカニシヤ出版の「最強のマル経」の共著者打ち合わせもあるので、少しは準備しとかないと。
 そんなこと考えると、エゴサーチとかしてる暇はないな。時間がつぶれるのが怖くてツイッター登録はまだしていないんだけど、最近知人からフェースブックのお誘いが何件かきてます。これも登録したらどんなに時間がとられるかと思うと始める気にはなりませんわ。せっかくですけどすみません。


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